質問の波紋
12人ほど参加しているグループLINEで、喧嘩が勃発した。
そもそもの発端はAさんが投げかけた質問から始まっている。
「ジャーラスタファーライ、ヤーマン、ボブマーリーの関係性を知りたいんですけど、誰か分かりませんか?」
そのグループはお馴染みの友人たちであり、様々な方向性のアーティストの集まりでもある。レゲエシーンにいた人もいるし、幅広く音楽に携わっている人もいる。
しかし長文で返信したのは音楽とは関係ない職種のBさんだった。
私は少しふざけたスタンプを投下した後はもうROMに徹していたのだが、何だか風向きがおかしい。AさんとBさんが噛み合っていない。
そして突然、BさんがAさんに対して怒りを露わにしたのである。
おそらく私を含む参加者全員が息を飲んだと思う。
その後、二人とも謝罪の言葉を述べてからグループを退会してしまった。
彼らはこの地点に至るまで、ラスタファリズムの話しかしていない。
どちらも全くレゲエに関係のない人生を送っているのに、ラスタファリズムのことで大喧嘩に発展したのである。
確かに現在、ホロスコープの運行では感情が爆発しやすいタイミングではある。先日の蠍座満月以降、金星やら土星やら逆光しまくっているので人間関係にトラブルが起きやすいのだ。
だけどここで私はあることに気づいた。
実はBさんは最近、コロナ対策として除菌スプレーを自分で調合したのだが、ちょうどいい空き瓶がなかったので、あるスプレーボトルに入れて使っていた。
それはスピリチュアルグッズの「大天使チャミュエル」というボトルだ。
まだ中身が少し残っているボトルを私があげたものなのだが、そういうエッセンスボトルというのは時としてプラシーボ以上の効果を発揮し、現実を動かすのである。
ちなみに余談ではあるが、Bさんがボトルに入れた除菌アルコールを分けてくれたのも、例のグループLINEのメンバーのひとり、某先輩だ。
最近のBさんは何だか変容が起きている様子だったので「エッセンスが効いちゃってるのかな」と密かに思っていたのだが、実はその「大天使チャミュエル」のボトル、
そもそもはAさんが私にプレゼントしてくれたものなのだ。
変容を起こしている人と、変容のきっかけを与えた人。
そんな相互関係が見えたのだが、話はそんなところに留まらない。
このヤーマン事変の翌日に、グループLINEに入っている女子メンバーがSNSにオリジナルレゲエソングをアップした。
とてもハートが温まる愛の歌で、レゲエっていいものだなと思った。
おそらくアップしたタイミングは偶然でヤーマン事変のために書き下ろした曲ではないのだが、少なくともその歌はヤーマン事変で戸惑う私たちの心を温めてくれた。
Bさんは先週、長年壊れたままにしていた小部屋の扉を新しいものに付け替えていた。
ヤーマン事変の2日後、その新しい扉を開けたり閉めたりしていると、小部屋の中のあるものが視界に入ってきた。
それはグループLINEのまた別のメンバーが過去に作った立体作品で、何年も前にBさんのところへやってきたものだったのだが、
そこには満面の笑みのボブ・マーリーが描かれていた。
さらに、そのボブ・マーリーの周りにはたくさんのクリスマス飾りが吊るされている。
実は問題のグループLINEの名前は「2019メリークリスマス会」なのだ。
またひとつミッシングリンクが埋まっていく。
その後、私は自分なりの考察を話すためにAさんと電話した。
三次元的に話を照合するとAさんBさん両氏の主張は一向に噛み合わないのだが、実はあの時のチャミュエルボトルをBさんが使っていたことが明らかになってからはどんどん流れが変わって行った。
そもそもなぜAさんがあの質問をグループLINEに投げかけたかと言うと、ひとりのラスタマンとの出会いがあったから。
実は数年前に行った島でそのラスタマンと一瞬出会っていたらしいのだが、ものすごい距離と時間を超え、なんとAさんの近所で再会したらしいのだ。
いくつものエピソードにAさんとの答え合せのような時間が進み、私たちはひとつの確信へと進んだ。
今回の一件は、どうやら「宗教」がキーになっている。
Aさんは熱心な仏教徒だ。
ラスタファリズムは厳密には運動や思想を表すのだが、ここでは宗教と捉えさせていただきたい。実際、そもそもの教典は旧約聖書から来ていたりするからだ。
Bさんは無宗教だが今年の初めに「今年は密教の年にする」と高らかに宣言していた。その宣言はAさんも聞いている。
さて、時を少し戻し、ヤーマン事変勃発直後へと話は戻る。
二人の退会で戸惑いを隠せない残されたメンバー達は「ヤーマン」をギャグにすることでその場をやり過ごした。
人によってはその後もラスタファリズムについて考えを巡らせてしまったかもしれない。
そして無性に「ヤーマン」とか「ラスタファーライ!」と口ずさんでしまう人もいた。それがCさんだ。
Cさんは親の前でも度々言っていたらしいのだが、なぜだか父親と揉めることが増えた。おかしいなと思いながら数日過ごしていたある日、仏教徒であるCさんの家族が般若心経を唱えるようになったら改善したと言う。
さて、私たちがヤーマン事変で戸惑っていた頃、全然別の場所では創価学会の友達がとても困った状況にいた。
その友達のタロットセッションをすると、一貫して「祈りで超えてゆけ」というメッセージが導き出された。
話はAさんとの通話に戻る。引き続き「宗教」というキーワードについてお互いの考察を深めていると、私のLINEが鳴った。義母からである。
「今朝夢に神父さんが現れて、庭にチャペルか祠を建てなさいって言われました。また相談に乗ってください」
これはもはや空前絶後の宗教祭りかもしれない。
まるでそれぞれの神が「俺が俺が」状態なのである。
コロナにより世界は激変している。
SNSにレゲエソングをアップしてくれた女子メンバーは「これは新世界の幕開けだ」と歌う。
宗教は困った事態にこそ必要なものだ。
祈ること、信じる気持ち。
だけどそれは全て、宗教を通して自分を信じているに過ぎないのではないか。私はそう思う。
なぜなら信仰というものは対象が何であれ、信仰心を持つことで自ずと「それ」は自分の内側に宿るからだ。
そして祈りの次の段階はアートなのではないかと感じている。
祈り、そしてそこから生み出すもの。
ヤーマン事変から数日が経ち、AさんとBさんは一緒に楽曲制作を始めたらしい。
お互いへの文句や言いたいことをラップにし、ダンスホールレゲエに乗せて歌うと言う。
そこで私はまた思うのである。
これこそがAさんの投げかけた質問の答えなのではないかと。
奇しくも「大天使チャミュエル」は探し物を見つけてくれる大天使なのだ。
Aさんの質問が頭の中でリフレインする。
ジャーラスタファーライ、ヤーマン、ボブマーリーの「関係性」とは?
その答えはONE LOVE、これがファイナルアンサーである。
ヤーマン。
後日談ではあるが、レゲエソングをアップした女子メンバーにこの記事を見せたのだが、実はあの歌はヤーマン事変の6時間前にSNSにアップしていたらしく、てっきりAさんは自分の歌を聴いてレゲエに興味持ってくれたのかな♡と思っていたらしい。笑
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