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さとなお×つだの雑談/前編(最近はまっていること/二人の出会いとは編)

「最近どう?」という互いの近況を雑談するシリーズ第1回。
FBC会長 佐藤尚之(さとなお)と、社長の津田匡保(つだ)が話します。
聞き手はディレクターの松田紀子(ジョン)です。

最近はまっていること

ジョン)最近、はまっていることって何かありますか?

さとなお)僕は一汁一菜かなぁ。まあやっぱり一番の趣味だった「食」をほぼ失ったところがあって(注:5年前にアニサキスアレルギー発症して魚介類が生でも焼いても煮ても、魚介ダシに至るまで食べられなくなった)。
最大最強の得意分野で本も何冊も書いていた「食」が、自分の中ではちょっと避けたいもの、目を背けるものになってしまって、さすがにちょっと辛かったんですよ。でもなんとかもう一回「食べる楽しみ」を取り戻したい。どうしたらいいんだろうといろいろ考えていて、やっぱ自炊なんだろうなと思ったんだけど、自分の中ではそれまで外食が中心すぎたから、自炊って何だか勝手に寂しいイメージがあったんですよね。それに料理がちゃんとできないっていうコンプレックスがあって。まあレシピを見れば作れるんだけど、それはそれで分量だの工程だの「レシピに支配される感じ」があって、自分的にはあんまり面白くなかったんですね。
そんな時に土井善晴さんの『一汁一菜でよいという提案』(新潮文庫)や、山口祐加さんの『自分のために料理を作る:自炊からはじまる「ケア」の話』(晶文社)などを読んで、一汁一菜はとてもシンプルだし、自分で作ってもレシピに支配されないし、魚介ダシを使わなくてもおいしい味噌汁が作れるというのも気が楽で。

さとなおの一汁一菜を紹介するアカウント(https://www.instagram.com/enjoy_ichiju_issai/)

ジョン)素晴らしい。それはお鍋に一人分作られるんですか、それとも2.3日食べれるぐらい作るんですか?

さとなお)一回一回の食べきりだよ。

ジョン)じゃあ、毎回同じものを3日食べているという状況にはならないことですね。

さとなお)毎回具も変えて、野菜をたくさん入れて食べている。大食いなんで二杯分くらい味噌汁作るんだけど。まぁシンプルだからレシピなんかいらないわけですよ。毎日やってるとコツも自然にわかってくる。「人参だとやっぱりもっと煮たほうがいいんだ」とかって、なんかちょっとずつ成長するから面白いんです。毎日料理作っている人からすると幼稚すぎるレベルではあるけど、とても面白い。
一菜が、「納豆だけ」とか「豆腐だけ」っていう時もあるけど、少しずつレパートリーも増やし始めてる。それもほぼレシピ見ないで、レシピに支配されない方向で。この延長線上にまた「食べる楽しみ」が出てくるかなぁ…それは楽しみだな、みたいに今は感じてますね。

ジョン)津田さんはいかがですか?最近はまっているものありますか?

津田)僕、さとなおさんと出会うまで、ルーティンって嫌いだったんですよ。でも、さとなおさんがルーティンを大事にしている姿(毎日のラン、読書など)を見ていて。自分もなんかルーティンを作った方がいいかもと思いはじめて。

ジョン)それはさとなおさんの生きる姿を見ていて、そう思われたってことですか?

津田)そうっすね。どうやったら自分の心と体をいい状態に持っていけるのかという課題があって。だからハマってるのって、朝のルーティンなんですよね。朝のルーティンをいかに良いものにしていくかっていうのを探究してやっていて。

きっかけは、会社のメンバーでやってる「1000日チャレンジ」なんですよね。(今ちょうど365日目くらい)小説とか詩とか論考を毎日少しでもいいから読んで、それを1000日続けようっていうのなんですけど。朝起きてスマホとか触る前に、いい文章や言葉を頭に入れるというのをやっていると、だんだんハマってきたんですよね。

スマホをベッドから遠くに置いておいて、朝の支度をやった後に一番落ち着ける場所で、詩とかエッセイとか読むんですよ。この瞬間が多分一日で一番、幸せな瞬間

注:画像はイメージです

ジョン)今、何を読まれているんですか?

津田)これというのは決めず、結構いろいろ試していて。何を読むと一番その一日を清らかな気持ちで過ごせるのかって。

ジョン)清らかさがポイントなんですね。

津田)やっぱりストレス多いじゃないですか、どんな仕事をしていても。
例えば谷川俊太郎の詩がいいのか、キョンキョンのエッセイがいいのか、武者小路実篤がいいのか?とかいろんなものを読んでいってる途中ですね。

さとなお)ジャンルは何が多いんですか?

津田)詩がやっぱり読みやすいです。銀色夏生さんとか。今、いい詩集を探しているので、この記事読んでくれた人におすすめを聞きたいです。

ジョン)それまではあんまり詩は読まれたことはなかった感じですか?

津田)パラパラとは読んでいたんですけど、ちゃんと毎日読むっていう習慣になると、しっかり入ってくるというか。朝に美しい言葉を頭に入れるのは、脳の栄養としてすごくいいなと思ったので。なんとなく、自分の発する言葉も変わってきている気はしますね。

さとなお)朝、僕は一汁一菜。そして津田さんは詩を読んで。

津田)どんな会社やねん(笑)。

津田)以前まで本当に意識低かったんですよ。ルーティンなんかやってられるかみたいな。それがかっこいいと思ってて。

ジョン)かっこよさの方向性がちょっとまた変わってきた?

さとなお)まあアフターコロナっていうのもちょっとあったり。あの時にみんな少し変わってるから。

津田)朝の時間を大事にするだけで人生変わると思います。

二人の出会いとは

ジョン)2人の出会いとなれそめみたいなところを伺いたいです。

津田)2015年くらいだと思うんですけど。今は「note」に在籍されておられる徳力基彦さんが、さとなおさんを紹介してくれました。一緒にランチしようって言って。
僕はさとなおさんの『明日の広告』(アスキー新書)から全部読んでたので、「神」に会えるという心境で震えながら待ち合わせ場所に向かいました
さとなおさんが震災支援されてるのも存じ上げていたので、僕も震災でこういうことがあってみたいな話をしたら、すごく共感をいただいて。お互いすぐにバッと打ち解けるタイプじゃないんですけど、深くつながった気がしました。 たまたまその一か月後ぐらいに、前職ネスレでの「ネスカフェ アンバサダー」の方をお呼びしたキャンプイベントを企画していて、さとなおさんをご招待したらふらっと来てくださって。嬉しかったですね、本当に。

ジョン)さとなおさんはランチで初めて会った時の津田さんはどんな印象だったんですか?

さとなお)2015年っていうと『明日のコミュニケーション』(アスキー新書)を書いたころかなあ? そこですでに「ファンベース」っていう言葉を使っていて、自分の中でしっかりと理論構築は出来ていたんだけど、実践は未経験だった。でも津田さんはすでにネスカフェ アンバサダーでファンベース的なことを実践していた人だから、理論と実践の乖離を指摘されるかも、と思って、実はちょっとおびえて会いに行った

津田)ホンマですか?嘘でしょう?(笑)

さとなお)いやいやホンマです。「ファンベース」の理論は、僕的に積み重ねてきたものだから正しいとは思っていて、でもやっぱり実践者は経験を踏んでいるわけだから、ちょっとビビってた。でも、こっちがビビってる時ってたいてい相手もビビってるんだよね。会ったら津田さんもちょっとビビっている感じがあって。

ジョン)津田さんにとっては憧れだったから、もうね。

津田)いや本当もうビビり倒してました。

さとなお)ランチの後キャンプに誘われたんだけど、ファンとの現場を見るってすごく大事なんですよね。あそこでの気づきが山ほどあって。そういう意味では、津田さんと会わせてくれて、そこからキャンプでのファン体験っていう流れを作ってくれた徳力さんにはとても感謝しています。
で、そのキャンプから三年後ぐらいに、またこの3人で会おうって話になった。

津田)僕が前職を退社するという報告を、お世話になったさとなおさんと徳力さんにせねばと思って。それで3人で飲み会をした時に、さとなおさんがファンベースカンパニーを作るということをお話されて、その場にも徳力さんがいるという(笑)。

ジョン)でもすごい偶然ですね。退社と会社の立ち上げが同じタイミング。

津田)僕はファンベースだけをやりたくて独立しようと決めたので、最初は一人でやろうと思ってたところもありました。

さとなお)その飲み会のタイミングが一か月ずれてもきっとだめだったよね。12月でもだめだし、2月でもだめだった。

津田)これは運命だと。さとなおさんの話を聞いた瞬間に、その場で「その会社、入っていいっすか?」と言いました。

ジョン)お二人はなぜ、ファンベースを仕事にしたいと思ったんですか?

津田)僕、結構現実的なんですよね。前職の経験上、やっぱり既存顧客、ファンの方の求めているものを理解して、企画や施策をやるっていうのが、中長期的に見たら絶対投資効率もいいんです。絶対にこっちの方が理論的にも自分の経験からも正しいと思っていたんですよね。でもまだ世の中の大半はそうではない。自分は自分なりにやろうとしたんだけどやっぱり違うこともいっぱいあったりして。で、先ほども言いましたけど、僕は現実的なんで、世の中はもう変わらないっていう前提に立つんですよね。「変えられないなら作ればいい。」
このファンベースっていう素敵な考え方の世界を、小さくてもいいからまず作っていけばいいんじゃないかと思ったんですよね。
個人でやるのか、もう一回転職して違う会社でそういう世界を作るか、いろいろ検討しようと。そしたらさとなおさんの会社設立の話に出会ったという流れです。

ジョン)さとなおさんはなぜファンベースに人生をかけようと思ったんですか?

さとなお)二つあって。一つめは、このままではこれ以上プロとしてクライアントの貴重な予算を預かれないと思ったから。
というのも、これだけ情報が溢れ、可処分時間が取られるコンテンツも果てしなくあって、企業からの一方的な都合のいい情報を受け取る暇も理由も生活者にはないという時代になっているのに、広告を制作するプロの立場としては、クライアントが一生懸命ひねり出しきてくれた予算を預かって認知を広めて話題化しないといけない。2010年ぐらいから「やっぱりそれはもう無理だよなぁ。貴重な予算をプロとして預かれないよなぁ」っていう気持ちが強くなっていたんです。で、そんな情報環境においても一番信頼できて確実に伝わるルートがひとつある。それは「友人や家族からの口コミ」。データではっきりそう出ているわけです。だったらそこを中心にもう一回コミュニケーションを再構築した方がいい、っていうか、しなかったらそれこそプロじゃないよなぁ、と。その流れの行き着く先がファンベースです。

もう一つは、ちょっとオーバーだけど「生き方」の話ですね。たとえば「裏表がある人」って絶対に信用されないじゃないですか。僕は、例えば友人であるあなた(松田紀子)に対して「これ売りつけてやろう」とか「なんとか買わせよう」とか絶対しないのに、広告という仕事でそれに近いことをしてるんじゃないかという、そんな裏と表をずっと感じていたんですよね。そんなの人生としてあり得ないって、特に東日本大震災以降ですかね、強く思った。裏表がない仕事がしたいと切望していた。
で、ファンベースはそういう「これ売ってやろう」みたいなのと、ものすごく遠いところにあるから自分の中で矛盾がないんです。その商品を大好きなファンの熱量がアップすることで売上が後から付いてくる、みたいなアプローチなので。

つまり、プロとしての仕事において「ファンベース」は唯一確実に伝わる方法だとクライアントに胸を張って言えることだし、ひとりの人間としての生き方においても「友人にしないことを仕事でしたくない」という自分の気持ちに正直になれるアプローチだったわけです。
つまり裏表ない生き方ができる。シンプルです。だったらそこに人生をかけよう、と。そんな流れですかね。

(第二回に続く)

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