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宇和島市教育振興基本計画「はじめに」

はじめに(ココロまじわうトコロの共創。志民の共育。)

 幕末から明治にかけて日本の社会が大きく変化した頃、宇和島は、四賢候の一人伊達宗城公をはじめ、護法の神・児島惟謙、法学者・穂積陳重、海運王・山下亀三郎、国文学者歌人・大和田建樹、画家・村上天心など、政治、法律、実業、文学、芸術等の分野で多くの偉人を輩出しました。その先見性や進取の気性の背景には文武、蘭学を奨励した宇和島の教育があるといえます。

 今、世の中は再び大きく変わる時期にあります。これまでの手段を目的化しないように、事業の本来の目的を見定めて、様々な取組みを通して好ましい変化を創り出していくことが重要です。
教育の分野においては「不易と流行」という言われ方がよくされます。その意味するところは、「目的と手段」あるいは「変わらぬものと変わるもの」の最適化だと言えるでしょう。

 現在のパンデミックから見えてきたことがあります。一つは ICT とオンラインの普及。もう一つはエッセンシャルワーカーの役割や価値の再認識です。前者は技術によって変わる手段(流行)、後者は技術で代えることのできない現実の本質(不易)という見方もできます。そして、前者は都市と地方の格差を減らす可能性を示唆し、後者は食(一次産業)をはじめ自然、風土、文化、歴史なども、他で代えられない地方の本質的な価値であることを示唆しています。
 従来の弱みを補い、本来の強みを活かす。社会と主体的に関わり、探求と協働を実践する資質・能力を学び取ることは、一人一人のやりがいや生きがいをもたらすことにもつながるはずです。

 ここ数十年の様々な社会情勢の変化にともなって、宇和島においても問題(ピンチ)と可能性(チャンス)が併存しています。若者の流出、少子高齢化、人口減少、コミュニティの希薄化、格差、貧困、孤独・孤立、災害、感染症、環境破壊等々は、見過ごせない問題です。デジタル トランスフォーメーションやSociety5.0、人生 100 年時代の到来等々は、取組み方次第で大きな可能性となり得ます。
 このような問題と可能性は、どちらもこれまで誰も経験したことがない変化に起因するものであり、現時点でその解決や開発の正解は存在しません。子どもはもちろん大人も含めて、多様な価値観の中で変化する時代を生きる私たちには、対立やジレンマに折り合いを付け、対話と協働で納得解を共に創る資質・能力が求められます。

 一人一人の幸福と持続可能な地域社会の共創。世代と分野を超えたオール宇和島の共育。
 これが宇和島の教育の基本理念(目的と手段)です。
 自分や地域に対する自信や誇りとともに、当事者意識に基づく自負心を持ち、他者を尊重し、対話や協働を通じて、古き良きものを守り、今ある問題を解決し、新たな価値を創造する。様々な社会的変化を乗り越え、豊かな人生を切り開き、持続可能な社会の創り手に共に育つことです。
 その様な地域とともにある生涯にわたる学びと実践を目指して、宇和島市教育振興基本計画を策定いたしました。ローカルで「生きる力」を育成するためのこの計画は、同時にグローバルな「持続可能な開発目標(SDGs)」の達成に必要な資質・能力の育成にも資する方針と施策の体系になっています。今後は行政、教育機関、事業者、NPO をはじめとする各種団体及び個々の市民の皆様と連携・協働しながら、不断の改善を重ねてまいります。

 令和4年3月
                 宇和島市教育委員会 教育長
                          金瀬 聡

宇和島市教育振興基本計画 - 宇和島市ホームページ


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