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初恋と忘れてしまった恋の仕方。


最近ふと気付いた事、
『恋してないな」って事だ。
思い起こしてみれば、私のこれまで人生は恋無しでは生きてこれない程、無数の恋に溢れていたように思う。
 一夜の関係が恋に発展したり、逆に一夜で恋が崩壊したりとした事もあった。
 けれどそれはそれなりに恋を追って、恋を楽しんで生きてきた気がするのだが、今現在、と言うかここ最近は、恋に対して極めて奥手で、それは奥手と言うものを通り越して、むしろ病的な臆病さを抱いている気さえする。
 『初恋』、と言う言葉が初めて異性を(もしくは同性を)意識してしまう意味合いなら、多分それは私にとっては幼稚園時代位に遡るだろうし、多分大半の人もそうだと思うのだ。
 けれども、本当に好意を寄せた相手と手を繋いだり、何処かへ出かけてみたいと言う意味合いなら、やっぱりそれは思春期の青臭い時期に相当するのだろうか。
 今でこそ、携帯電話が1人1台の割合で普及し、電話も、メールも、直にその相手に繋がる。とても便利な時代になったなあとは思う。
 反面、電話と言う物が一家に1台、掛ければ誰が電話を取るか分からないと言う、ギリギリのライン上で恋人の家に電話をかけていたあの頃がとても温かくて懐かしく、むしろだからこそ恋の炎も燃え盛っていたように思えるのだ。
 今、私達は気軽に連絡先を交換し、面倒くさいなって思ったら即時拒否、ブロックすればそれで終わりの世界に生きている。
 夜の公園や公衆電話で、目を朱に染めながら別れ話をしていた頃。
 『夜分遅くに失礼します』と言う挨拶を自然に習得した時。
 それは全て恋の産物であり、私にとってかけがえのない宝物だ。
 もう恋心が芽生える相手に出逢えないだろうという現実と、だけどもう一度あの頃のようにドキドキしながら電話をかけてみたいというときめきが今でも私の心の奥底に燻って、今夜もアルコールがもう一杯増すのだった。


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