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月と森のサブマリン ②                  たったひとりの建築冒険物語

…。
さて、家を造ると決めたが、
なにから始めたらいいのかさっぱり。
いろいろ考えていると、
土地の何処に家を建てればよいのか?。
…。
そうだ、
まずは、
建てる場所を決めよう。
…。
休日になると、
キャンプ用の組み立てイスと、
スケッチブックを持ち、
赤松林の中を歩く。
何処がいい?。
この地は寒冷地だ。
となると、
冬の寒さを考えた位置に家を。
つまり、
冬、
日差しが入る家。
となれば、
イスを持って林の中をうろうろ。
やがて太陽の動きを追う。
朝から晩まで。
太陽は東から上がり、
真南で一番高く、
西に沈んでゆく。
冬の南中高度を計算し、
日差しの角度を図面に描いた。
…。
まあ、土地の北側に家を建てて、
南側の赤松を適度に切れば、
冬場、
陽光が部屋の奥まで入るはず。
…。
土地図面と太陽の動きを考え、
家の位置を決めると、
測量にかかった。
…。
さて、測量。
当然素人。
いろいろ調べ道具を揃えた。
認定された巻き尺(50m)。
温度計。
地面に突き刺す鉄棒。
上限50kgのバネばかり。
オートレベルと三脚。
スタッフというでかい物差し。
…。
専門家はGPSやレーザーなどを使っているようだが、
そんな物は使えない。
…。
やり方は三角測量。
…。
それと、この地域の法務局に出向き、
公図を入手。
図面の基準点をベースに、
測量してゆく。
まずは基準点探し。
…。
基準点には杭が打たれているらしい。
だが、
見つからない。
公図を見ながら、
ウロウロ。
林道の脇を靴の爪先で落ち葉や土を剥がしてゆく。
すると、
あった。
コンクリートの上部にバッテンが入った杭。
これだ、
そんな基準杭を数本発見。
…。
さて次は、
家を建てる場所を公図上に記入し、
その部分を分筆する作業に入った。
…。
まずは家で図面上の作業。
公図のコピーに、
分ける土地位置を書き込み、
その角の点一カ所を、
二カ所の基準点からの距離を図面上で計算。
四角形の場合4箇所あるので、
合計8個の距離を計算。
この図面を林に持ち込み、
鉄棒を打ち込み、
2箇所の基準点から図面どおりの距離を測定。
言うは簡単だが、
実際は…大変。
途中経路に木々がワイワイ。
場所によって起伏。
水平面上で測量する必要があるため、
ここで使った事の無いオートレベル登場。
さんざん悩みながら、
測量点の高さを基準点と同じにして測量。
さらに、
巻き尺は温度によって伸び縮み。
そこで温度計で気温を計り補正。
また、巻き尺に基準のテンションをかける為にバネばかり。
二カ所の基準点からの弧が交わる点を探して、
何度も行ったり来たり、
灌木を切り開いたりと、
汗だく。
この作業を一人で、
一カ月ほど(休日)、
森の中を這いつくばりながら作業。
汗と呼吸の二酸化炭素に反応して、
何処からか蚊が襲来。
やがて、蚊とり線香をぶら下げながら作業。
そして、
土地にプラ杭を打ち込んだのだ。
現場作業が終わると、
家で結果をトレース用紙に書き込み、
法務局に届け登録。
…。
これで家の位置が決定。
…。
さて次は…。
森だから、
ニョキニョキ生える、
直径40~50㎝、
高さ20メートルのアカマツをどうするか?。
それが問題だ。
…。

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