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癒しのイルカフェ ~アニマルセラピー社会~
■はじめに
夏。田舎の縁側で猫と戯れる。
久々の帰省にも関わらず覚えていた様で、顔を擦り付けてくる。
タバコを吸った指を嗅がせてフレーメン反応を見る。
日常の「癒し」である。
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猫の顎をかきながら、なぜ「癒される」のか気になった。
今回はここに焦点を当ててみる。
動物による癒しで良く言われるのが「アニマルセラピー」。
まずはこのアニマルセラピーとは何だろうか。
アニマルセラピー協会の記載を引用してみよう。
■「アニマルセラピー」とは
動物との触れ合いで人々の心を癒す
それがアニマルセラピーです
皆さんは動物と触れ合う事で、心が落ち着いたりストレスが軽減したりなどの癒し体験を、一度はお持ちではないでしょうか。 そうした時、不思議と元気が出てきたり、自信がついた気分になられた事でしょう。 こうした「動物を通した癒し」がアニマルセラピーであり、私たち日本アニマルセラピー協会は、現在犬を用いたアニマルセラピーにより、広く人々に癒しを与える活動を行っています。
実はアニマルセラピーの歴史は古く、古代ローマ時代に負傷した兵士のリハビリに、馬を用いたアニマルセラピーが行われていたようです。 現在では、アニマルセラピーに用いられる動物には、馬の他にイルカなどがありますが、私たちにも最も身近な動物である犬を用いたアニマルセラピーは、20世紀半ばから本格的に始まりました。
なるほど、動物と触れ合う事で癒される事全体をアニマルセラピーと呼ぶ様である。現在では高齢者のふれあい増加や認知症の予防等に使われる。
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又、セラピー自体の種類はいくつかあり、医療の現場や学校教育への活用も行われている。
動物介在活動Animal Assisted Activity,
AAA:動物と ふれあうことによる情緒的な安定,レクリエーション, 生活の質の向上等を主な目的としたふれあい活動。国 内の多くの活動はこれに属す。
動物介在療法Animal Assisted Therapy,
AAT:人の医 療現場で,専門的な治療行為として行われる動物を介 在させた補助療法。医療従事者の主導で実施。精神的 身体的機能,社会的機能の向上等,治療を受ける人に 合わせた治療目標を設定,適切な動物とハンドラーを 選択,治療後は,治療効果の評価を行う。
動物介在教育Animal Assisted Education,
AAE:小学 校等に動物と共に訪問し,正しい動物とのふれあい方 や命の大切さを子どもたちに学んでもらうための活 動。
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その治療効果としては表情が豊かになったり、前向きになったりするようである。
■社会性と癒し
では、どんな動物であればこの「癒し」を得る事が出来るのだろうか。
歴史を見て見る。
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第 3 節 人と動物の歴史
アニマル・セラピーが人に良い効果をもたらすことができるのは何故なのか、人と動物の 歴史から考える。人が動物と生活を共にする・家畜化するようになったのは、何万年も前か らと言われている。一番古くに家畜化された犬においては、様々な研究がなされ議論されて いるが、大森ら(2009)によると 20,000 年~15,000 年前頃に家畜化された可能性が高いと いう。家畜化の起源は様々な論が存在するが、狼(のちの犬)が人の居住区に入ってきた際 に食べ物を与えたことが起源と考えられている説が有力である。他にも、猟で囮として利用 するため、信仰のため、ペットとして利用するための心理的欲求などがある(レビンソン 2002)。 どのような起源であった場合でも、人と動物が今日まで生活を共にできているのは、社会 性動物との共生が可能であったからと言える。あるいは互いの利害の一致とも言えるので はないかと考える。レビンソン,B.M.(2002:2)は、「多くの高等動物はある種の社会的 技能を身につけており、相手が敵でない限り友好的に行動する」と述べている。そして、集 団を形成する社会性動物がペットとなっていたとも述べている。
つまり、社会的生活・群集性を保つ事が出来る動物がお互いの利益(生存)の為に共生しあう事が出来、その活動そのものが癒しであると感じているのである。
■「○○カフェ」と社会性
一旦ここまでで最近流行りの「○○カフェ」にいる動物について調べてみる。それぞれの動物に社会性が存在するか否かである。
①アルパカ
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アルパカの原産地は南米のアンデス山脈地域で、特にペルー、ボリビア、チリ、エクアドルに広く分布しています。
アルパカは非常に社交的な動物で、群れで生活することを好みます。
単独ではなく、常に数頭以上の仲間と一緒にいることで安心します。
また、アルパカはボディランゲージや声を使ってコミュニケーションを取ります。
鳴き声は、警告、仲間との交流、威嚇など、様々な意味を持っています。
さらに、アルパカはストレスや威嚇のサインとして唾を吐くことがあります。
②サモエド
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サモエドの名称はロシア北部及びシベリアのサモエド族に由来している。その南部では、ホワイトとブラックかブラウンのパーティ・カラーの犬をトナカイの狩猟に用いていた。北部ではピュア・ホワイトで、性格も穏やかな犬が、猟犬や橇犬として用いられた。サモエドは飼い主とともに生活し、小屋の中で寝ることもあり、暖房代わりにも用いられた。
③うさぎ
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うさぎは群れで生活する動物です。
これはうさぎが『社会性を持っている』という意味です。社会性を持っているということは、いろいろな決まりの中で生活することができるという事ことです。
例えば、これから生活を一緒にしようと思っている人には一番気になる毎日のウンチやオシッコのお世話は、意外と簡単です。
④猫
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猫は群れを作らない動物だから社会性はなく、単独で生きる、という解説をよく耳にします。じつは、これは大間違い。猫も私たち人間同様、他の仲間たちとうまくやっていける社会性のある動物なのです。
⑤フクロウ
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タカ目の中には社会性を持ち集団で行動する種も見られますが、フクロウ目の鳥は例外なく単独生活です。
このため他のフクロウとの交流や社会性はなく、生きていく上であまり必要がありません。
「社会性がないこと」はつまり、コミュニケーション・スキンシップなどをほとんど求めないということを意味します。
単独生活であるがために、自分の縄張り(パーソナルスペース)を広く持っているのです。
こうした生態からいえるのは、最近の風潮ともいえる、むやみに体を撫で回したり、狭い範囲の複数羽飼いするといった飼い方が、根本的に生き物としてのフクロウに「合っていない」ことがお分かりいただけるのではないでしょうか。
調べてみるとフクロウ以外は基本的に自身の種において社会性を有しており、その社会規範のルールに則り生活を送っている事が分かる。
つまり、人間とそのルールが合致する(利害が一致する)場合、十二分に「癒し(≒安心)」を得る可能性が高いのであろう。
■新しい○○カフェ
ではここまでの内容から「新しい○○カフェ」に出来そうな動物を考えてみたい。
※ただの考察なのでワシントン条約とかその辺の規制は無視する。
①ゾウカフェ
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ゾウは非常に社会性に富んだ動物である。
数頭から数十頭の群れで活動し、人間と絆を築くことができる動物である為、非常に適正が高い。
しかし、アジアゾウでもサイズは2.8m,体重4000kgもあり、「癒される」どころか色々「壊される」可能性の方が遥かに高い為不適切である。
②キツネザルカフェ
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ワオキツネザルはメスを中心とした自衛集団で生活し、声や触覚、匂いなどを使ってコミュニケーションをとる。顔の表情や奇妙な姿勢によってもコミュニケーションをとる事が可能である。
「適切」と思ったが、どうやら密漁や生息地の破壊、食用やペット用の採集により絶滅危惧種に指定されているらしい。それはマズイ。
③イルカフェ
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イルカは高度に社会的な動物で、仲間同士でコミュニケーションをとりながら群れで狩りをしたり敵を回避したりします。
グループ形成の仕方や、グループ同士で近づかないようにする行動、グループ同士で違う時間に縄張りを利用するという行動は、人間に近しいものがあり、好奇心旺盛なので人間にも怖がらずに近づいてきたりします。
非常に適切な動物である。「水中」である事を除けば。
ただ、簡易な水中防護スーツの様なモノが出来るのであれば出来るし、水槽に手を入れるだけの「箱の中身はなんだろうな」形式だっていい。
ありである。
④ハチカフェ
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ハチは社会性昆虫の一種で、群れで生活し、役割分担をしながら巣を作り、繁殖や育児などを行っている。
社会性において非常に適正が高そうである。しかしながら人間を敵視する場合もあり、「なつく」と言う事も難しい。
なにより刺される。顔を腫らし、痛みに耐えながら飲むコーヒーは美味しくない。
■終わりに
実家の猫を触っていたらアニマルセラピーから動物の社会性、新しい○○カフェの考察とずいぶん遠くまで来てしまった。
しかし、イルカフェは水族館隣接であれば何とか出来そうである。
行ってみたいものだ。
ここまで書いて気が付いたが「先週一言も人と話をしていなかった私こそが一番社会性が無い」かもしれない。
誰かを癒すことは難しそうだ。
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