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【おうちで発酵】#19 炊飯器の保温モードで(なるべく温度を下げて)醤油麹をつくる~ごぼうのじっくり炒め、青菜炒めに活用

「〇〇麹」に、どうも苦手意識があった。
2010年代に塩麹の一大ブームが訪れて以降米麹を上手に活用される方が増え、麹や発酵がぐっと身近になったが、私はその「塩麹ブーム」に乗れなかった。

「麹」は味噌や醤油の原料で、家庭で使うものとは思っていなかったし、塩麹がなぜ「使うと美味しく」なり「食材を柔らかくしてくれる」のか、得体が知れない感じがして手が出せなかった。風味も当時の私には少々馴染み難く、ある時塩麹の大きな袋をいただいたのに、使い切れず申し訳なく思った。

その後私の忙しさや生活スタイルも一変し、年齢に合わせて食の嗜好も少しずつ変わる中、少し前から発酵に興味が出始めた。
そのまま食べるのは苦手な酒粕や甘酒を、漬物の材料やパン酵母に使うようにもなった今、

・・・そろそろ麹系調味料にも歩み寄れる頃合いでは?

自分に最もなじみやすい麹系調味料を模索し、醤油麹が良いのではと思った。
何より簡単につくれる。材料は米麹と醤油だけ。常温でじっくり待ってもよいし、ヨーグルトメーカーなら半日ほどで完成するという。
ならば同じく米麹を使った発酵あんこの要領で、炊飯器の保温モードでつくれるのでは?

という訳で、いくつかの動画やサイトを見比べ、今回はこちらの動画を参考にさせていただいた。

ヨーグルトメーカーで発酵させることで糖分が増え、甘じょっぱくまろやかな醤油麹になるという。それは美味しそう!

手持ちの調理機器の設定可能温度を確認したところ、我が家の電子レンジやグリル、ホームベーカリーの発酵機能はいずれもパン向きの30~40℃設定。今回の適温である50℃超を保持できるものはなかった。
炊飯器の保温モードはおそらくやや高温すぎるが、発酵あんこの時と同様、蓋を開けて濡れ布巾をかぶせたり、時々電源を切ったりしてなるべく温度を下げればなんとかなるだろうか。まずはやってみよう。

《炊飯器でつくる醤油麹・材料》
・米麹(今回は乾燥タイプ。生でもよい):100g
・濃口醤油:200g(麹が浸る分量≒約2~3倍。どの作り方もだいたいこの範囲。2倍が最も多かった)

《作り方》
1)米麹を炊飯器に入れ、醤油を注いでよく混ぜる。

混ぜたての状態。麹はぱさぱさ

2)「保温」モードで6時間加熱。
そのままだと温度が高過ぎるので、蓋は閉めずに軽く布巾をかぶせ、時々電源を切って調整。2時間おきくらいに空気(酸素)をとり入れ、酵素の活動を活性化させる。また、乾燥麹が水気を吸って足りない場合は適宜水を追加。今回は途中で少しずつ、計120cc程度加えた。

6時間経過。3時間ぐらいからぐっととろみが増し、甘くかぐわしい良い香りが漂う。味見すると旨味が増していたので、好きな味のあたりで止めました

4)好みの加減(固さや甘さ、旨味)になったら発酵を止め、冷蔵庫へ移して保存。

冷ましてから冷蔵庫へ

かなり適当に作った割に、美味しい。
もともと好きな醤油(ヒゲタの徳用。普段から漬物や料理に愛用)を使ったので前後の味の違いがよくわかる。旨味はぐっと増し、塩気は米麹を加えた分だけ和らいでいる。程よいとろみでそのまま舐めても美味しく、香りも含めて私の好きな「醤油の実」に似た感じの味だ。考えてみれば原料や工程がかなり近い。なんだか急に親近感がわいた。

これなら気軽に使える。ドレッシングや和え衣の材料にしたり、納豆に混ぜたり、豆腐にのせたり(温・冷どちらでも)、焼きおにぎりの醤油の代わりにも良さそうだし、炒めものに使ってさらに凝縮させても美味しそう。

という訳で早速使った。

ある日の夕食のひと皿。
上の鶏もつは外出先の豊川で購入、帰って作った炒めもの2種の味付けに醤油麹を使った。どちらも美味しい。いわゆる「これひとつで味が決まる」というやつです。確かに便利だし、何より自作しているから安心。

◆ごぼうのじっくり炒め

ゆっくりじっくり炒めるのがポイント。醤油麹の旨味とよく合います。おすすめ

洗って皮をこそぎ、ささがきにしたごぼう中2本をお好みの油でじっくり炒め(きんぴらのように強火でさっとではなく、最初にやや強めの火で表面を焼き固め、弱火~中火でゆっくり水分を凝縮させて行く)、仕上げにはちみつ少々と醤油麹小さじ1程度を全体に絡めて軽く焦がし、火を止め余熱で味をなじませる。

※軽く焦がすことでカラメルっぽい風味が出ます。焦げ付きそうならお酢を少々。

※ごぼうの切り方は拍子木切りや細切り、四つ割り等でも美味しいです。お好みの食感の切り方でどうぞ。

元々好きな調理法の味付けに醤油麹を使った例。普段はバルサミコ酢を使ってアグロドルチェっぽくしたり、塩とガラムマサラでシンプルに仕上げたりする。醤油麹は炒めごぼうとの馴染みが良く「もっと何かした」みたいな味になる。良いですね。おすすめです。

◆かわながれ菜のごま油炒め

数日前に新潟へ行く用があり、帰りに長岡に寄ると、駅ビルのスーパーで「かわながれ菜」というのを見つけた。

先日横手市で見つけた「ふくたち菜」に似たものかな?と思って調べると、こちらは小松菜に近い種類のようだ。

やはり冬前に種まきして雪の下で越冬させ、甘みを増したとう立ち菜で、3~5月初めぐらいが旬。小松菜に合う調理法は大概合いそう。まだ茎も柔らかかったのでシンプルに炒めてみる。

かわながれ菜はよく洗って食べやすい長さに切り(茎の部分は一応叩いて火が通りやすくした)、ごま油でさっと炒め、仕上げに醤油麹を小さじ1程度。こちらは焦がさないようすぐに火を止め、冷ます過程で味をなじませる。

こちらも美味しかった。
青菜が持つ甘味やふくよかな感じにごま油で香ばしさが加わり、醤油麹でさらに引き立つ。ごぼうにははちみつを少々使ったが、こちらは醤油麹だけ。ちょっとで深い味になる。
醤油麹、良いですね。気に入りました。

ただ、思ったよりも「甘み」は出なかったので改めて温度帯について調べたところ、いくつかの麹専門店・酒蔵サイトから以下のことが分かった。

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◆麹の酵素が働く(発酵する)温度:15℃~60℃。
好きな温度は約20℃、60℃で失活(糖化が進まず、それ以上甘くならない)。

◆糖化酵素(麹を甘くする酵素)が働く温度:55℃前後(53~58℃。故に甘酒はこの温度帯でつくられる)。50℃未満でも甘くならず、60℃を超えると失活(60℃超が30分続くと麹菌死滅)。糖度が最高になるのは3~5時間程度。過発酵になると酸味が出る。

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つまり、常温でも発酵は進むので醤油麹はつくれるが、温度が低いため糖化酵素は働かず、甘みやまろやかさは出ない。
今回の場合はおそらく温度が高すぎる時間が長く、糖化酵素が十分には働かないまま失活したのだろう。でも元の醤油に比べればずいぶん甘い感じやとろみはある。ありがとう酵素たちよ。

麹…やはり生き物ですね。
塩麹の時はそのわからなさがなんだか怖い気がしたが、醤油麹は「次は好みの甘さにつくってみたい」気になった。何より美味しい。
同じく以前あまり甘くできなかった発酵あんこも、きちんと温度管理をすれば好みの感じに行き着けるのかも知れない。

――という訳で、この後即ヨーグルトメーカーを買いました。

調理機器はなるべく増やしたくないと思っていたのだが、ここ1年でホームベーカリー、ミキサー、ヨーグルトメーカーとずいぶん増やしてしまった。買ったからには活用しないとなあ…。


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