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夜の十分作文✏️数学の先生が言うと

予備校に通っていた時。
数学の授業で
先生がさらりと
言ったことがあった。

人生で本当に好きになるのは
5人くらいのものだ。

確率やらシグマの出てくる
あたりの授業だっただろうか。

ほかの科目の先生が言うより
数学を専門とする先生が出す
「5人」という数字は
何とはなしに説得力があった。

みんな誰かの
「5人」のうちの
一人かと思うと
すごいことだと思う。

吉田弘さんの「生命いのちは」
を思い出す。

生命は
自分自身だけでは完結できないように
つくられているらしい
花も
めしべとおしべが揃っているだけでは
不十分で
虫や風が訪れて
めしべとおしべを仲立ちする
生命は
その中に欠如を抱き
それを他者から満たしてもらうのだ
世界は多分、他者の総和
しかし
互いに欠如を満たすなどとは
知りもせず
知らされもせず
ばらまかれている者同士
無関心でいられる間柄
ときに
うとましく思うことさえも許されている間柄
そのように
世界がゆるやかに構成されているのは
なぜ?

花が咲いている
すぐ近くまで
虻の姿をした他者が
光をまとって飛んできている

私も あるとき
誰かのための虻だったろう

あなたも あるとき
私のための風だったかもしれない

吉田弘「生命は」

今、『金色夜叉』を読んでいて
いろいろと思い出した。

なんの意味もないけれども。
恋に敗れて
高利貸の鬼となった
貫一に会って
先の詩を
数学の先生の話しを
してあげたいと
読書してしょんぼりしてゐる。

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