映画 ビッグリボウスキー

「全員悪人」ならぬ「全員変人」
コーエン兄弟のサスペンスコメディ映画。
大好きな作品です。

「コーエン兄弟」の作品はちょっと、、、と思う方もいるかもしれません。独特の空気感がありますよね。ただ、この作品は比較的とっつきやすいと思います。

その日暮らしでプラプラしている主人公のデュード(本名ジェフ・リボウスキー)がある日、同姓同名の大金持ちと勘違いされて強盗に遭います。お前の女房が作った借金を返せと。
お気に入りの敷物を汚され、後日、大金持ちのリボウスキーの所に弁償を求めに行った事から事件に巻き込まれていくのですが、、、。


正直、ストーリーはどうでも良いんです(笑)

この作品の観るべきところはおしゃれな映像と、緩い展開と、クセの強い登場人物達です。

映像と言っても多少の古臭さは否めませんが、気持ちの良い音楽でボーッと観ていられる映像が間に入ると、気持ちがリラックスするのか、中々進展しない本編の緩い展開がちょうどよくなるんですよね。デュードのペースにハマっていく感覚。
ホント、起こる出来事が全て中途半端で。こうなるのかな?という予想は悉く裏切られます。とりあえず頓挫する。進まない(笑)


そして、登場する強盗の二人組も、誘拐犯三人組も、金持ちのリボウスキーも、その娘も。ボウリング仲間も。あと語り部も。
みーんななんです。

デュードも酷いもんです。服装は常に部屋着、電話には出ない、年がら年中葉っぱを吸い、酒を飲み、働かない。どうやって収入を得てているのかは謎ですが、仲間とボウリングしてのんびり暮らしてます。どうやら過去に音楽関係の仕事をしていたようですが、、、。


そんなデュードが、誘拐事件の金の引き渡し役を任されるのですが、親友のウォルターが人肌脱ぐと言ってついてきます。ベトナム戦争を経験し、荒事にも怯まない頼もしい男。

このウォルター。自分だけの謎のルールを自らに課していて、他人とうまくやっていく姿がまるで想像できません。
ウォルターが関わると全て100%失敗します。
失敗というか問題が悪化します(笑)
どんなに暴力を振るわれても怒らない温厚なデュードが、唯一ウンザリしてキレる相手。
彼を笑って観ていられるかどうかが、この作品を好きになるかどうかの分岐点になると思います(笑)

この作品の中で一番危ない男はダントツで親友のウォルターですが、決して悪い奴ではありません。デュードの為に頑張るんですが、必ず失敗してしまうんです。
他の登場人物もみんな変なんですが、過激に描かれているだけで、あ〜こういうやついるよねっていう人ばかりで。
みんな、ちょっとやり過ぎちゃうだけなんです。
デュードが付き合いを深めていくと、変な部分以外の、マトモな面が見えたりもするんです。極稀に。
ただ、とりあえず全員必ず変な所を前面に出して登場するのは徹底されています。(笑)

巻き込まれた事件には実は裏があって、解決するまでに色んな人がデュードに絡んできます。
デュードは決して聖人君子という訳ではないですし、頭が切れる訳でもありませんが、とにかく自然体を崩しません。いつでもフラット。

トラブル続きでも、慌てず全てを受け入れていれば結局うまく事が収まるんです。


散々デュードに迷惑をかけ続けるウォルターですが、なんだかんだ言って、やはり親友なんです。
不器用だけど、デュードにとって、一緒に悲しんたり喜んだりできる、かけがえのない存在なんだとわかるのが最後のシーン。

最後の灰を蒔くシーンで泣いてください。
腹筋が痛くなるレベルの爆笑をしながら目頭が熱くなる。
滅多にない経験ができます。
このシーンが本当に大好きで!このシーンだけ見て欲しいくらいなんですが、本編でウンザリしてからでないとこの感動が得られないんです。

一事が万事、全て失敗する彼ですが、彼がやりたかったことも分かるし。そしてできない自分に反省もする(笑涙)

もう一個ウォルター絡みで好きなトコが、デュードが電話でウォルターに絶縁を言い渡すシーン。最後に「ボウリングの練習には行くよ」って返事してるトコ。
ウォルターの声も入ってないし、ジェフブリッジスの一人芝居なんですが、電話越しのウォルターの動揺している姿が浮かんでツボでした。


変な人に対する愛情というか、他人の変な部分に対する愛情というか、、、
おかしな方向性ではなくて、そういうトコあるけど、それも含めてコイツいい奴なんだよっていう、ごく当たり前の寛容さ。

人の個性、特異点への良き理解者の目線。そういう人間愛に満ち溢れた作品(!?)なんです。

思い返してみると、自分自身、変なこだわりを発揮して周りを困らせた経験ってありませんか?
それで終わってしまう関係と、それを受け入れ合える関係。
ビジネス(損得)の関係とプライベート(好き嫌い)の関係と言っても良いかもしれません。

プライベートを最優先させた生き方。
「男はつらいよ」に通ずるものを感じます。

自然体を崩さず、全てを受け入れる彼のスタンスは一つの男の美学です。最後に「デュードは死なない」という謎のセリフがあるのですが、この美学が不偏のものだというメッセージなんですかね?

観終わった後はきっと、少し他人に寛容になれると思います(笑)

この記事が参加している募集

おすすめ名作映画

映画感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?