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20歳、初めての恋人

 小学生の頃は、中学生・高校生になったら恋人など自然できるものだと思っていた。しかし現実は甘くない。恋愛のれの字も通り越すことのないままあっという間に大人になった。私は思春期が始まってすらいないのではと不安になった時期もあったが、ひとりでいた時間が長すぎて、というか既に何の根拠も持たず、ひとりで生きていく決心をしていた。そして自分のセクシュアリティをぐるぐると考えた。恋愛に踏み出さなかった、踏み出せなかった理由は色々ある。

 やっぱり一番は自分が傷つくのが怖かった。身体的な痛みを感じることも怖いのに、心の痛みなんてもっと怖い。とにかく自分を守りたかった。傷ついて得られる感情なんてどうでもよかった。誰に何を言われても、傷つきたくないことを盾にした。


 他には、『好き』とか『愛』とか、そういう答えの出ない問いに無理やり答えを出そうとして自分で思考を複雑にしていたというのもある。ただの一目惚れのようなもので恋に落ちたことはあったけど、それは何も始まらなかったし、始まらなかったのに感情は燃え上がった。だからこそ、混乱した。言葉を交わしたことのない相手を想った時の感情はあんなに大きかったのに、なぜ人を好きになれないのかと。結局好きとはなんなんだと。

 そんな風に拗らせを極めていた私がなぜ今になってすんなりと恋人ができたのか、というのには1ヶ月海外に語学研修へ行って人生(でかい)に対して前向きになったこと。そして、これまで自分と向き合って苦しんできた時間がようやく形になったこと。これに尽きると思う。世界は広いんだということを実際に目の当たりにしてみると、びっくりするくらい視界が開けた。そういう良い状態で、縁があって再会した人とデートを重ねて、お付き合いすることになった。

 再会、ということだからもちろんこれまでに時間が重なっていた人だ。ちなみに、7年前くらいにうっすら片思いをしていた。その時はまだ『好き』が軽かったから、本当にただかっこいいなくらいの、ゆるりとした感情だった。だからこそ、今の自分の状態がとても良い時に、取り繕う事もなくありのままのわたしを見せられて、そんなわたしを好きになってくれたというのだから踏み出そうと思った。


 もちろん拗らせなので、周りの人間にたくさん相談した。何もわからないから相談するしかなかった。とっても難しかった。告白してくれた恋人にもそうだし、縁を繋げてくれたひと、相談に乗ってくれたひと、届かないけど、ありがとうね。

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