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管理職として大切なことは「エンパシー&エンパワメント」|熊本県教育センター学校マネジメント研修より

熊本県教育センター主催にて、熊本県内の校長先生をはじめ管理職の先生向けに学校マネジメント研修を行いました。

毎年恒例となったこちらの研修。今年も、高校を始め、小中学校、支援校の管理職の先生方と共に、一人ひとりが愛とパワーを発揮できる組織を創る上で、管理職としてどうあるかを探究していく場。

今年の先生たちは、昨年に増して対話の学びに対する関心が高く、実際に自校で対話の取り組みを行っているという学校もちらほら。対話の概念から実践へと着実に進んできていることを実感。

「受容しなければならない」「言いたいことが言えない」という葛藤

同時に、対話を重視することで「教職員や生徒たちを受容しなければならない」という前提が生まれ、管理職として言いたいことが言えない、自分を出せない、どうやってリーダーシップを発揮すればいいかわからない、という葛藤を感じている先生方も多くいらっしゃるよう。自分も相手も尊重しながら、お互いがより高め合っていける関係性を築くにはどうしたらいいのかを、一緒に探究していく。

とても能力が高く優秀な若手のS先生へ、言いたいことが言えずに悶々としていたT校長。

『成績が下がっていた生徒に対して、S先生が3日間ずっと個別に指導をしていたのですが、自分ならどう解くかということをひたすら言い続け、ずっと主語が「自分」なんですよ。。いつまで経っても主語が生徒にならない。
S先生は優秀だからそれで解けるかもしれないけど、理解が追いついていない生徒の気持ちのことなどまるで考えていない。
私は隣の部屋にいたのですが、全然生徒に寄り添わないS先生の指導にイライラしっぱなしでした。。』

そう話してくださったT校長の奥から、生徒一人ひとりの存在を尊重し、わからない気持ちを受容した上で、その子なりの成長と気づきを高めるサポートをしていきたいという願いが伝わってくる。

同時に、「教師たるもの生徒に寄り添って当然なのにそれがない」という前提のフィルターからS先生を見ることで、S先生の「ない(できていない・足りない)」ところばかりが目につく。しかし、正しさを振りかざすと角が立ちそうで相手に伝えることができず、悶々とされていた。

演習を通して、S先生とT校長が無意識に持っていた「べき」と「願い」が見えてくると、T校長は「はっ」として

『私の方が、S先生の気持ちなどまるで考えていなかった。。S先生に全然寄り添わず、自分の「こうあるべき」からしか見ていなければ、分かり合えるはずがないですね』

とおっしゃっていた。そして、S先生ともう一度向き合ってみる。

今度は、S先生の「ない(できていない)」ところだけではなく、「ある」こと(S先生への想い)も伝える。T校長が、S先生役の相手に会話の練習をする。

「S先生は、3日間もあれだけ熱心に個別指導をして生徒への想いと情熱はすごいし優秀だと思うけど、もっと生徒の気持ちに寄り添えるといいですね。」

うーん。この文章から、何が伝わってくるだろうか?

管理職から「あなたは熱意もあるし優秀だけど、もっと生徒に寄り添って」と言われたら、「生徒に寄り添えていない」という部分だけが強調される。前半に「熱意もあるし優秀」といくら承認されても、「けど」の接続詞によって、承認がダメ出しをされる前のフォローに聞こえてしまう。

これでは、「承認」も「T校長の願い」もどちらも伝わらない。ただただ「ダメ出しされた」「(こんなにがんばっているのに)認めてもらえなかった」という気持ちだけが残っていく。

管理職として大切なことは、「エンパシー&エンパワメント」

「心からの共感や承認(エンパシー)」と「更なる力を引き出す(エンパワメント)」という、ラブとパワーを両方高めていくこと。

それを意識して再度トライ!

「S先生の生徒への想いと情熱は本当にすごい!教科の知識についても本当に優秀で素晴らしいなと思っています。そして、生徒の気持ちに寄り添えて指導していけるとさらに、S先生の情熱と優秀さがいかされていきますね!
S先生の力をもっと活かせるために、何か私にできることはありますか?」

S先生役をしてくださった先生は、「うん!これなら、期待してもらっていることが伝わってきてやる気が出ます!素直に受け取れます。」と、まるで自分が承認されたように嬉しそうな表情。

T校長も「なるほどー!!こう伝えればいいのか!やってみます!」と熱心にメモを取っていらっしゃった。

エンパシー&エンパワメント

対話が重要視され、相手を受容する大切さはだいぶ浸透してきた。しかし、受容が行き過ぎると「停滞」という副作用が起きる。自分の「願い」を相手に伝えること。そして、相手の本来の力を引き出す(エンパワメント)サポートをすること。

リーダーとしての力(パワー)の使い方が、今まさにどこに行ってもテーマとして浮上してくる。

リーダーに限らず、私たち一人ひとりの力(パワー)をどう使うか。

「させる力」で強要・支配するのではなく、自分の「願い」を自ら体現し、この世界に表現していく「する力」として使うこと。

Power over/under(どちらが正しいか)から、Power with(互いを尊重する)へ。

ランクが高くパワーが強い人を批判して引きずり降ろすのではなく、一人ひとりが自分の願いから「する力」を高めて自己表現し、お互いをエンパワメントしあえる社会へ。

私たち一人ひとりの力の使い方が、向こう5年間の大きなテーマであることは間違いない。

**参加者の声**

・対話の中身が今までの研修では体験したことのないものでした。改めて対話することのすごさを感じました。自分の願いを考え続け、自分らしさを大切にしながら進みたいと思います。(公立小学校校長)

・人と人との関わりの大切さ、深さを感じました。自分の思いがすべてではない。自分の願いを伝え、もっともっとよりよい関係性を築いていきたいです。表現力、共感力に感動しっぱなしでした。(公立中学校校長)

・自分自身は管理職としての自信がなかなか持てていませんでした。ただ、自信のなさは普段は見せられないので、救われました。ここでいただいたアドバイスを大切にパワーとラブのバランスを大事にしながら元気な心で意図を大切にしながら対話をしていきたいです。(支援学校校長)

・学校として、とか、校長として、でなく私はこんな気持ち、と言われた時、本当に分かり合えそうだという気持ちになりました。まず一人一人が人としてつながり合えるといいなと思いました。(公立小学校校長)

・自分の学校経営や人材育成に関しての考え方について、立ち止まったり、整理することができた、忘れられない体験となりました。(公立中学校校長)

・お互いの意図、願いを分かち合って、風通しの良い職員室づくりをしていきたいです。演習がとても参考になりました。私も本物さからつながりあえる関係を先生方と作っていきたいです。感動しました。(公立小学校校長)


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