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ファミクル「家族ライフサイクルを深める」 第2回 変化する家族を支援する秘訣自立の一歩:巣立ち期の挑戦を理解し支える

家族の一員として、あるいは家族支援者として、一人の大人として成長した「巣立ち期」の本人にどのように接していいか迷うことはありませんか?

「巣立ち期」はどのような意味を持ち、どんな課題があるのでしょうか。また、それらの課題にどのように対処し、若者たちの自立を支えることができるのでしょうか。

本記事では、家族ライフサイクルの観点から巣立ち期の家族の理解を深めていきます。

家族ライフサイクルについては以前の記事を参照ください。

https://note.com/familabo_113rd/n/n4df813a82002?magazine_key=m09057976a9d9


巣立ち期に求められる2つの責任

この時期、特に心に留めておきたいのは「情緒的責任」と「経済的責任」の受け入れです。これらは、自分だけの道を歩み、大人の世界で輝くための大切な足がかりとなります。

「情緒的責任」は、自分の感情に向き合う能力を指します。喜びや悲しみ、怒りや恐れといった感情を適切に扱い、溜め込みすぎることなく、人を傷つけることなく表現し、他人に伝える能力が求められます。これを身につけることで、ストレスのコントロール、対人関係の保持、自己認識の確立などが実現し、精神的な健康を保ち続けることができます。また、他人の感情に対する理解や共感もこの中に含まれます。

「経済的責任」は、自分の生活を支え、お金を賢く管理する技術です。生活費を工面するだけでなく、節約や予算の設定、未来のための貯蓄も大切なスキルで、自分だけの生活を築くためには必要不可欠です。

これらの2つの責任を受け入れるために必要な5つの課題を解説します。

巣立ち期における5つの課題

①原家族からの自己分化
巣立ち期の最初の大きなステップは「自己分化」です。自己分化とは、自分自身の感情や思考を他の家族のものと区別することです。これにより、感情的に巻き込まれずに家族と付き合い、大人の対話を行う能力が身につき、アイデンティティを発見し確立していくことにつながります。

②親密な仲間関係の発達
次に、社会とどう関わるかを学んでいきます。家族以外の友人や職場の同僚とのつながりを深めることで、人間関係のスキルを磨き、協力の大切さを実感します。また、カップル形成期に向けてパートナーと深い関係をつくりあげていく時期でもあります。

③経済的・職業的な自己確立
自分の生活を自分自身で維持するためのスキルや知識を身につけていきます。学校の勉強、就職活動、自身のビジネスを始めるなど、経済的自立へと進んでいきます。

④両親の助言的立場への移行
巣立ち期では、親もまた新たな役割を模索します。子どもたちが自立していくにつれて、親は子どもを世話する役割から、見守り助言する役割に変わっていきます。これは、子供たちが自分で思考し、行動する力を持つことを信じ、尊重していくことの姿勢の表れでもあります。

⑤スピリチュアル/宗教/自然に対する世界観の確立
最後に、スピリチュアル、宗教、自然への深い思考を通じて、自己の世界観を築いていきます。生きる目的、働く目的など、人生の意味や目的について自分自身で思索し、自己の位置を見つける過程が大切となります。

巣立ち期を迎えた家族を支援する

巣立ち期の若者を支援する際、具体的な行動から共感的な態度まで、何ができるでしょうか?以下にいくつかを紹介します。

傾聴
まず、話をしっかり傾聴することが重要です。新たな経験を探求していく巣立ち期の若者は、自分自身を理解していく必要があります。自身の心に確信が持てず、漠然とした不安や問題に直面する場合も多いでしょう。

だからこそ関わる側として穏やかに聴き、理解し、承認しながら、自己の気づきを待つことが重要です。

エンパワーメントと自己肯定感の育成
若者が自分自身の力を信じ、問題を解決する力を持つと感じることができるよう、不安を受け入れ、時には励まし、信頼と能力を引き出すサポートを行います。

適切な距離感
若者たちは自己分化の過程にあり、親や支援者から自立していきます。彼らが自ら考え、自己決定できるスペースを確保することが重要となります。

もし家庭内が不安定な状況にあると、自立が困難になることもあるため、必要に応じて家族の支援を行い、適切な距離感を保つ助けになるよう支援します。

情報提供
彼らが自立した生活を送るために必要な情報、例えば金融知識や家計管理のアドバイス、キャリアガイダンスを提供します。就労が難しい場合などは、地域の相談窓口へつなげるなどの支援も重要です。

これらの支援は、若者たちが自立した大人としての生活の初めの一歩を踏み出すためのものです。私たち支援者ができることは、彼らの力を信じ、その旅路を温かく見守り、必要な手助けをすること。それが最も大切な役割だと言えるでしょう。

さいごに

これまでのお話を通じて、「巣立ち期」の意味とそれがもたらす課題、そして支援者としての役割について、少しでもご理解いただけたでしょうか?

これらの理解は、若者たちが自立の旅路を進む際の、暖かい理解と援助のための大切な手引きとなります。

それぞれの家族は、自分たちだけの道を探求し、独自の課題に直面します。しっかりと理論を把握しながらも、それぞれの家族の個性を大切にし、その成長を寄り添って支えていきましょう。

新たな支援者として、これらの情報があなたの道しるべとなり、全ての家族が自分たちの可能性を最大限に追求できるよう助けになれば幸いです。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

次回
「家族ライフサイクル理論:カップル形成期」
お楽しみに!

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執筆:田中道徳(岡山家庭医療センター)
編集:宮本侑達(ひまわりクリニック)


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