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ハリスホークは飼いやすい?

鷹=孤高の動物、飼育が難しいという先入観とは反対に、人によく慣れて賢いと評判のハリスホークですが、本当に飼いやすいのでしょうか?
「ハリスホーク 凶暴」「ハリスホーク うるさい」等の検索ワードも見られるこの頃、実際に飼育している私が実情をお話しします。
(3分程度で読めます)


実は…自動車が買えるくらい餌代がかかります

ハリスホークは1日1羽程度の冷凍うずらなどを食べます。
冷凍うずらの値段は、2020年4月の時点で200円程度ですが、
いろいろな要因から、価格は上昇を続ける一方です。

ハリスホークの寿命はとても長く、飼育下で37歳まで生きた個体もいます。
20年以上生きる個体も珍しくありません。
生涯にかかる餌代を見積もると、
200円×365日×20年=146万円です!

餌はお金を払えば手に入れることができますが、
金銭の他にも捻出しなければならないものがあります。

実は…しつけられません

トイレのしつけができないのはもちろん、「やってはいけないこと」を教えることもできません。エサ欲しさから大声で叫びつづけるようになってしまうと、ノイローゼものです。
かといって体罰を与えれば、人間を攻撃するようになります。
メスのハリスホークの体重は1キロを超えることもあり、鋭い爪のついた足で握られると、大人でも引きはがすのに苦労します。

飼い主が適切な取り扱いをすることで回避できる問題もありますが、できないものもあります。
ヒナの時に人間が餌を与え、すりこみがなされてしまった個体の問題行動はやっかいです。
なぜなら、すりこみのやり直しや消去はできないからです。
猛禽先進国のアメリカのあるブリーダーは、ハリスホークはふ化後15週間まで親鳥に育てさせ、兄弟といっしょに過ごさせることを推奨しています。


実は…かなり時間を割くようになります

ふ化後15週間まで親鳥に育てられたハリスホークを入手しても、本能である「狩り」の衝動を発散させてやらないと叫ぶことがあります。
家畜化されていない猛禽の発達スケジュールを人間の都合のよいように変えることはできないのです。
鷹狩りのための調教は夏の終わり頃〜秋にはじめ、数週間から数ヶ月を要します。
その間、最低でも毎日1時間程度は必要です。
調教過程が済んだら、冬の狩猟期間中にできるだけ早く、たくさん狩りを経験させます。
都市部に住んでいる、または定時に出社しなければならない人は時間を捻出できるかどうか、検討してみてください。

ハリスホークの価格が日本の数分の一であるイギリスでは、飼いきれなくなった個体が保護センターに持ち込まれています。猛禽優先のライフスタイルを整えてから、飼育をはじめるのがベストです。

結論


ハリスホークは「買いやすい」猛禽ではありますが、万人にとって「飼いやすい」ペットとは言えないでしょう。ここまで読んでくださった賢明な方は、即売会でハリスホークの雛を衝動買いすることはされないと思います。数十年を共にするパートナーを迎えるのですから、ぜひ事前調査に時間を使ってください。

飼育をすすめないことばかり書きましたが、ハリスホークの都合を第一に考え、彼らのニーズを満たせる人が飼えば素晴らしい経験が得られます。拙著では入手〜飼育〜調教〜鷹狩りの方法をすべて解説しました。以下のURLをクリックすると、見本が読めます。

『ハヤブサ・ハリスホークを楽しむ本 ~飼育・調教・鷹狩り』
https://moukinbon.booth.pm/items/1934844

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それでも飼いたい方へ

ノスリのなかま(ハリスホーク、レッドテールホーク、フェルギナスホークなど)を人間に刷り込むことは、イギリスでは推奨されていないということを知っておいてください。人間に慣れやすい種類の猛禽を刷り込む(ヒナの時から人間が餌を与えて育てる)と、場合によっては安全ではないからです。アメリカのあるブリーダーは、この危険性にいち早く気づき、ハリスホークのインプリント個体の販売を1985年にやめています。親鳥に育てられたハリスホークしか販売しないブリーダーが日本でも増えています。

兄弟といっしょに育てられたハリスホークでも、ヒナの時に人間が餌を与えていたなら、人間に刷り込まれています。デュアルプリント、ダブルプリント、ソーシャルインプリント、クリシェレアード、ハンドレアードと呼ばれている個体は人間に刷り込まれてしまっています。親鳥が育てた、つまり人間に刷り込まれていない個体をお探しの方は、「ペアレントレアード」で検索してください。アメリカでは、インプリントの猛禽(人間に刷り込まれた個体)を初心者が扱うことは禁じられています。ペアレントレアードという名目で販売されていても、注意が必要な場合もあります。詳しくは以下リンク先の記事の最後の段落を読んでください。
関連記事 ベタなれハリスホークの真相
https://note.com/falconer/n/n83a8b3c3e7fb

また、親鳥に育てられたハリスホークであっても、繁殖期に攻撃性をあらわすメスがまれにいるそうです。生後2、3年目の春に最初の発情を迎えた途端、おとなしかった個体が豹変するケースもあるそうです。

インプリントのハリスを飼われている・検討されている方へ

飼い主をつがい相手に認定したインプリント個体は、他の人間(すなわちライバル)や犬を追い払おうとして攻撃することがあります。こうした個体は、飼い主にはよく慣れており、おとなしいように見えますが、一度でも人間を攻撃したことのある個体はフライトさせてはいけません。(参考:2012年にイギリスの公園で起きた事故)繁殖させるなどもってのほかです。ハリスホークでない種類でも、攻撃対象が飼い主であったとしても、危険な兆候が見られているならフリーにしてはいけません。元の飼い主が手放した猛禽を譲り受ける場合は、アグレッション(不適切な攻撃性)や過去の事故歴がないことを確認されるとよいと思います。

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