見出し画像

子供の運動不足が招く「2つ」のリスク

二極化する子供たち

今、子供の体力や運動習慣は二極化しています。

1週間の総運動量が「420分」を超える子供、

つまり「1日60分は運動をする」子供は30年前に比べ増えているが、

その反面で「運動時間が0分」と答えた生徒も50%近くいます。(2013年文科省調査 小学5年生対象)

運動習慣のある子とそうでない子の差がますます広がってきています。


これらの背景には、

・遊び場が少なくなってきている

・塾などの習い事の増加

・スマホやパソコンなどインターネットの普及

が考えられ、最近ではコロナウイルス感染拡大の影響もあり、

これからはさらに運動する機会が減る可能性があります。

そもそもどうして運動した方が良いの?

運動の話になると、

「うちの子はスポーツ選手になるわけではないので」

「運動部ではなく、文化部に入りたいと言っているので」

という声を親御さんからたくさんいただきます。


これらの意見に対して、専門家としての結論としては

①日常生活に支障がでないための予防

②発育発達への影響

の2つに運動は大きく関わるため、

運動はすべての子供に必要と言えます。

この2つはスポーツ選手になるならないの前に、

「人として」重要な問題になります。

①日常生活に支障がでないための予防

まず①の説明ですが、

「筋肉や関節の衰えにより、日常生活の自立が低下すること」

を「ロコモティブシンドローム(通称ロコモ)」と呼びます 。

ロコモの例としては、

・手すりをつかわないと階段登れない

・なにもないところでバランスを崩す

といったように、以前は「高齢者」に見られる症状でした。


しかし最近では「子供達にもロコモのリスクがある」と言われ、

実際に、

・何もないところで転ぶ

・転んでも手がつけずに顔から落ちる

・深くしゃがめない

・腕がまっすぐ上がらない

といった症例がたくさん挙がってきています。


スポーツをしない子供でも、

何もないところで転んで怪我をしてしまったら、

当然日常生活に支障がでます。

最低限の体力、筋力、柔軟性は子供も大人も必要になります。

②発育発達への影響

次に、発育発達への影響ですが、

幼児期に獲得すべき動作をうまく獲得できないと、

・落ち着きがない
・姿勢よく座れない
・寝つきが悪い
・覇気がない

など発育にも影響してきます。

例えば「姿勢が悪い」というのは見た目だけの問題ではありません。

姿勢が悪いと肋骨の動きを制限するため呼吸が浅くなり、

「イライラ」「不安」「集中力低下」

を招きます。

この状態で授業を受けていたらどうなるか?

当然授業の内容は頭に入らず、

イライラして座ることすら嫌になるかもしれません。

運動不足が招く姿勢の問題が、

「学力」「集中力」にも影響すると言えます。


姿勢を正すには子供自身が

「頭の位置がどこにあると楽なのか?」

「足裏のどこに体重を乗せるべきか?」

を「運動体験」から自然と身につける必要があります。

これらを経験していなければ、

親御さんや先生達が無理矢理姿勢を正しても、

また数分すれば元通りになるのがオチです。

運動体験はこういったところにも影響するのです。

ではどんな運動をさせたら良いのか?

まず大前提として、

子供たちが「自発的に」遊びや運動をするのが理想です。

自発的に行うことで吸収率が圧倒的に違います。

また、自発的に行うからこそ「楽しい」という感情が生まれます。

つまり、周りにいる大人は「教える」というよりは、

「環境づくりをする」役割に徹するべきです。

「基礎的運動スキルを身につける」

それらを大前提として、

まずは「基礎的運動スキル」を身につける必要があります。


基礎的運動スキルとは、

①走る②跳ぶ③つかむ(組む)④投げる⑤蹴る⑥捕る⑦打つ

といったスキルです。

(この7つに「まわる」「ひねる」「バランス」を含める専門家もいます)


まず、運動スキルにはこれらの「基礎的運動スキル」の他に、

「スポーツの専門スキル」があります。

アスリートが繰り出す高度な技は「スポーツの専門スキル」です。


大事なことは

「【スポーツの専門スキル】は【基礎的運動スキル】の上に成り立つ」

ということです。


つまり先ほど挙げた「7つ」のスキルがまず大前提としてできないことには、

高度なスポーツの専門スキルを行うことは難しく、

専門スキルだけを求めると身体に無理をかけ、怪我につながるリスクもあります。


だからこそ子供の時はまずは「基礎的運動スキル」を身につけることを最優先します。

そしてこれらの基礎的運動スキルは、遊びの中に自然と含まれていることがほとんどです。

例えば、

①走る=「鬼ごっこ」「かけっこ」

②跳ぶ=「縄跳び」「ケンケンパ」

③つかむ(組む)=「うんてい」「木登り」「鉄棒」

など、遊びの中で自然と身につくことが非常に多いです。


しかし、遊びの中から自然と身につけていた「基礎的運動スキル」も、

今は遊びの場が激減したこともあり、意識的にこのようなスキルを身に付けられる環境を整えなければなりません。

ここは周りの指導者や親御さんが意識できるかどうかだと思ってます。

ちなみにこの「基礎的運動スキル」は1~5才の間に身につきやすいと言われれので、

5才までに多種多様な遊びを経験させることが理想と言えます。

「スポーツは一つにしぼらない」

また、スポーツも一つにしぼらず、多種多様なスポーツを経験させ、

あらゆる動作を身体に覚えさせることが理想です。


欧米では季節ごとにスポーツを変えさせ、

一つのスポーツに専念させるのは中学生くらいから、

というところも多いです。

近年ではNBA(バスケ)とNFL(アメフト)の両方からプロの誘いがあった選手もいました、

日本でいうとプロ野球とプロサッカーの両方から誘われるようなものです。

このような選手は、日本からは生まれるのでしょうか?


日本は幼少期から一つのスポーツにしぼらせ、

それが怪我の多さや技術の頭打ちにつながることも非常に多いです。


しかし近年では、

「八村塁選手(バスケ)」

バスケは中学からで、それまでは陸上と野球

「渋野日向子選手(ゴルフ)」

中学まではゴルフとソフトボール

「高木美帆選手(スピードスケート)」

中学まではスケート、サッカー、ヒップホップダンス

など、日本のトップアスリートも様々なスポーツに触れていた選手は増えています。

「怪我予防」「正しい体の使い方」「技術の習得レベルの早さ」

などを考えると、多種多様なスポーツに触れるメリットはたくさんあります。


一つのスポーツにしぼり、勝ち負けにこだわりすぎているのが日本のジュニアスポーツの現状だと思います。

個人的な意見としては、少なくても中学入学前までは、

勝ち負けにこだわらず多種多様なスポーツを楽しんでほしいと思ってます。

まとめ

・運動はスポーツ選手だけのものではない

・運動習慣の有無が①発育発達②日常生活に影響する

・幼少期は基礎的運動スキルを身につける

・基礎的運動スキルは「遊び」の中から身に付けたい

・スポーツも多種多様なものに触れる

・ジュニアの時から勝ち負けにこだわらない



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?