シングルタスクで没頭する
トレーナーとして活動していると、
「運動したくても時間がない」
という声をたくさんいただきます。
そんな方達のために時間がない人でもできる、
「ながら運動」
が推奨されたり、デスクのいすをバランスボールに変えて、
「仕事中も、効率的に体を鍛える」
ということを取れ入れる企業もありました。
結論から言うと、僕自身は「ながら運動」は以前から反対派です、
ながら運動は「運動した気分」にはなっても、効果を望めるとは思えません。
運動する時は運動のみに集中した方が圧倒的に効果的です、わずか5分でも良いので。
そして運動だけでなく、物事に取り組むときは目の前のことだけに集中する「シングルタスク」の方が効果を発揮します。
あれもこれも同時に複数のことを行う「マルチタスク」は、シングルタスクより効果が劣るだけでなく、全くの逆効果である、と言えます。
「仕事が忙しい=生産性が高い、ではない」
noteに投稿する記事を書きながら、仕事のLINEやメールにもすぐさま返信して、新規事業のミーティングにも参加する。
食事をしながら最新の情報をネットでチェックして、電話にも対応する。
以上のように同時に複数のことを行うような
「忙しい人、時間を無駄にしない人」が
「仕事ができる人、効率の良い人」
というイメージが、以前はありました。
けれども、僕自身あれもこれもとやることが膨れ上がると、
非常に生産性が落ちました。
生産性が落ちただけでなく、
「今日1日、何をしていたんだろう」
と思い出すことさえできないこともしばしばありました。
そして、心身ともに倦怠感と疲労感だけが残りました。
私のトレーニングジムにご来店されるお客様には多忙な経営者の方も多いですが、
トレーニング中に電話やメールに対応する方はおらず、
トレーニングだけに集中している方がほとんどです。
けれどもそういう人ほど、仕事で成果を上げていたりプライベートも充実しています。
以上の経験から、
「あれもこれもやるより、目の前のことに集中した方がいいんじゃないか?」
と少しずつ感じるようになりました。
「人間の脳は一度に一つのことしかできない」
著書「SINGLE TASK 一点集中術」によると、
「人間の脳は一度に複数のこと(=マルチタスク)は処理できない」
「マルチタスクをしているのではなく、タスクの切り替え(タスク・スイッチング)をしているだけだ」
と述べています。
このタスク・スイッチングが非常に問題で、
例えば、
依頼されていた記事を書き始め、ようやく集中できたころに電話が鳴る。
→電話に対応した後、記事作成に戻っても集中できない。
→集中できないから、スマホのアプリや動画で息抜きをする。
→気がついたら、1時間経過していた。
そんな経験をされた方も多いのではないでしょうか。
タスク・スイッチングを頻繁に行うことで、
・脳のエネルギーをその度に消費する
・改めて集中するのに「約15分」はかかるため、頻繁にタスクを切り替える人は集中して物事に取り組むことは不可能
というデメリットがあります。
「フロー体験が成果を上げ、心も満たす」
作業に完全に集中することを「没頭する」と表現しますが、
没頭すると、人間は「フロー」の状態に入ると言われています。
「フロー状態に入ることで、通常よりずっと高い能力を発揮する」
と、心理学者のミハイ・チクセントミハイは述べています。
アスリートがフロー体験に入った経験談はよく耳にしますし、
子供がお絵かきに夢中になってお母さんの呼びかけに反応しない、のも一種のフロー体験です。
そして目の前のことに没頭しフローの状態に入ると、私達の脳は、
・幸福感
・安心感
・充実感
・達成感
を感じるようにできているそうです。
フローの状態とは反対に、落ち着きがなく、せわしなく、気まぐれでむらがある状態を「モンキーマインド」と呼ぶそうです。
モンキーマインドになると、私達の脳は、
・ストレス
・プレッシャー
・不安
・倦怠感
・自己不信
を感じてしまいます。
僕自身あれもこれもやっていても成果が出ず、ただただ疲労感を感じていた時は、まさにこの「モンキーマインド」だったと、今になって実感しています。
以上の話をまとめると、
「フロー状態になれば、通常以上の能力を発揮し、充実感や達成感を味わうこともできる。」
「フロー状態に入れるように目の前のことに没頭しよう!」
となりますが、頭ではわかっていてもフロー状態に入ることは非常に難しいです。
「無意識にモンキーマインドになってしまう」
フロー状態に入ることが非常に難しいのは、私たちの生活は「気をそらす」ものだらけだからです。
スマホ一台あれば気になるサイトにすぐにアクセスでき、暇つぶしのアプリも山ほどあります。
集中したと思えば、電話やLINEの通知で集中を削がれる。
テレビをつければ、芸能ニュースから通販番組。
外に出れば、膨大な広告看板。
こんな状態で集中できる人はいません。
スティーブジョブズに代表されるように、海外の経営者の中では「マインドフルネス」「禅」に魅了される人が非常に多いですが、
「内省=自分自身を見つめる」
「今ここ、に意識を向ける」
ことが成果をもたらすことを理解しているのかもしれません。
ヨガが人気なのも、こういった側面があるからだと思います。
そして「集中できる環境づくり」を意識的にしないと、フロー体験に入ることは不可能だとも言えます。
「フロー体験に入るために」
僕自身が考えるフロー体験に入る順序として、
①タスクの数をまずは減らす
②タスクに優先順位をつける
③優先度の高いものから、一つずつ取り組む
以上の流れを踏むことで、僕自身没頭する時間が非常に増えました。
①の「タスクを減らす」ですが、そもそもやるべきタスク(=TO DO リスト)が多すぎる人はたくさんいます。
以前の記事「最近の変化」でも紹介しましたが、エッセンシャル思考でいうと
「絶対にイエスと言えるもの。それ以外はNOだ」
「90点以上でやりたいこと」
といったことが「本当にやるべきこと」で、それ以外は
「そもそも無駄なこと」
「自分がやらなくていいこと」
「今やらなくていいこと」
だと言えます。
だからこそまずは膨大にふくれあがった「TO DO リスト」を減らす、もしくはTO DO リスト自体を消去してもそんなに問題はないと思います。
本当にやるべきことは2つか3つほどです。
次に、②の「タスクに優先順位をつける」です。
【もし今日が人生最後の日だとしたら、今やろうとしていることは本当に自分のやりたいことだろうか?】-スティーブジョブズ
【「ただの行動」と「活動」を混合してはならない】-ベンジャミン・フランクリン
優先度の高いものから取り組んでいきましょう。
最後に③です。
僕は時間で区切るようにしてます、時間がたてば作業が途中でも切り替えます。
例えば朝、職場につくと、
①読書(60分)
②記事や動画のコンテンツづくり(60分)
③トレーニング(30分)
といった感じで、すべて時間で区切ります。
そして、その作業以外のことは一切やらないことにしています。
・気が散らないように「スマホは通知オフ」「机にモノはおかない」「パソコンの画面も作業しているものだけ」
・AirPodsプロのノイズキャンセル機能で騒音消す
・ふとやるべきこと思い出しても、すぐにやらずに付箋にメモ書きしておいて、あとから見返す
など、自分なりですが工夫してます。
そんな感じで「環境づくり」をしても、最初のうちはわずか15分で集中することが難しいような状態でした。
それほど自分の意識が注意散漫になっていた生活だったと、改めて自覚しました。
けれども日々シングルタスクを習慣にすることで、
フロー体験に入ることができるようになってきます。
「まとめ」
これはあくまで僕個人の考えですが、ご自分で起業したりお店を経営している方はこれに近い体験をしているんじゃないかと思います。
いつ仕事のチャンスがくるかわからないので、すぐに対応できるようにしておかなければならないし、資金繰りが苦しくなると神経も張り詰めて落ち着きもなくなります。
やりたい仕事だけでは成り立たない時もありますし、開業当初はやることも多く目が回るような日々です。
だからこそ
「何を一番大切にするか?」「最重要事項は何か?」
を決めておかないと、
仕事もプライベートの境目もなく、24時間365日仕事もモードになり、
結果的にマルチタスクになり、忙しいけど成果が出ない、というサイクルに入ってしまいます。
なにをしないのかを決めるのは、なにをするのかを決めるのと同じくらい大事だ。──スティーブ・ジョブズ
何を優先的にするかさえ明確になれば、あとはシングルタスクで一つずつ取り組めば、自ずと成果は出てくると思ってます。
プロサッカー選手のリオネル・メッシ選手は一試合での平均走行距離が8kmだそうです。
一般的なサッカー選手は少なくても10kmは走るので、いかに走行距離が少ないかわかります。
試合中もよく歩いています。
けれども誰よりもゴールを決める。
ここぞという大事な時にそなえて、それ以外はあえてやっていないんじゃないかと想像してしまいます。
労を惜しまず誰よりも走行距離が多い選手が賞賛されがちですが、
サッカーは点を取りあうスポーツなので、
「何を優先するか?」
が明確である選手が強い、と言えます。
仕事も生活も同じで、「何を優先するか」さえ明確にして、あとはやること減らして、仕事も生活もシンプルにしていきたいですね。
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