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故郷を2つ失った気持ち

2011年3月11日
ボクは故郷を失った。
さほど好きでもなかった、あの故郷を。
10代の潜水生活を過ごした、あの街を。
大嫌いだった人々が過ごした、あの故郷を。


そして、少子化の影響だろうか、

自分の母校である大学が一つの学部をなくした。

そこはボクの所属していた学部であった。

いい大学ではないし、有名な大学ではなかったが

自分の思い出がたくさん詰まっていた学部は

母校にはもうない。

ここには20代前半、そして人生のピーク

はじめて生きている心地がした、あの時間がたっぷり詰まっていた。

キャンパスにはいつも風が吹いていた。

土曜日、まばらな人影をただぼーっと眺めていた。

そして、足早に教室に向かった、あの日々がたくさん詰まっていた。

大学関係者の人に聞いてほしい。
学部をなくすことは、故郷を失うことなんだ。
卒業生にとってはとても悲しい。
頼むから、これ以上ボクの故郷を奪わないでくれ。

頼みます……。

福島県のどこかに住んでいます。 震災後、幾多の出会いと別れを繰り返しながら何とか生きています。最近、震災直後のことを文字として残しておこうと考えました。あのとき決して報道されることのなかった真実の出来事を。 愛読書《about a boy》