見出し画像

ウェル・ビーイング~幸福度を高めるポイント~

健康経営に関するお役立ち情報をお届けする「健康経営のすすめ」は、健康経営支援ツール"FairWork survey"をご提供する株式会社フェアワークが運営しています。(弊社HPはこちら

今回は幸福学についてお伝えいたします。
幸福学と聞くとスピリチュアルな話を想像されるかもしれませんが、幸福学は経済学者・心理学者・科学者が研究を重ねているれっきとした学問領域です。特に近年では経営学と結びつきが注目されるようになり、健康経営の文脈でも語られる場面が増えています。
今回は健康経営とは切り離して、幸福とはどういう状態かについてお伝えします。幸福学についての研究は多々ありますが、このコラムでは1950年代から幸福について探求してきたアメリカの調査会社ギャラップ社の研究についてお伝えいたします。

幸福とは

幸福という言葉の英訳として”Happiness”という言葉を思い浮かべる方も多いと思いますが、幸福学や健康経営の領域では”Well-Being”(ウェル・ビーイング)という言葉が”幸福・福祉・健康”や”満足な状態”をを示すために使用されます。私たちがこのWell-Beingな状態を実感するためには以下のような5つの要素満されている必要があります。

①仕事において幸福であること
(仕事に情熱を持って取り組んでいる状態です。ここでいう仕事とは生計を立てる仕事だけでなく、子育てや勉強など1日の大半を費やしている活動のことを指しています。)

②人間関係において幸福であること
(強い信頼と愛情で繋がっている人間関係を築いていること)

③経済的に幸福であること
(大金持ちの状態ではなく、生活していくために十分なお金が手元にあり、将来に向けた資産を管理運用できていること)

④身体的に幸福であること
(健康状態が良好で日々の生活必要な活力が十分にあること)

⑤地域社会での幸福を感じていること
(住んでいる地域に根をおろして、つながっている感覚があること)

これらは1つの要素だけが満たされていても幸福とは言えず、5つの要素それぞれが満遍なく満たされていることで、日々の生活が充実した幸福な状態となります。

短期的な幸福と長期的な幸福

幸福には上記の5つのの要素があり、それぞれを改善することで幸福な状態に近づくことができます。そのために、例えば定期的に運動をしたり、家族と過ごす時間を増やしたり、お金の無駄遣いをなくしたりすることが必要になります。しかし、時に私たちはこれらの行動をないがしろにしてしまうことがあります。それは私たちが長期的な幸せよりも短期的な幸せを優先してしまう性質をもっているからです。

ここで、古代ギリシャ・ローマの時代から提唱される幸せの分類についてお話します。幸福には2つの種類があるとされており、それぞれ、

・ヘドニズム(快楽主義)
⇒刹那的な快楽や喜びの繰り返しを幸せと感じる価値観(短期的な幸福)

・ユーダイモニズム(幸福主義)
⇒人生全般にわたっての幸せを追求すべきという考え(長期的な幸福)

例えばおいしいものを食べた際には幸福感をかんじますが食事後しばらくするとその幸福感は薄れていってしまいます。一方で仕事が順調に進み家族や自身も健康で健やかに過ごすことができていれば「良い人生を歩んでいるな」と幸福感を感じます。前者が短期的な幸福感で後者が長期的な幸福感です。

「短期的な幸せと長期的幸せのどちらが良いですか?」と聞かれると、人生全般にわたって長く幸せである方が良いと考える方が多いと思います。しかし、その場その時を生き抜くという生物学的な要因もあり、人間は長期的な欲求よりも短期的な欲求を優先してしまいます。例えばラーメン屋さんで注文する際に将来の健康リスクが高まると知っていても短期的な食欲に負けて大盛をオーダーしたり、定期的な運動をすれば健康になれると知っていてもついサボってしまったりすることはないでしょうか。特に現代社会はこの短期的欲求を満たすものにあふれているため長期的な判断を下すことが難しくなっています。そこで目先の欲求にとらわれずに幸福に繋がる行動をとるポイントを幸福学の要素ごとにお伝えします。

①仕事の幸福度が必要な理由

ギャラップ社の創設者ジョージギャラップが1958年に実施した調査により仕事の幸福度が寿命に影響するということが分かりました。95歳以上のアメリカ人を対象にインタビューしたところ、95歳以上まで長生きしている人はなんと平均80歳まで働いていたのです。当時の平均リタイア年齢が65歳だったことを踏まえると、長生きしている人は非常に長い期間働いていたといえます。また、そのうち93%が仕事に「非常に満足」しており、86%が仕事が「非常に楽しかった」とアンケートに回答しています。このことから楽しみながら満足して働くことが寿命に影響しているということが分かりました。

別の研究によれば、仕事に熱意を持っている人はそうでない人に比べ次のような兆候があることが分かっています。
・仕事の時間に幸福だと感じる度合いが大幅に高い
・仕事に関する興味関心の度合いが大幅に高い
・仕事へのストレスレベルが大幅に低い
・うつ病のリスクが熱意のない人の2倍低い
・仕事に対する熱量が高まると血中コレステロールと血清脂質レベルが下がる

また、自分の強みを活かして仕事をしている人は、弱みに意識を向けて働いている人よりも仕事に熱意を向けて楽しんでいる割合は6倍、人生を心から楽しんでいる割合は3倍というデータもあります。心身の不調を防ぐためにも、自分の仕事の熱意や幸福度を下げる要因が何かを把握し改善を心がけることが必要です。


②人間関係の幸福度が必要な理由

ハーバード大学による研究で幸福は人から人へと伝染することが明らかになっています。
例えば、日々接している家族や友人が幸せを感じていると、周りの人も幸せを感じる可能性が15%高まることが分かっています。また、幸福感は直接の知り合いではない人にも伝播します。例えば、Aさんの友達のBさんが幸せを感じているとします。あなた自身はBさんを直接知らなくともBさんの幸せがAさんに伝播し、その影響を受けてあなたの幸福度が約10%高まります。ハーバード大学の研究によると人の幸福は自分から数えて3人目まで伝播するようです。具体的には「あなたの友達の友達、そのまた友達の幸福度が高いと、あなたの幸福度は6%向上する可能性がある」とされています。

6%の幸福度はイメージしずらいですが、同じハーバード大学の研究で年収が1万ドル増えても幸福度は2%しか増えないというデータがあります。1ドルを100円と考えると年収が100万円上がって2%の幸福度の上昇となります。このデータを知っていると収入を増やすよりも家族や友人との関係を強める方が幸福度を高めるために必要だと感じるのではないでしょうか。

また、毎日6時間以上人と関わる時間を持っていると幸福度が上がりストレスや不安が小さくなります。また、仕事の場においても良好な人間関係は良い効果をもたらします。マサチューセッツ工科大学の研究で職場の誰かと会話を交わすなどほんの少しの人間関係が強まる行動をとると生産性が大きく向上することが分かっています。

③経済的な幸福度が必要な理由

②で収入よりも人間関係が大切だと述べましたが、経済的な要因が幸福に繋がらないわけではありません。ギャラップ社か132ヵ国で調査を実施したところ、各国1人あたりのGDPと幸福度には明らかに密接な相関関係があることが分かっています。裕福な国ほど幸福度が高くなっています。これは「飢えがないこと」「医療福祉の充実」「住居」「安全性」など基本的な生活にお金が必須だからです。ただし一定以上の生活水準を超えると単純な収入の増加による幸福度の上昇は減少していきます。

また、お金の使い方として自分ではなく相手のためにお金を使うと幸福度が高いことが分かっています。ハーバード大学の研究で、1万円をわたして自分のために買い物をした時と誰かのために買い物をしたときでは、誰かへのプレゼントにお金を使った方が幸福度が高くなるということが明らかになっています。

安定した生活基盤があり将来的にも心配がないように資産の運用管理ができている状態を得ることが幸福感を得るために必要であるとともに、自分でなく人のためにお金を使うことが幸福度を高めるポイントです。

④身体的な幸福度が必要な理由

週に2日以上運動している人は運動していない人に比べて圧倒的にストレスが少なく幸福度が高いという研究があります。また、20分間の軽い運動であったとしても運動後2時間後から12時間後にいたるまで、いつもよりはるかによい気分で過ごせることが分かっています。
また、睡眠も身体的な幸福度にとって非常に重要です。例えば疲労回復の薬を飲むよりも1晩7-8時間の睡眠をとる方が効果が高いことが分かっています。更に7時間未満の状態が続くと免疫系に大きな負担がかかり、8時間以上の睡眠と比較して約3倍風邪をひく可能性が高くなってしまいます。


⑤地域社会の幸福度を高める理由

自分が住む地域をよりよくする活動に参加することで幸福度が上昇することが分かっています。これは③の経済的な幸福度でお伝えしたことと同様で、人のための行動の方が自分のための行動よりも幸福度が高くなるからです。誰かのために役立つ行動をして地域社会とつながりができると、人のためという幸福感が生まれるとともに地域のコミュニティに属しているという感覚が生まれます。

まとめ

幸福とは何かということを5つの要因に分けて説明しした。幸福学については抽象的な内容も多いため、このような概念を伝えられても何をすればよいか分からないという方もいると思います。まずは自身が幸福感を感じているか、感じていない場合はどうして感じることができていないかを振り帰ってみてはいかがでしょうか。この振り返りを実施する際に5つの要因という視点に立つと気づきが得やすいのではないかと思います。次回は日本での研究を中心に健康経営という観点から幸福学についてお伝えをさせていただきます。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?