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紅葉狩り

夜ご飯を食べているときに、あなたが言った。

「近くのお寺、紅葉が綺麗らしいから週末に行こうか?」

週末の天気予報は晴れで、気温もそんなに低くなさそうだとニュースで気象予報士が言っていたことを思い出して、「うん、行こう。晴れるみたいだし」と答えた。

紅葉かぁ。ちょうどいい感じに色づいてるんだろうなぁ。

「ねぇ、去年二人で行ったときは途中から雨が降り出したの覚えてる?」

「覚えてるよ。まさか降るなんて思ってなくて傘持ってなかったんだよね」

「え、違うよ。雨降るらしいから折りたたみを持ってって言ってたのに、あなたが忘れたんじゃない」

「いやいや、違う違う。あの日は君が天気予報を確かめて雨は降らないって言ってたから傘を持たなかったんだよ」

「うそ、そんなことないよ」

「君の思い違いだよ」

「えー、違うよ」

ちょっと言い合いになって、テンションが下がる。

「週末、ほんとに大丈夫? 晴れるって君は言うけど、僕も確かめとくよ」

なんか嫌だな。そんなの黙って確かめたらいいじゃない。チクッと嫌みだなぁ。

何も答えない私の態度を見て、私がちょっと不機嫌になったと気づいたあなたはそれっきり黙った。

しばらくして、あなたが「コンビニ行ってくる」って出て行った。こんな夜なのに。

なんとなくスッキリしない気持ちのまま、食器を片付けて、お風呂の準備をした。

コンビニで何をしてるのか、なかなか帰ってこないなと思っていたら、玄関のドアが開く音がした。

「ただいま」

「あ、うん、おかえり」

「お風呂、一緒に入ろっか?」

なんかあなたがニコニコしてる。なんだろ、喧嘩してたんじゃなかったっけ。

「まぁ、いいけど」

あんまり気が進まないけど、断るのもなんかあれだし、一応肯いた。

「じゃあ、行こう」

二人で洗面所に入ったら、あなたがそっと、あるものを私の手に乗せた。

あ、赤い葉っぱ。

「何これ? どうしたの?」

「コンビニから少し先まで行って、拾ってきた。ほら、まだあるよ」

数枚の赤や黄色、オレンジに紅葉した葉っぱたち。

「お風呂に浮かべたら、楽しそうだよね」

あなたはそう言って、もっとニコニコした。

湯船に浮かぶ色とりどりのカエデやモミジを想像したら、私も思わずニッコリしちゃった。暗いところで葉っぱを一人で拾っているあなたのことも想像した。綺麗な形のを選んでくれたんだね。

「楽しそう」

そう答えたら、あなたが私の頭をポンポンしてくれた。

それですっかり機嫌が治った単純な私。

週末の紅葉狩りも楽しみでうれしくなってきた。

あ、その前にお風呂で紅葉狩りだね。



お気持ち嬉しいです。ありがとうございます✨