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小説・フィクション

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小説や詩、フィクションのお話をまとめています。かなり短い作品ばかりですが、一部前編・後編ものや連載しているシリーズも入っています。書き始めたときは誰かに読んでもらうのがあまりにも…
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2020年6月の記事一覧

雨の日には

窓の外の雨をぼんやりと眺める。 降りやまない雨。 エアコンが出す断続的な低い音にまざって…

椿 -TSUBAKI-
4年前
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会いたい

「寂しがりだね」ってあなたが言って抱きしめてくれた。 私はずっと昔から寂しがりなのか、あ…

椿 -TSUBAKI-
4年前
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しあわせな音

鳥の高く澄んだ鳴き声が真っ青な空からおりてきて、子供たちの笑い声の近くに溶け込んだ。 自…

椿 -TSUBAKI-
4年前
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大好きのタイムラグ

「大好き」って送ったら、いつ返事が来るかな。 じーっと待ってみたけど返事が来ないまま、も…

椿 -TSUBAKI-
4年前
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口紅

「ねぇ、君の唇に、口紅をひかせてよ」 洗面所で口紅を塗ろうとしていた私の後ろからあなたの…

椿 -TSUBAKI-
4年前
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さくらんぼ

さくらんぼをたくさん買ってきてお皿に入れて、テーブルに置いた。 通りがかるときにちょこっ…

椿 -TSUBAKI-
4年前
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雨と人生

駅から出て歩きだした瞬間に、雨が降ってきた。 はじめは一瞬だけパラパラと落ちてきて、数秒もしないうちに雨が強まった。回れ右して慌てて駅に戻る。 バシャバシャと激しい音が辺りに響いて、地面に跳ね返った雨が足先にかかった。だからもう少し足を引っ込めた。 駅向かいの家の庭に鮮やかに咲いている紫陽花が目に止まる。紫陽花は突然の雨を喜ぶように揺れていた。紫陽花にとっては恵みの雨だ。 傘を持たない私はしばらく動けない。 揺れる紫陽花と、湿り気を帯びた6月の曇り空を交互に見た。駅

アイスとスプーン

アイスクリームを冷凍庫から出して、スプーンですくう。うーん、アイスが硬いなぁ。 ぐいぐい…

椿 -TSUBAKI-
4年前
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ピアス

ベッドルームに落ちていたピアスを拾った。濃い紫と淡い紫が混じりあった小さな宝石がシャラシ…

椿 -TSUBAKI-
4年前
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待ちぼうけ

声が聞きたくて、待ってたよ。 メッセージに気づいたら電話ちょうだいってラインを送った。 …

椿 -TSUBAKI-
4年前
26

夢のなか

ねぇ、 あれからどうしてる? 私の名前を優しく呼ぶあなたの声が、まだいまも耳に残ってるよ…

椿 -TSUBAKI-
4年前
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紫陽花の向こう側

紫陽花の向こう側にあなたが見えた気がした。 そんなはずないのにね。 このホームであなたと…

椿 -TSUBAKI-
4年前
31

紫陽花

「紫陽花の季節だね」って私が言ったからかな。あなたが仕事帰りに「紫陽花を買って帰る」って…

椿 -TSUBAKI-
4年前
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ピアス(後編)

※ 前編はこちらです。 あなたを待ちながらダイニングテーブルにもたれてうとうと寝てしまった。 「ただいま」という声に起こされて、顔を上げたら、あなたが目の前にいた。 「おかえり」 壁にかかっている時計に目をやるともうすぐ11時になろうとしていた。 「遅かったのね?」 「あー、うん、ごめんね」 「夜は?」 「外で食べてきた」 「そうなの。うん」 ぼんやりした頭で立ち上がってキッチンに向かう。冷蔵庫に夕食をしまわなくちゃ。 「コーヒーでも入れようか?」 「そうだね、