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熱血指導を貫いた先生

今回は小娘が中学1年生の時の担任について綴りたい。担任は女性教師には珍しい、熱血指導で体育会系な教員だった。

その先生は英語の先生だった。
正直な話、当時その先生の授業はあまり好きではなかった。生徒の競争心を掻き立て、自分のペースで授業に取り組むということができなかったからなのである。でも今思えば、あの先生の授業はめちゃくちゃ活気があって、みんな英語に向き合っていたなぁと思うのである。

その先生の授業のルールはこうだ。
①授業態度は発言数で計る
発言数をどのようにカウントするのかと言うと、発言回数に応じてシールがもらえる。例えば、発言した回答が合っていればシール3つ。間違っていた回答だったとしても、シール1つもらうことができる。
②自主学習プリントの提出で計る
発言が苦手な生徒は授業外の自主学習プリントを提出することによって、シールを獲得することができる。1枚提出することでシール5つくらいもらえたような気がする。基本的にどれだけ隙間なく練習したかにより、シールの数は変わるので、自分の頑張り次第で1回のシールの量は上下する。

そのシールは教科書の背表紙に貼り付けて、各学期最後の授業でシールの数を申告する。それが、授業態度として見られて、学期最後の成績として反映される。

そんな先生の熱血ぶりに、生徒である小娘たちも頑張ろうと掻き立てられた。とても良い関係だったと思うのである。

そして思い出深いのが、中学校名物の『合唱コンクール』である。これはクラスの団結力を計る、生徒にとっても教員にとっても、とても重要な行事である。

3年生のギャルな女子の先輩や、チャラい男子の先輩も、この日だけは、普段短いスカートを長くし開いたリボンを閉じて、腰パンを上げて、挑むのである。なぜなら、見た目も審査の対象となり、1人でもクラスにそういう人がいれば、マイナス評価となるからである。

我々も初めての合唱コンを成功させたいという気持ちがあり、選曲にこだわった。その結果、私たちが選択したのが、「かいじゅうのバラード」だった。

ピアノの伴奏レベルがとても高かったのだが、素晴らしいピアニストがクラスにいたため、何のこともなく、練習が始まった。

音楽の授業中にパート練習を行い、ホームルームの時間で合わせたり、先生から入退場の仕方や指揮者が手を挙げたタイミングで、歌う姿勢になるところを全員でピッタリと合わせたりなどした。

そこでの練習中。
小娘のクラスには不真面目な生徒はおらず、みんな前向きに取り組んでいたこともあり、良い雰囲気で和気藹々と練習に励んでいだのだが、熱血先生からまだまだ足りないと喝が入った。

『こんなんで、金賞が取れると思っているのか!?やるなら最後まで一生懸命全力でやれ!!!金賞が取れなかったら、このクラスに帰ってくるんじゃない!!!』

すごい気迫だった。

小娘たちのクラスメートはみんな固まり、どうしよう。と考え始めた。そしてもう一度最初から練習しよう。と呼びかけ、みんなでピリついた雰囲気の中で練習を重ねていった。

合唱コン当日。
私たちは持っているもの全てを出し切った。
たくさん練習した入退場、息を合わせた歌う姿勢への構え、そして歌の入り。一番たくさん練習した歌は、今までよりも綺麗にまとめる事ができた。

自分たちでもなかなか上手くいったと思い、みんなで自分たちの頑張りを讃え合った。

その後2年生の先輩、3年生の先輩の合唱を聴いたのだが、もうその迫力といったら…。比べものにならないぐらい美しい音色で、強弱などもしっかりとついており、素晴らしいものだった。

そして結果発表。
惜しくも小娘のクラスは銀賞に終わった。

金賞が取れなかったら、このクラスに帰ってくるんじゃない!!!と言っていた先生は、笑顔で私たちに声かけをした。

「みんな、よく頑張ったね。」

あんなに熱く喝を入れていた先生が、私たちの頑張りを讃えるかのように、認めてくださったのだ。私たちは、そんな先生の優しさに安堵し、級友たちと良かったと肩を抱き合わせた。

目標としていた金賞には届かなかったが、先生が認めてくださった銀賞は、私たちクラスにとって、漢字の通り『金より良い賞』となった。

その後も、私たちクラスは、『金賞はとれなかったけど、みんなで頑張ったあの空間が良かったよね。』『みんなで全てを出し切った銀賞だから、悔しさももちろんあるけど、それ以上に達成感の方が大きいよね。』と、私たちの結束力はさらに高まり、ネガティヴ要素をポジティヴに考える事ができるような、前向きなクラスとなった。

教員が壁となり、生徒の成長に寄与する。

きっとあの先生のモットーだったんだろう。
小娘も今の教え子にとって、そういう存在であれたら嬉しいな。


写真はミャンマーのバガンを訪れた時の1枚📷

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