Web小説発掘記 その285 【461さんバズり録】〜ダンジョンオタクの俺、淡々と攻略していたら何故か美少女配信者に撮られてバズり散らしていた件〜 作者 三丈 夕六様
本編URL
https://kakuyomu.jp/works/16818093072862688424
前書き
この記事は作品のネタバレを含みますのでご注意。
こちらの記事はあくまでも筆者の個人的意見です。
評価の基準としては200円~700円前後の書籍を購入し、読んだものとして付けさせていただきます。そのため基本的には厳しめとなります。
あらすじ
ん?配信者はちゃんと攻略しないのか?楽しいのに。
栃木から東京に引っ越して来た探索者「461(ヨロイ)さん」。彼は元引きこもりながら12年間の経歴を持つベテランダンジョン探索者。
ウッキウキで東京のダンジョンに挑む461さん。
たまたま居合わせた美少女配信者によってボス戦を配信されてしまった461さん。
有名配信者に意図せず実力差を見せ付けてしまう461さん。
スキルゴリ押しダンジョン配信者が溢れ返った世界では、彼の堅実な攻略スキルは異次元級のチート能力に映り、思わぬ所でバズり散らしてしまうのだった。
その日から、彼の元には次々とダンジョン配信者達が現れて……。
これは堅実ダンジョン攻略をする461さんがバズり散らし、世界中を魅了していく物語である。
ストーリーと見所
その前に以前の記事も↓
こっちも↓
さてこちらの作品なのだが、読むのは三度目となる。
結論からいってしまうと普通に面白い。
ストーリーはわかりやすく方向性も真っ直ぐ、タイトルやあらすじからして物語の終着点が示されているので読者も先に対する期待感を抱きやすい。
展開も無理なく、基本的には主人公の活躍と評価がメインとして書かれているのでそちらに感情移入しながら読めば間違いなく楽しむことができる。
また各キャラクターに関しても、配信という要素を上手く利用して掲示板やそれ以外の場などで様々なキャラ付けがなされている。
何処をとっても文句なしの優良小説といっていいだろう。
また全体的に極めてロジカルに、読者に抱かせたい気持ちを重視して場面やキャラクターが描かれているところも特徴としてあげられる。
読んでいるとその書き方はかなり鮮烈で、嫌な言い方をすれば少しばかりわざとらしさすら感じられる。
とはいえ、様々な読者層がいるWeb小説ではそのぐらいわかりやすい方がむしろ好まれる傾向にある。
そこまでストレートな表現であることが作品としてのデメリットになることは滅多になく、むしろ作品の評価点としてあげる部分といっていいだろう。
まぁ、正直書くことといえばこのぐらいなのだが。
それだけだと物足りないし三回目なので今回読んだ各章についての一言雑感を述べておく。
お台場ダンジョン攻略 編
ヒロインの一人がメインとなる話。
メインになるのが配信者のヒロインということもあってか、インターネット感が一番強い。
作品のコンセプトやここで登場した新キャラも含めて個人的には一番楽しめた。
中野アイテム回収 編
長編への中繋ぎのようなお話。
新キャラの登場やこれまでのキャラクターへの掘り下げがあって賑やか。
ミナセの因縁 編
可もなく不可もなく。
盛り上がるための助走といったところ。
池袋ハンターシティ 編
恐らく今回読んだなかで一番の見所。
前々から存在が匂わされていた新キャラクターはかなり鮮烈な登場をしていて、強さやキャラクター性は存分に伝わってきた。
反面、章全体で見れば場面転換や戦闘など読んでいてダレたというのも正直なところ。
もっとも、それは筆者の読み方が悪いのであって、ここまで作品をしっかり追ってきた読者なら気にならない部分だろう。
ミナセの仕舞 編
一応ここまでで一区切り、といった感じ。
キャラクター達の関係性の深まりや、世界観についても色々と語られて次への期待をしっかりと煽る形となっている。
キャラクター
キャラクターに関しても前回前々回と紹介しているので、ちょっとした雑感を語らせていただく。
個人的に読んでいて上手いなと思った部分が一つあって、それは登場するほぼ全ての(ある程度画面に出続ける)キャラクターに二面性があることだ。
二面性というのは些か適当ではない表現だとは思うが。
わかりやすい例で行くと如何にもな感じで登場したジークリードなどだが、メインキャラクターほぼ全員が読み進めていく間に、最初に抱いた印象とはまた違った面を見せてくれる。
二面性というべきかはちょっとわからないが、どちらかといえば「深く付き合っていくうちに少しずつどういう人物かがわかってきた」に近い感覚なのであって、この辺りが配信をメインとする世界観にも上手く噛み合っている。
そういった部分もあってか、読み進めていくうちにキャラクターの新しい面が発見され、それによってその人物像が強く補強されていく。
そうすることで愛着が湧きやすく、またその意外性が単純に魅力に繋がっているといっていいだろう。
またそういった部分を見せるのに所謂掲示板回などがあったりと、様々な要素がお互いを保管している部分もお見事。
総評
評価点
話が進んでいくうちにキャラクターの新しい魅力の発見や、ストーリーや世界観の奥深さなど様々な魅力が発見される小説。
全体的にかなりロジカルに書かれていることが読み取れ、作者さんの深い考えが随所に見受けられる。
またいい意味で記号化されたキャラクターはとても親しみやすく、どういった人物かを読者に一瞬で想起させることができる魅力を持っている。
問題点
話が盛り上がるにつれて、配信要素の影が薄くなっている感は否めない。
とはいえそれは今回の一連の話だけだろうし、どうとでも調整が効く程度の問題だろう。
もっといえばどうしても話の内容的に少し殺伐としているところに、配信コメントが清涼剤のような役割を果たしているともいえる。
じゃあ問題点じゃないじゃんって?まぁ、それはそう。
良くも悪くも読者に安心感を与える設計となっているのは作品の確かな評価点でもあり、少しだけ読んでいて物足りなさを感じさせる部分でもあるだろう。
とはいえ作品のコンセプトを考えれば、むしろ方向性としてはそっちの方が正しいのは間違いない。
最終評価 65点(Web小説としては文句なしの良作小説)
別に今更語ることでもないとは思うが、文句なしに面白い小説。
なろう系というか、Web系の小説に読むのを悩んだら迷わず手に取って損はない。
全体的に構成が上手く、作品のコンセプトやキャラクターに対して抱かせたい感情が極めて論理的に描かれている。
物語の楽しみ方にはっきりとした導線が敷かれているというのは、それだけでも作品の高い評価に繋がるといっていいだろう。
極めて個人的な感想
全体的にキャラクターを使い捨てない優しさのようなものがあって、その辺りが読んでいて非常に安定感がある。
モモチーと鯱女王が好き。
ウェイウェイ言ってる人達も好き。