Web小説発掘記 その269 【461さんバズり録】〜ダンジョンオタクの俺、淡々と攻略していたら何故か美少女配信者に撮られてバズり散らしていた件〜 作者 三丈 夕六様

本編URL

https://kakuyomu.jp/works/16818093072862688424

前書き

この記事は作品のネタバレを含みますのでご注意。
こちらの記事はあくまでも筆者の個人的意見です。
評価の基準としては200円~700円前後の書籍を購入し、読んだものとして付けさせていただきます。そのため基本的には厳しめとなります。
※こちらは『第24話 ミナセという女。』までを読んでの感想、レビューとなります。

あらすじ

ん?配信者はちゃんと攻略しないのか?楽しいのに。

栃木から東京に引っ越して来た探索者「461(ヨロイ)さん」。彼は元引きこもりながら12年間の経歴を持つベテランダンジョン探索者。

ウッキウキで東京のダンジョンに挑む461さん。

たまたま居合わせた美少女配信者によってボス戦を配信されてしまった461さん。

有名配信者に意図せず実力差を見せ付けてしまう461さん。

スキルゴリ押しダンジョン配信者が溢れ返った世界では、彼の堅実な攻略スキルは異次元級のチート能力に映り、思わぬ所でバズり散らしてしまうのだった。

その日から、彼の元には次々とダンジョン配信者達が現れて……。

これは堅実ダンジョン攻略をする461さんがバズり散らし、世界中を魅了していく物語である。

ストーリーと見所

最近何かと流行りのダンジョン配信もの。
こちらはダンジョン探索に命を燃やす主人公が、周りの人達の影響によってあれやこれやとバズって行く様子を描いたものとなっている。

そこにゲーム世界っぽいテイストや、彼等のやったことに対して掲示板やコメントなどが盛り上がる姿を適宜差し入れることで、読者に対してもとても主役達の活躍や名声が伝わり、とても共感しやすく楽しみやすいような構成。

また舞台は現代ではあるが、ダンジョンが発生した際にあった様々な事情によってダンジョンに潜ったりそれらを配信することに対しての違和感はかなり薄れている。
勿論、ダンジョン配信の世界観はこういう物だ!と話を進めてしまうのも一つの手ではあるが、こういった部分があることで個人的には物語への違和感を消してくれるのはありがたい部分。

ストーリーはとてもわかりやすい。早い話が主人公が活躍して周りがそれに対して好印象を抱くというもの。
そこに装備品による効果の話やモンスターの動きを見切るなど、ゲーム的な要素が入ってくる。

そういうジャンルに詳しい人ならば、より楽しむことができるだろう。

……で、こちらの作品には特筆する部分がもう一つある。
それはなんといっても『薄い』ということだ。
いや、悪い意味じゃなくて。

物語というのは何もなろう系に限った話ではなく、そのジャンルに対して深くなっていくにつれて読者に対して壁を作ってしまう。
SFだろうがファンタジーだろうが、そのジャンルに詳しい人を喜ばせようとしていくと、次第にそういう人にしか理解できない領域に突入していく。

まあこの辺りは詳しく話すと長くなるので割愛する。

で、こちらの物語はその辺りがかなり万人寄りの構成になっている。
これは専門性が失われる反面、割と誰でも……それこそそのジャンルに対して苦手意識を持っている人にでも受け入れやすいという特徴になっている。

そういう意味でとても薄味、胃に優しい。
慣れてない人でもゲーム実況を見るような感覚で物語を楽しむことができる。
それに加えて作者さんのいい意味で癖のない文章もまた、この作品への入り込みやすさを助長しているといっていいだろう。

作者さんの特性と、物語のコンセプトが上手く噛み合った実に優良な小説。

キャラクター

461(ヨロイ)さん

物語の主人公。

ダンジョンに潜り戦うことに喜びを見出す奇人。
多少無自覚系なところはあるが、明らかに無理のある惚けなどはしないのでその辺りも胃に優しい。

キャラクター的に強い主張をするわけではないが、その辺りに関してはよりゲームの主人公っぽさが出ていて作品的にはむしろありだろう。

とはいえちゃんと人間性もあり、普通に話している分には気のいい兄ちゃんといった感じではある。

天王洲アイル

物語のヒロインで美少女配信者。

最初は打算ありきで主人公に近づいたものの、次第に惹かれていくといった感じの王道ヒロイン。

配信を主に担当する彼女もまた、ある意味では主人公の一人といえるだろう。

総評

評価点

かなり広く楽しまれやすい、いい意味でさっぱりとした小説。
勿論それは内容が薄いとかそういう話ではなく、ダンジョン配信系が好きな人もそうでない人もしっかりと楽しめるような内容となっている。

特に途中で出てくるライバル(?)キャラクターの作りは見事で、コメントや掲示板回と合わせることで多くの読者の期待に応えられるような巧みな人物となっている。

総じてコンセプト通りにしっかりと書かれた、全体を通してクオリティの高い小説となっていることは間違いないだろう。

問題点

これはいい面としても取り上げているのだが、やはり薄味なのは否めない。
勿論そういうコンセプトであるわけで、読みやすさとのトレードオフといったところだろう。
Web小説の需要としては非常に噛み合っているので、一概に悪いわけではないが、敢えてあげるならといったところ。
(なら言うなって?それはまぁ……うん、そうね)

最終評価 59点(Web小説としては充分な良作)

明確なコンセプトがあり、その通りにしっかりと表現できているかなりクオリティの高い小説。

その上でただ流行り要素をなぞるわけではなく、作者さんのやりたいことを形にして独自の味を生み出している。

ダンジョン配信というジャンルが好きな人は勿論のこと、そうでない人にも是非一度読んでみてほしい秀作小説。

所要時間は『第24話 ミナセという女。』までで凡そ40分ほど。

極めて個人的な感想

とにかく読みやすい。

どうしてもこの手の作品だと『ざまぁ』要素とか過剰に褒めるコメントとかでお腹いっぱいになりがちなんだけど、その辺りをソフトにしてくれているのは面白い部分。
コメントの治安の悪さが好き。

その辺りのズレのなさというか、目標に真っ直ぐな感じが主人公のキャラクターとも上手く噛み合っているのかなと思ったり思わなかったり。

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