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CDか、音楽配信か

 先日27歳になる娘と久しぶりにTSUTAYAに行った。目的はDVDソフトの購入だったが、そこで見たレンタルコーナーの激減ぶりに時代を感じた。
 携帯電話で映画を楽しむ時代になっている昨今、家族でDVDをリビングルームで楽しむということが無くなりつつあるのではないかという事。もちろん、子供の年齢にもよると思うが、娘は子どもの頃にレンタルDVDを借りにTSUTAYAに行き、あれこれ言いながらDVDを選んだことが楽しい思い出だった、と懐かしんでいた。
サブスク文化の到来が思い出を書き換える。

 さて、現在私は音楽パートナーと一緒にレコーディングを行なっているが、その成果物をどうするかで悩んでいる。
CDという媒体が衰退する中、今からCDを作っていいものか、ということ。
音楽配信という方法が主流となっている音楽業界において、我々の世代で配信を受入れてもらえるものか。私の凝り固まった頭の中で整理してみた。

 まずは、私が音楽配信に拒否反応を示すようになった理由の一つが、最初の音楽配信があまりにも乱暴だったという事。
大好きなバンドであるU2のアルバム『ソングス・オブ・イノセンス』(2014)が、2014年9月10日、iTunesでアルバムが先行配信され、10月13日まで無料でダウンロード可能となった。ユーザーの設定によるがアップルのデバイスに自動でダウンロードされ、iCloudにログインしているユーザーには、自動で「購入済み」に無償で追加された。そしてこの突然のU2からのプレゼントは、「購入済み」に追加されたユーザーから、「アルバムを勝手に購入させられた」「押し付けられた」などの苦情が相次ぐ事態となる。
私も、いきなり携帯電話の画面に妙な男の裸が2体映る画面となり、ゲイのAVがiPhoneに入って来たかと思った。しかし、聴いてみるとボノの声。調べてみると無償配信。
なんだコレ?が第一印象。

この写真が突然携帯に現れたら驚く。実はドラムのラリー・マレン・ジュニアとその息子だった。

 そして、こちらが欲していないところにいきなり、「只だからいいだろう」という独善的な感じがしてとても前向きに聴く気になれなかった。
そして、この音楽配信で体感したことで一番気になったことは、彼らの歌ってる内容がさっぱり分からないということ。
 私は、U2、ディラン、パティ・スミスなどメッセージ性の強いミュージシャンやラッシュ、YESなど物語性や警鐘などの音楽の展開を聴きこみたい場合は、歌詞カードやライナーノーツのある日本盤のレコードやCDを購入してきていた。
そういう音楽の聴き方をしてきた者からすると、音楽だけダウンロードというやり方に違和感を覚えたのだ。
だからか『ソングス・オブ・イノセンス』は、U2のアルバムの中で一番再生回数が少ないアルバムとなったので、印象も薄い。

 音楽は実態が無い文化である。
その物資を助ける意味で盤があり、ジャケットや歌詞カードがある。
もちろん、音楽配信であれば携帯やiPodのような音楽再生機にはその映像やデータが映るかもしれないが、それを良しとするかどうかの問題となる。CDだって登場した時はアナログ盤よりも小さくジャケット芸術としては不評だったことを思い出す。
そのような事を加味した上でも音楽配信が主流となる現代で、やはり私は成果物が欲しいと思う。
サブスクを否定しているからかもしれないが、その仕組みよりも、歌詞カードやライナーノーツを見ながらスピーカーから音楽を鳴らす、という音楽の楽しみが自分には一番しっくりくるのだ。
いい音楽に出会えば、スピーカーの前に友を呼び、一緒に語り合うという時間が愛おしいのだ。

 世の中が携帯電話に支配され始めて10年以上、音楽の聴き方も映画の楽しみ方も変わってしまった。
サブスクは自分の好きな音楽や映画から同じようなジャンルを探し出してくれ、自分の知らない新しい世界を見出してくれるという利点は大いにあると思う。
だから、CD制作をするのであれば、新たなファンの獲得のためにも音楽配信もセットで考えていかなければならないという事は理解しようとしている。

 そもそも「CDを作る」と同世代に話しても、CDの再生が出来ない家庭が急増していることにも驚かされるのだ。昔はパソコン、ミニコンポ、カーステ、プレステ3あたりで聴いていたCD。巷ではその再生機問題が発生している。
 同世代ですらこのレベルなので、若い世代はCDの存在すら知らないかもしれない。そして、その答えは日本レコード協会が2021年12月に実施したアンケートで明らかになっている。
 音楽の聴取方法(複数回答)で最多は「ユーチューブ」(45%)で、「テレビ」(36%)、「定額制音楽配信サービス全体」(30%)が続いた後、「音楽CD」(25%)の順となった。音楽CDは2019年の調査では42%だったが大幅に減少した。音楽CDと回答した割合が多かったのは40〜60代の男性で、10〜20代の男女は、ユーチューブや定額制が中心。
CDが聴かれなくなった理由は
「そもそもいまの10代は、家にCDを聴くための機器を持っていない」
「若い世代が音楽を聴くのはスマートフォン。わざわざCDを購入したり、レンタルして録音することもしない」と記されている。
その影響により「定額で自分の好きな音楽を聴くサービス」にどんどん移行しているのだという。

 リスナーの聴き方が大掛かりに変わってしまったのだ。
そして、もう電機メーカー主体でソフトの変化があった時代ではなくなっているのだ。
レコードプレイヤー、CDプレイヤー、MDプレイヤー、VHSビデオデッキ、LDプレイヤーを売るためにメーカーの都合で音楽芸術のソフトは様々に変化した。しかし、今はその実態すら無くなってしまった。
そんな状況でCD制作。
 CDは音楽を再生するという機能だけでなく、歌詞カードと共に手元にあるという確信的な安心感を満たすための役割を担っているということを一つの考えとして持っておくしかないか。

2024年7月31日
花形

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