夏目りんたろう

夏目りんたろう

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はっけん

無駄にしたながい時間、一生分の焦燥と苛立ち。 努力のないゆめと薔薇色のデッサンだけは続けたのに。 よわい心が敏感なあたまをズタズタにした。 いまだに醜い欲望だけがよわい心を虐げる。 たたかわず不戦敗だけが積みかさなる。 理由ばかりを考え逃げまわった。 戦火の中のこどものように。 かつて永遠のこどもであった。 成長とともに永遠の青年になった。 自分が知るのはそこまで、そこで止まったまま。 青くさい心のまま、大人の分別さえない。 成長を止めてから鏡はみてない。 自分を映し出

    • おとうと(前編)

      兄と弟は仲が良かった。 毎日遊んだ。ケンカも毎日した。 家では二人だけでいることが多かった。 トランプやカードあらゆるものでケンカになった。 おとうとはいつも兄のそばにいた。 外に出るとき2人は手を繋いだ。 おとうとはまだ2つだった。 夏の日ふたりは麦わらをかぶり外に出た。 兄は水の流れを見るのが好きだった。 澄んだ水が流れるのを見ると孤独が癒された。 兄は水遊びをしようと思い用水路へ向かった。 用水路には農具などを洗う踊り場があった。 そこは本流の水が少しだけ入るように

      • 中原中也

        夏の日吉祥寺でその女にあった。 陽気な女であった。 よくしゃべる女であった お酒をたくさん飲む女であった。 色っぽい女であった。 社交的性のある女であった。 僕らは文学の話で盛り上がった。 詩が好きな女であった。 彼女は僕のことばに大笑いした。 『中原中也⁈ なかはらなかや!よ。何も知らないのね!』 彼女は中原中也が好きな女であった。 僕の戸惑いに女はもう一度なかはらなかや!!と言いい、無学な僕をもう一度笑った。 僕は彼女の天真な勢いを畏れた。 僕の知っていた中也は僕の知ら