地方銀行指導部〜田舎エリートたちの選民意識〜第五話
ー沼の淵
煙草が吸いたい。
と、久しぶりに思った。
やめて十年くらいか。
昔、懇意にしていたプレス加工業を営む取引先の社長と賭けをした。
どちらが長く禁煙していられるか。
社長室のテーブルで向かい合い、お互いに煙草をくゆらせながら、笑いあっていた或る日を思い出していた。
結局、意地を張り通りした私はそのまま禁煙を続けている。
新しい職場に赴任して、まだ四日目だというのに、営業現場での日々がこんなにも懐かしく感じられるとは。
転勤や新しい仕事に取り組むことなど、とっくに慣れ