11年前、教え子Sとの往復引用から
いまから11年前、かつての教え子Sと、「自分が面白いと思った文章からの引用」をやりとりしていました。当時の11月17日に書いた文章です。
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Sとの往復引用を昨日うっかり止めてしまったので、
ルールどおり今日は私がSの送ってきた文章への感想を述べました。
不勉強な私はSの引用により『ジェイン・エア』という書を初めて知ったのですが、すばらしいです。
吉田健一訳というのもいい。
私が感銘を受けた箇所を2ヶ所挙げます。
〇法則や規範はなんの誘惑もないときのために作られたものではなくて、そのきびしさに魂も肉体も反抗するさいに備えてできたものだった。それらはきびしいものであってしかも侵してはならないのだ。もし私の都合しだいでそれにそむけるものならば、それは価値がないものだった。
〇「私はガンジス河の岸に寝てまたこの景色を夢で見ることでしょう」と彼はしまいに言った。「そして私がずっと先になって別な眠りにはいるときにももっと暗い流れの岸でこの景色をまた見るでしょう」
それはあるふしぎな愛を表すふしぎな言葉で、情に動かされにくい一人の愛国者のその祖国にたいする情熱を語るものだった。
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自分自身である、ということ。
そして、迎合とも服従とも違う、外界への向き合いかた。ときには外界と激しくせめぎ合うことも、外界への誠実さの証であるということ。
さて、……私はここのところ梶井基次郎『檸檬』や宮澤賢治『なめとこ山の熊』の一節をSに送っています。
『檸檬』はあの有名な、爆弾(檸檬)を書棚において去る場面ではなく、
果物屋の光の描写のところを送りました。
奇跡的に美しい文章です。
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