【あらすじ】 「この学校、幽霊が出るんだってよ!」 学校の怪談話で盛りあがる教室。 男子高校生の駒井竜次(こまい りゅうじ)も、そのなかの一人だ。 「皆んなで夜の学校に忍びこんで、幽霊を見にいけばいいんじゃね?」 そんな提案をしたが、同級生の孤塚灼(こづか あき)に止められる。 「夜の学校には近寄らないほうがいい。この学校、本当に出るから」 しかし、嫌な予感はしつつも、竜次は肝試しを決行してしまう。 そこから、波乱の運命に巻きこまれていくとも知らずにーー
「さっき灼が、わたしに近づいてくるのは強いお化け、といってたでしょう? あれらはまだ子どもだから個々の力は大したことないけれど、数と連携が怖いわ」 走りながら、燈が説明する。その手には、まだ刀がしっかりと握られていた。 どこからとり出したのか、竜次は改めて疑問に思った。 灼の使った不思議な術と同じようなものだろうか。 しかし、訊いても理解できなさそうなので、竜次はあえて質問しないことにした。 「あそこは通れないとわかった蜘蛛たちが、先まわりして襲ってくるかも
足もとには大きな蜘蛛がいた。しかも、大量の。 大きさも普通の蜘蛛の大きさではない。 世界最大級の蜘蛛は足まで含めると、全長30センチほどもあるというが、こちらは胴体だけでもそれを超えていそうだ。タランチュラのように、足も太い。 その大群が、4階に続く階段や壁からワサワサと降りてきたのだ。 辺りを照らしてよく見ると、2階へ降りる階段の壁にも、ちらほらといる。 異様な光景だった。日本の学校に、このような蜘蛛がこれほど大量にいるだろうか。 いや、そんなこと
「この学校、幽霊が出るんだってよ!」 新緑香る季節。御山高等学校1年D組の昼休みの教室で、男子生徒が数人騒いでいた。 「夏といえば肝試し」というわけで、まだ季節的に少し早いものの、何人かがおどろおどろしい自慢の怪談話を披露していたときだった。 その中のひとり、信也が唐突にそのようなことをいい出した。 学校に怪談はつきものである。別段、不思議でも何でもない。 ただし、人間は誰しも、自分に関係のあるところで起こる噂というものには、俄然興味が湧いてくるものである
母子家庭で育った中学生の葵は、家で起こる怪奇現象に悩まされていた。 すると、入院中の母に、「一人で家にいるのが怖いのなら、いいことを教えてあげる!」といわれ……。 読切作品本編:
「入るよ、母さん」 僕は声をかけて、病室に入った。 「あら、息子さん? まだ中学生でしたっけ。いつもお見舞いに来て、偉いわね」 中にいた看護師さんが、ニコニコしながら部屋を出ていく。 「葵、よく来てくれたわね」 母が体を起こそうとしたので、ベッドに近づき、それを押しとどめた。 「寝たままでいいよ。調子はどう?」 「おかげさまで、今日は大分いいわ」 そう答えて、母がにこやかに笑ったが、少しやつれて見えた。 「そうだ、また家で怪奇現象があったよ」 「前にい
高校一年生の佐藤信也には、恋人がいない。 それを憂いた自称・発明家の爺ちゃんは、マッチング用人工知能マリーを開発した。 マリーはなんと、すれ違っただけで、信也にピッタリな女の子を見つけられるという。 信也はさっそく、その性能を試すことになるのだがーー。 読切作品本編:
「できたぞ、信也!」 禿げた頭をピカピカさせながら、爺ちゃんが階段を駆けあがってきた。齢六十をとうに過ぎたというのに、足どりが信じられないくらいに軽い。 「聞いてくれ! ついに、完成したんじゃ!」 叫びながら、俺の鼻先にぶつける勢いで、スマートフォンのようなものを突きだしてきた。 「一体、なに?」 のけ反りながらも、かろうじてそれを受けとる。 手にすっぽりと収まる程度の大きさの、黒塗りの四角い板。見れば見るほどに、ただのスマートフォンだ。 「お前、そろそろ