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【超短編小説】 聞かせてくれよ

「迎えに来た。とりあえず車に乗れよ」

白いボックスカーが私の目の前に止まり、一人の男が降りて来た。

「あなたは誰ですか?」

「アンタを助けに来た」

「どうしてここが分かったんですか?」と私は尋ねる。

「俺らはさ、今にも死にそうになっている人を探し回っているそういうプロ集団なんだよ。だから、すぐに見つけられるんだ」

「あなたには、私の気持ちなんて分からないですよ」

「あー、分からねぇだろうな」と男はぶっきらぼうに言った。

「だったら、何で。何でここまでするんですか」

「何でかって言われてもな。そういう仕事だからさ」と男は小さく笑う。

「放っといてくださいよ」と私は思わず言い返した。

「でもさ、辛いじゃん。一人で居たってよ。誰かには知っといて欲しいじゃん」

「私はあなたのこと、何にも知りません」

「そう、俺もアンタのことは知らない。俺らは政府も知らない慈善団体だ。この活動を知っているのは今まで俺らが助けた人間だけだ。とりあえず、車の中で話そう」

私は戸惑いながらも、男に誘われ、ボックスカーに乗った。

車内は意外にも清潔で、奥には簡単なキッチンが備わっていた。

「スープ、出してくれ」と男は仲間に伝えた。

「とりあえず、これ飲めよ。体、冷えてるだろう。大丈夫だ、毒なんか入ってねぇ」

私は恐る恐るスープを一口飲み、「あったかい」と呟いた。

「じゃあさ、アンタの話、聞かせてくれよ」

そう言って、男はラジオの音楽を流すと、私を乗せて走り出した(完)