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【超短編小説】 先生へ


みんなが出来ることが、僕には出来なかった。

小学生の頃からそうだった。

馬鹿にされることもあった。

でも、先生は言ってくれた。

「大丈夫だ、先生は信じてるから」



20年後、僕は研究者になった。

先生と同じように、教育を教える仕事もしている。

お墓の前に花を添え、先生に報告する。

先生は僕を天国からどう見ているのだろうか。

僕は研究している。

様々な子ども達の伸びる力を生かす方法についての研究。

答えは、まだ出ていない。

先生なら、この答えが分かりますか?

たぶん、先生はあの時と同じように微笑むだろう。

「先生、僕はこれで良いんでしょうか」

帰り際、先生が話しかけてきた気がした。

『大丈夫だ、君なら。先生は信じてるから』(完)