89歳の母とテレビのよい関係
89歳の母は、テレビを見たり本を読んだりして大半の時間を過ごしています。
母とテレビのことで少し考えることがありました。
「年老いてテレビばっかり見てると認知症になりやすい」と複数のメディアでよく伝えられています。
最近読んだ本にも次のように書かれていました。
「ふん、ふん、その通りだなあ」と思って読んでいました。
テレビダラダラ→心も体もダラダラ→頭も体も動かない→考える力が育たない、もしくは力が萎える
こういう図式は、年老いた人だけではなく、成長期の子どもや大人にもあてはまりますよね。
なんでもダラダラし続けるのはよいことはないでしょう。
89歳の母は、私から見ると「ダラダラテレビを見ている」ようには見えません。
私にはできない3つの見方をしています。
テレビの中の人と話をしている
母はニュース、ドキュメンタリー、バラエティ、クイズ、映画、ドラマといったいろいろな番組を見ます。
そして、よく話をしています。テレビを見ながら独り言をいうというものではありません。中の人と話をしているのです。
「とうちゃこ」の火野正平さんがつぶやくと「うん、そうやねえ。私も〇〇してたよ〜」
アナウンサーがニュースを読むと「あら、そうけ〜。□□やったんや」
クイズ番組では、回答者の発言に「あら、ちがうよ〜。△△やろう」
最近は、テレビの中の人は母の声が届いているはずがないのに、なんとなくやりとりできているように見えてきたので不思議なものです。
単にぼんやりと見ているのではなく、考えながら自分の気持ちを表現したり、相手の言っていることに対して反論したりして楽しんでいます。
一人暮らしの母は、テレビの中の人が話し相手のようです。テレビでは、いろいろな役割、キャラクターの人がそれぞれの話し方で話しています。母にとっては、その変化も刺激になっているのではないでしょうか。
見始めと見終わりがはっきりしている
母は話し相手に出会うためにテレビのスイッチを入れているように見えます。テレビを消すときには「はい、さようなら」とでも言うように・・・。
そのため、「ダラダラ見ている」という感じがしません。
あんなに長い時間見ていても、母にとっては「テレビを見ている」というよりも、「テレビの中の人と話をしている」というコミュニケーションの時間だからでしょうか。
テレビは人に会い、人と別れるといったもので、見始めと見終わりがはっきりとしています。
とにかくよく笑う
母は、テレビを見ながらとにかくよく笑います。とても大きな声で笑うので、私が別の部屋にいてもよく声が聞こえ、その場にいなくても母のよい表情が目に浮かびます。
「笑うことは健康によい」とよく言われています。
母の姿を見ていて実感します。
大きな声で笑うことで、発声器官や肺を十分に動かし、深い呼吸をしています。
顔の表情筋をよく動かしています。
そして何よりも気持ちが大らかになり、よい発散になっています。
私もこんなふうにおもいっきり大笑いをして毎日を過ごしたいなあ、と思います。
こんなふうに見てくると、母とテレビとのよい関係が見えてきました。
テレビは、母の老化を食い止めています。一人暮らしで話す相手がいない分、テレビの中のいろいろな人と話をしたり考えたりしています。
テレビを長時間見ることについてはマイナス面ばかりが取り上げられがちですが、見方によってはプラス面があり、母にとっては良き相棒となっています。
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