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【読書日記】 「子どもと大人のためのミュージアム思考」を読みながら

この夏、東京都美術館へ行き、その取り組みに大きな刺激を受けました。
美術館のある上野公園にはいくつものミュージアムがあり、それらが展開する「Museum Start あいうえの」の取り組みは羨ましい限りです。

その時の記事はこちらです。

今、東京都美術館学芸員アート・コミュニケーション係長の稲庭彩和子さん編著の「子どもと大人のためのミュージアム思考」を読んでいます。
分厚い本で、中身がぎっしりといった感じです。




この中で、特に共感できる記述がありましたので、大切に引用しておくことにしました。

「ミュージアムでモノを見るとは」どういうことか書かれています。
「モノと一緒に思考する力」「直感を信じる」などがあげられています。
そして「社会的なつながりをつくる」こと。

「社会的なつながりをつくる」
ミュージアムは、人と展示物をつなぐ「出会いの場」です。(中略)
「展示物と人との出会い方」を考えることは、「人と人との出会い方」を考えることと、とても似ています。例えば、知り合いでないふたりが初めて会う場合、あなたがその出会いの場を設定する人だとしたら何を大切にするでしょうか。初めて知り合うお互いの印象がよくなるような場の設定であることはもちろん、もう一歩踏み込んで「お互いは関心を持ってコミュニケーションができる」という状況を作ることができればよいはずです。
 展示物と人との出会いも同じです。その人が展示室で目にしたモノに、その人が思った以上に関心を持つようにできれば展示する側としては成功といえます。見る人の主体的な関心が自然と生じるような展示が理想です。
 人が他者に関心を寄せることは、人が他者と共に健やかに生き抜くための重要な能力です。観察や鑑賞の「見る」という行為は「対象への関心や想像力を持てること」であり、この「見る力」の向上は、他者と共に協働する力の醸成にもなるのです。

P107〜P108

私は特別支援学校で教員をしています。
以前、子どもたちのアート作品をミニギャラリーで展示したことがあります。
「ぼくのわたしのてんらんかい」という小さな展覧会です。
どうしても展覧会を開きたかったのです。
その時の気持ちといいますか、私のミッションみたいなものを言葉で表すと、上記の引用文なのです。
「私の心に抱いていたことをよくぞきれいにまとめてくださった」というのが率直な感想です。


「ぼくのわたしのてんらんかい」は”名画”がテーマでした

「ぼくのわたしのてんらんかい」はアート作品を見せるということだけが目的ではありませんでした。
アート作品を公の場に展示することで、人が足をとめ、関心を持ち、その場にいない子どもたちとの交流をしたかったのです。
そして、それは大成功でした。
会場に置いたアンケート用紙には多くの感想を書いていただきました。

まさに、
「出会い」「主体的な関心が自然と生じる展示」「見る力」
です。

今、本を読みながら、「ぼくのわたしのてんらんかい」を思い出しています。
小さな展覧会で「社会的なつながりをつくる」ことができたのです。
そのことを改めて私に感じとらせてくれたこの本に感謝します。
まだまだ読み進めます。

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