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【読書日記】 ゴッホ美術館監修 「ゴッホ 最後の3年」を読む

表紙のイラストがゆるかわいらしくてつい手に取りました。帯に「オランダのアムステルダム・ゴッホ美術館監修」とあり、「これは読まなくては」と思いました。

第1刷:2018年11月25日
発行元:株式会社 花伝社
著者:バーバラ・ストック   訳者:川野夏実
内容:「ひまわり」「星月夜」など傑作の生まれた晩年の3年間について、弟テオとの書簡や絵画を用いて制作され、オランダで最も読まれているグラフィックノベルです。

こんなすてきな本の形もあるんだ

  • 表紙と裏表紙と背表紙がすてき
    表紙には、ゴッホの代表的な作品である「ひまわり」「星月夜」のイメージとゴッホが描かれています。
    裏表紙には、ゴッホが青空の下で制作に取り組む後ろ姿があります。そして背表紙にはゴッホの肖像イラスト。

    私はこの本を図書館でこの背表紙に惹きつけられ、手に取ったのでした。
    なんともおだやかなイラストとタイトルの文字です。

  • マンガ、文章、大きなイラストの組み合わせが新鮮
    出版社は「グラフィックノベル」という言葉でこの本を紹介しています。

    厳密な言葉の意味は分かりませんが、マンガあり、文章あり、イラストありです。それらがちょうどよい具合にミックスされていて、読んでいて変化と言いますか、リズムと言いますか、そのようなものがあり、どんどん"波”にのって読んでしまいました。

  • パラパラとブラウジングしただけでも楽しい
    紙質が厚くてしっかりしています。
    表紙の硬さもちょうどよく、パラパラとページをめくりやすいです。
    最初から最後までおだやかな色彩でとてもきれい。
    最後の6ページは、ゴッホが亡くなったとされる麦畑が美しい黄色と青色で描かれており、目をひきます。

    あまりにもステキなので、何度もパラパラブラウジングして楽しみました。


ゴッホと親しくなったような感覚をいだいた

ゴッホというと、この記事の見出し画像にあるように、神経質そうで近寄り難いというイメージを持っていました。

そういえば、アート作家の原田マハさんも、ゴッホは遠い人と長年感じておられましたが、ようやくゴッホの足跡をたどることができ、それを一冊の本にしておられましたね。



本の中で、ゴッホの個性を描きつつも、「いや、その辺の人と同じように感じ、生きようとしていたんだよ」ということも描かれているように思いました。

ゴッホと少し親しくなったような感覚は次の3点に見られる描かれ方からくるものだと思いました。

  1. ゴッホの顔の表情が豊かに描かれている
    「ゴッホ=神経質」ではないのです。
    著者が独特のタッチで、ゴッホのいろいろな表情を描いています。
    「聞いてくれ!」「あわわ・・・」、「なんだこりゃー」「ふ〜、いいなあ〜」「すてき〜」「よーし」などなど、目の形や向き、顔の角度といったいろいろな表現方法で、「神経質」以外の表情が伝わってきました。

    わたしたちに近い、人間味のあるといいましょうか、そういったものを感じました。

  2. 状況をイメージしやすく描かれている
    これまで、ゴッホについて書かれたものを主に文字情報で得てきました。
    知っていたことがこの本では流れを伴ったイラストで描かれています。

    そのため、状況がイメージしやすく、神経質になっているゴッホの気持ちまでめいることなく理解できました。

3.いろいろな風景の中で制作しているゴッホの姿がよく描かれている
イーゼルをたてて制作するゴッホの姿がたくさん描かれています。

ゴーギャンと二人並んで制作、なじみの家具を背景に制作、アイリスの咲くそばで制作、窓から外の風景を眺めて制作、など、いろいろなところでいろいろなものを見て制作しています。絵の具のついた筆を持っていたり、表情も様々だったりして細かいところも描かれています。

そして、作品そのものもそれとなく描かれているのです。

例えば、「ファン・ゴッホの寝室」という作品は、本物の作品にはいないゴッホがベッドで寝ています。
「種まく人」という作品は、種をまいている人を目の前にイーゼルを立てて制作をしているゴッホ、種をまいている人をにこやかにながめているゴッホを通して描かれています。

このような描き方は、私自身もその場にいるような気分になるようです。





  1. 他の本にはない、独特な構成で、ステキで、おもしろくて、ほっこりできて、しかも知識も増える、良い本に出会えてよかったです。ゴッホと親しくなったように感じ、そしてより好きになりました。





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