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【読書日記】 「アートがわかると世の中が見えてくる」を読む

「はじめに」の“美術がわかるということは感じることではない”の言葉に惹かれて読みました。

第一刷:2021年2月5日
発行元:IBCパブリッシング株式会社
著者:前﨑 信也
内容:学校では教えない、芸術文化を理解するために必要な知識
この世の中でどのくらいの人が「美術」を「わかって」いるでしょうか。
「美術で感動すること」と「美術を理解すること」は違います。
生まれ持った感性は美術を理解するためには必要ないのです。
本書では、これまでの美術史本には書かれてこなか った、日本の美術を理解するために必要な歴史や日本の美術が生まれた理由、世界から見た日本美術の価値、美術界の問題点など、芸術文化に深く携わる人間はみんな知っているのに、一般的には語られてこなかったことについて、できるだけやさしく解説します。(amazonより)

「芸術の世界の人間はみんな知っているのにわざわざ言わないこと」が書かれていた

「こんなことを知りたかったんだ」と思う話が盛りだくさんでした。
例えば、もともと美術品はお金持ちの人のためのものだったということについて、社会や文化の背景をわかりやすく説明しながら書かれていました。

「そう説明してくれると、いろいろなことがスッキリわかってくる」
と思いながら読みました。

美術品とその背景を知ると、「なぜ、この作品はここにあるのだろう」「なぜ、こんな肖像画を描いたのだろう」と考えながら美術鑑賞ができます。
考えながら鑑賞するのもいいものですね。


背景を知り、考えながら美術鑑賞をしたい


ペットボトルという文化の普及

いろいろな意味でのエリートが日本美術を支えてきました。
しかし、美術を鑑賞するための初歩的な知識を次の時代のエリートに伝えられなかったとのことです。
茶道の例がわかりやすく書かれていました。

・・・煎茶も茶道も、お茶を飲む仕組みではなく、その周りにある建物、道具、庭園、すべてを「きちんとする」という機能を持っていました。お茶の人口が減るということは、その周辺も含めた文化にかかわるすべての人が減る結果を導きます。

141ページ


茶道は「仕組み」だけではない

私はずいぶん前に茶道を習ったことがあります。
その時は、お手前の「やり方」を覚えるのが茶道だと思っていました。
教えてくれていた方も、それ以上のことは考えておられなかったのではないかと、今思います。
「やり方」に加えて、その周辺についても教えてもらえていれば、習うのを続けていたかもしれません。


若い学生のほとんどは、茶筅でお抹茶を点てないのは当然のことですが、急須でお茶を淹れるということもしません。ペットボトルという新しく便利で素晴らしい文化が普及したからです。しかし残念なことに、これまでのお茶とは違い、ペットボトルのお茶をより楽しむための文化や芸術は発達しませんでした。教養を必要とせず、誰にでも簡単にアクセスできることが求められたからです。

142ページ

今の時代は、誰でも簡単にアクセスできるということがとてもよいこととされているように思います。
このペットボトルの例は、いろいろなことに当てはまりますね。


「仕組み」だけでなく、文化・芸術に視点を当てる



日用品、建築物、交通機関、ネットなど、どれをとってもアクセシビリティを重要視し、設計されています。
それはそれでよかった面がたくさんあります。
しかし、失ったものも多いのですね。


美術の見方における「共感」

絵画の鑑賞もそうですね。
画家の系譜、画法などについて知ることで絵画を見る目が少し変わります。
しかし、それだけでは「表面的」に終わってしまい、文化の継承には結びつかないのでしょう。

作者と「共感」できるかどうか、何か役立つ知識や経験を得ることができるかどうかは我々の持つ知識にかかっています。

169ページ


作者と共感しながら鑑賞したい


この本を読んで、宗教、経済、国際関係や、世界における日本という国のあり方を学ぶことが、美術を理解するのに役立つということがよくわかりました。
私は、世界史、日本史、政治、経済といった分野は非常に苦手ですが、美術に関わるちょっとした知識が得られ、楽しく読みました。


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