できない人が得をするメカニズム

「図面真っ白じゃねえか!今まで何やってたんだ!期日は明日なんだぞ!」

という怒号が職場に響き渡り、私は同僚とともにそちらを見ました。そこでは仕事ができないと職場で有名なAさんが上司に怒られていました。
私はAさんとはあまり関係がありませんでしたが、咄嗟に「あんなに残業して製図していたのに真っ白って言うなんてあまりにも酷い!援護してあげよう」と思い、上司とAさんのもとに行きました。しかし広げられている図面を見たところ本当に真っ白で、思わず「データ消えてしまったんですか」と聞いてしまいました。
すると、「あれはこうなんじゃないかと思った」「これが懸念材料になり検討に時間がかかった」と理由を述べましたが、要するに「心配ばかりして全然なにもしませんでした」「あれもこれもと手を伸ばして時間切れになりました」という事でした。管理職は仕事をAさんから取り上げ、Aさんの部下に回しました。
Aさんの部下は「こんなに仕事をこなしているのに、何故できない人の分まで私がやらなくてはならないのか…」と不満でした。

こういうケース、どこかで見たことありませんか。何故散見されるのかというと、実は「管理職にとって都合がよいから」じゃないでしょうか。各言い分を考えてみました。

管理職
「仕事ができる人は仕事量に文句をあまり言わないし、期日は守るし、できない人が迷惑をかけている体にしておけば恨まれることもないし」
「仕事ができない人を指導したりしてパワハラだって言われたら嫌だし」

できない人
「こんなに一生懸命頑張っているのに、そんなことを言われるとつらい」
「そもそも仕事はみんなでやるもの、時間のある人が手伝うのは当然」

できる人
「管理職は現場を見ない。どれだけ仕事ができないのか分かっていない」
「待遇面も変わりない。やるだけ損」

上層部
「どうでもいいから成果は上げてほしい。」

こうして、できる人が我慢すれば丸く収まるという構図ができあがり、ほかの三人はさらに怠惰を極めていくんじゃないでしょうか。すると、最後はできる人がブチ切れて辞めていく、原因の「できない人」はのんびりとその組織に居座り、定年まで延々と迷惑をかけていく、というよく見るオチになるんだと思います。

4人居たところから優秀な1人が辞めていくと3人になります。もうおわかりだと思いますが残された3人は「自分たちでできない仕事」をどこかに投げるようになるんですね。こうしてできない人が得をする環境が醸成されていくのではないかと思います。

最後になりますが、こういったケースで一番恐ろしいのは、「できない人が実は一番得をしている」という点だと思います。
「上司からの評価は下がるかもしれないけれど、余程のことをしない限りクビにはならないだろうし、年功序列だからある程度まで昇進するだろうし」とあぐらをかいている人が得をして、優秀な人材が疲弊して損ばかりをしていく環境を見た新人や他の優秀な人材がどう思うかは火を見るより明らかではないでしょうか。

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