満月、「変わる」。
「もう、外真っ暗だ」
カフェに立っているとき、お客様のそんな声にはっとすることが多い。
1日は、早い。洗い物をしたりドリンクをつくったりしているうちに、気づけばわたしも時間を忘れてしまっている。
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昨夜、気のおけない友人と新橋で馬刺しを食べた。くだらない話ばかりしながら笑い合って、一杯だけ酒を飲む。愉快な夜だった。
ふわふわしながら解散して、終電車の3本くらい前の電車に揺られていたら、ふっと空に満月が見えた。道路を走る2台のタクシーが交差し、びゅわんと音を立てて横切っていく。
その光景を、数年前も見た。たしかに、見た。
そう思いながらしばらく電車に揺られていると、ギラギラ輝く眩いばかりのビルのネオンが一面に広がり、満月はその姿を消す。そこで、わたしも目を閉じた。
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当時、ぐでんぐでんに酔っ払いながら帰宅し、ベッドまで辿り着けず玄関で眠っていたわたし。今、品行方正に一杯だけ飲んで帰路につくわたし。
どちらも別人のようでずうっと変わらず一緒の人物で、終着駅に着いたとてその事実が変わるわけでもないのだけど、電車から降りて夜道をてくてく歩いていたら何かが確実に変わったような不思議な気分に襲われた。
「私はずっと、本来の自分だったわ。ただ、鳥子さんも言っていたように、自分って変わっていくのよ。」
そういえば、山崎ナオコーラ著『ボーイミーツガールの極端なもの』にそんな一行があった。
変わることって、よいのか悪いのか。まだぜんぜん答えが出ていないんだけど、どんなわたしも「今」の前には手も足も出ない。だから今、誇れる自分なら、それでいいのかな。なんて考えた。
今日は、マグロを食べるみたいです。
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