【コンペ】傾斜地と住宅の関係性
先日、とある北海道の建築コンペに応募しました。課題は「斜めとイエ」。
課題文には以下のように書かれていました。
課題文には北海道内の傾斜地を敷地とするように示されています。
建築的・空間的な概念を問う課題とは異なり、具体的な敷地と向き合うことから出発するため、作品の制作過程を含め、今までにない発想が得られると期待して、作品制作に取り掛かりました。
まずは道内各地から魅力的な傾斜地をピックアップし、車を走らせたり、自転車を漕いだり、歩いたりして、出来る限り現地へ足を運びました。
(実際に撮影して回った傾斜地の写真を載せたかったのですが、既に削除してしまっていました………、無念…。)
すると、当然ながら地図上の等高線を眺めているだけでは想像し得なかった体験が得られます。例えば、傾斜地を上るときは体を前に倒して粘り強く足を踏み出し、反対に下るときは胸を張って足を突っ張りながら進みます。
そうして上り下りを繰り返しているうちに、自分が見晴らしの良さだけで傾斜地の魅力を決めつけていたことに気付きました。
傾斜地の魅力は重力に逆らって上り切った先で、山並みやまち並みを一望し、今度は重力に任せて下り切るまでの気持ち良さで全て吹っ飛んでしまうような、そんなシークエンスを含めて存在していたのです。そうした傾斜地の酸いも甘いも詰め込んだイエをつくろうと思うようになっていきました。
敷地は小樽市オタモイの傾斜地を選びました。元々はその手前に位置する小樽市長橋の傾斜地から選ぶ予定だったのですが、せっかくなのでオタモイの傾斜地も確認しておこうと車を走らせました。
トンネルをいくつか抜けると山々の表面にまるで茸のようにひしめき合うイエの姿が立ち現れました。「所詮イエなんて一枚のプレートを分け合って盛り付けられているだけ」と言わんばかりの光景を目の当たりにして、斜に構える大地のスケールに圧倒されたことは今でも鮮明に覚えています。
敷地はつづら折りの坂道に挟まれて三角形となり、3つの頂点に向かって緩・中・急勾配を形成していました。
自然の産物である傾斜地に対して、人間が折り合いをつけて蛇行する道を上書きし、その道と道の間に残された未造成地はこの場所本来の姿を保存し続けている、そんな敷地の姿に強く惹かれると同時に、この未造成地はなるべくそのままにしたいと思うようになっていきました。
その後の建築提案は以下のリンクにて説明を行っています。
敷地を訪れたときに僕が抱いたイメージを淀みなく伝えるために、このイエに住むクライアントを設定して、僕の声を代弁してもらいました。彼等がこの場所本来の姿を肌で感じ、ともに生きることが出来るように、まるで斜めの敷地に根を下ろしているかのようなイエをつくりました。
イエの根と称した一枚の自由曲面が波打ちながら、さまざまな勾配を形成している敷地に応答し、ときにランドスケープと同化し、ときに人間が腰を下ろすためのベンチとなります。イエの根は敷地に絡みつき、この場所にしかない魅力を吸収して彼等の生活に花を添えるのです。
今回、「斜めとイエ」という課題のもと、作品をつくるにあたって、傾斜地が見晴らしの良い家を建てるための踏み台として、すっかり定着していることに問いを立てることを最大の目標としていました。
宅地造成によって平坦な敷地で埋め尽くさずとも、この場所にしかない魅力を発見しながら、豊かに生きることが出来る、そんなイエのあり方を伝えられていれば嬉しいです。
ちなみに、「根を下ろす」というイエのイメージは Leandro Erlich の『Maison Fond / Melting House』という作品からインスピレーションを受けています。
これは地球温暖化などの環境問題を題材とした作品ですが、イエの外壁と道路の舗装にそれぞれ使用されているタイルが溶け合う様が面白いですよね。
そして実は………、
このコンペにもう1案応募していました(笑)。
興味のある方は、以下のリンクを覗いてみて下さい。
この記事では詳しく紹介しませんが、先ほど紹介した作品が「動」なら、こちらの作品は「静」というところでしょうか…(笑)。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。今後もこのような記事を不定期で投稿する予定なので、どうぞよろしくお願いいたします。
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