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『異なるアプローチ、結局は同じ結末説』⑤筋トレの頻度(全身法vs分割法)の影響

筋トレの世界は、数多くのアプローチが存在しますが、最終的には同じような結果が得られる。
それが「異なるアプローチ、結局は同じ結末説」です。

このシリーズでは、最低限の科学性を保ちながら、時には若干飛躍的な主張も交えつつ、読者がトレーニングを続ける意欲を高めるためのエビデンスを提供します。
筋トレ愛好家や初心者の方々にとって、本シリーズが新たな視点を提供し、トレーニングをより楽しく効果的にする手助けとなれば幸いです。

過去のシリーズ

5回目となる今回読み解く論文はこちらです。
Gomes, G. K., Franco, C. M., Nunes, P. R. P., & Orsatti, F. L. (2019). High-Frequency Resistance Training Is Not More Effective Than Low-Frequency Resistance Training in Increasing Muscle Mass and Strength in Well-Trained Men. Journal of strength and conditioning research, 33 Suppl 1, S130–S139. https://doi.org/10.1519/JSC.0000000000002559

前回と同様に、頻度(全身法または分割法)の違いが与える影響を調べた研究です。
前回は筋力に対する影響を調査していましたが、今回は筋肥大にも焦点を当てています。
詳細を見ていきましょう。

3年以上の筋トレ経験を有する男性を対象とし、筋トレの頻度が動的筋力(ベンチプレスとスクワットの1RM)、身体組成(二重エネルギーX線吸収法)に与える影響を調べるために、対象者たちをランダムに次の2つのグループに分けました。
・低頻度群(分割法)
・高頻度群(全身法)

トレーニング実験の概要は次の通りです。
8週間の期間中、週5回の頻度でトレーニングを行いました。
このうち、低頻度群は
月曜日に肩関節内転筋群・肘関節伸展筋群、
(ベンチプレス、トライセップスエクステンション)
火曜日に膝関節伸展筋群・股関節伸展筋群、
(スクワット、45度レッグプレス)
水曜日に肩関節伸展筋群・肘関節屈曲筋群、
(シーテッドロー、バーベルカール)
木曜日に膝関節屈曲筋群、足関節底屈筋群、
(ハムストリングカール、カーフスタンディング)
金曜日に肩関節内転筋群・腰椎屈曲筋群・腰椎伸展筋群
(ラテラルレイズ、アブドミナルクランチソロ、ローワーバックベンチ)
のトレーニングを行いました。

一方、高頻度群は週5回全身のトレーニングをしました。
したがって、1回のトレーニングにおける種目数が多く(11種目)、種目当たりのセット数が少なくなります。

その他の変数、具体的には週ごとのセット数(各種目5もしくは10セット)、強度(およそ70-80%1RM)、反復回数(およそ8-12回)は両群で同じでした。


結果をみていきましょう。
ベンチプレスとスクワットの1RM、除脂肪量は両群で増加しましたが、群と時間の交互作用は見られませんでした
つまり、トレーニング群に関係なく、両群ともに動的筋力が向上し、身体組成が改善されたということです。
この結果は『異なるアプローチ、結局は同じ結末説』を支持するものです。

この研究では1週目、4週目、8週目の遅発性筋肉痛(DOMS)も評価しました。
みて見ると、どのタイミングでも低頻度群(分割法)のDOMSが高いことがわかりました。
低頻度群では、特定の筋群に対して1回あたり多数のセットを行ったことで、激しいダメージが生じたのだと思われます。

筋トレによる筋肉痛がトレーニングの継続にどのような影響を及ぼすのかは人それぞれです。
筋肉痛を感じることで喜びを得て、トレーニングを続ける動機づけになる人は、低頻度群のように、1回のトレーニングで特定の種目(部位)に焦点を当て、セット数を増やすことが適しているかもしれません
一方で、激しい筋肉痛を避けつつ、コツコツとトレーニングを続けたい人は、高頻度群のように、1回のトレーニングで実施する種目を増やし、種目当たりのセット数を減らすことがお勧めです


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