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昨年の秋、長くしていた髪を切って、金髪になるくらいブリーチして、明るめのカラーを入れた。
最近流行りの脱白髪染めというやつを始めてみた。

今まで10年以上通い続けていた美容院があった。
ショートやボブになると他の美容院にも行くが、オーナーで美容師のPさんがパーマが上手だったので、髪が長くなってくるとパーマとカットをお願いしていた。

私は特別髪が多いが、Pさんは嫌な顔ひとつせずに対応してくれるので(美容師さんによっては、多いですね多いですねすごく多いですねといい続ける人や、途中疲れてちょっとため息をつく人、切る前に気合を入れる人と、
大変なのはわかるが、顔に出る人が多い)カラーも白髪染めで2~3ヶ月に1回くらいと頻繁に通っていた。

長い付き合いで、私の趣味や仕事のことなども覚えてくれていて、行くたびにボイトレや刺繍、日本語教育の話などを聞いてくれたり、私もその美容師さんの趣味について色々尋ねたりを重ねて行くうち、なんとなく親しくなれたような気になってしまっていた。
でも現実は違っていた。

電車で1駅プラス駅から歩いて10分と、自宅から少し離れていたが、コロナ禍でも白髪染めの為定期的にその美容院に通っていた。

去年のはじめくらいだっただろうか、自宅の最寄駅のすぐそばに、カラー専門のお店ができた。
使っている薬剤も比較的自然派のようだったので、1度試してみて、その後白髪染めはそこへ通うようになった。

久しぶりにカットで、Pさんのお店を訪れた時、あからさまにPさんの態度が変わっていた。
いや、正確にいうと予約の電話の時から変化していた。

電話をかけるとPさんが出た。Pさんはオーナーなので、普段電話に出る確率は低い。
時々予約電話でPさんに当たると、「あ、sachi さん!Pです!」と挨拶してくれていたのだが、その時はPさんが出たが、フルネームを告げても何も言われないので、声の似た別の方かと思って、Pさんですかと尋ねたら、はいとあっさり返事をされ、戸惑った私は、「お久しぶりですよろしくお願いします」と言って電話を切った。

お店へ行っても、満面だったPさんの笑顔はゼロ面へと変わり、通された席ではカットの間もコロナなどの世間話を少しするだけだった。

Pさんは、お店に頻繁に通わなくなった私に、全く興味がなくなってしまったのだ。

これに私は衝撃を受けた。Pさんに対してというより、お金を払って繋がってきた人間関係というものは、何年かけたとしても、培われていくものではなかったという事実に対してだ。

金の切れ目は縁の切れ目、という言葉を耳にすることはあるが、お金を通して繋がった縁である以上、その縁は10年たったとしても少しも深くならないのか。

「こんな希薄な関係は金輪際ごめんだ」と私は心の中で思いながらその店を出た。

Pさんと会話したことは、私の記憶の中にも色々残っているし、Pさんと話すのは楽しかった。だから尚更、Pさんの態度の変化を寂しく思った。

その後、私はインスタ(Instagram)で多毛と脱白髪染めのキーワードで二人の美容師さんを見つけ出し、新しいタイプのカットやカラーを始めた。

美容師さんは2人とも個人でSNS発信して集客しており、お客さんたちは美容院を選ぶのではなく、美容師さん自身を選んで、予約したりダイレクトメッセージをしたりして繋がっていく。今はそんな形が主流となってきているらしい。

二人に共通しているのは、無駄な世間話をしないこと。
平日に行っても「今日お休みですか」とも「お仕事何されているんですか」とも聞かれないし、「お休みの日は何しているんですか」とも聞かれない。
話すのは、髪のことや美容のこと、新しい美容技術の話、インスタやSNSのこと、情報発信のこと。

10年の付き合いだったPさんとの痛手がある私は、興味がないのに興味を示しているフリをするような、形ばかりの会話に辟易していたので、本当に興味があることしか話さない2人の姿勢に好感がもてた。

特にカットの美容師Kさんは、物静かでほとんど話をしないが、自然体で誠実そうな雰囲気が心地よく、私も必要以上に話をしなくていいので居心地が良かった。美容院でこんな感覚になるのは初めてだった。
今まで色々な美容院へ行ったことがあるが、いつも無理して話過ぎてしまい疲れて帰ることが多かった。

そんなこんなで、私の新たな美容生活?がスタートしたが、毎日、多毛解決カットで扱いやすくなったボブカットと脱白髪染めの遊び心あるカラーを楽しんでいる。

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