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本という媒体に関して考えているノート

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本という、狭そうで広い世界について思ったことを大雑把に
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2019年11月の記事一覧

沢木耕太郎『あなたがいる場所』:現実と人間は偶然であり気まぐれである。

沢木耕太郎『あなたがいる場所』:現実と人間は偶然であり気まぐれである。

沢木耕太郎の短編小説集『あなたがいる場所』を読んだ。僕は今、沢木の作品を意識的に多く読もうとしていて、この本はその中で偶然出会った一冊だ。

ノンフィクション作家である沢木耕太郎が書いた小説というのは、僕にとって特に目を引くものであった。僕にとって沢木は、文藝誌に、周りが小説ばかりの中ノンフィクションを載せるような根っからのノンフィクション作家だという意識があったからだ(もちろんそれは雑誌編集側の

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沢木耕太郎『凍』:クライマーには絶対なりたくないと思わせるほどのノンフィクション

沢木耕太郎『凍』:クライマーには絶対なりたくないと思わせるほどのノンフィクション

大学生になって初めてスラムダンクを読んだとき、「もし小学生の頃にスラムダンクを読んでいたら「バスケットマン」になっていたかもしれないな、」と思った。現に、多くのバスケボール選手たちはスラムダンクを(もしくは、黒バスやあひるの空を)読み、夢を大きく膨らませたはずだ。

しかし、この『凍』には、そのような優しさが一切と言っていいほどない。夢や憧れを凍えさせてしまう程の力があるように感じられる。この『凍

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