生前整理は終わらせてからにして欲しい(マジ)

昨日、祖母と二人でテレビを見ていたら、速報が入った。
『沖縄県知事 翁長氏死去 享年67』

「あら翁長さん!亡くなっちゃったの。・・・私と同じ癌だったのよねえ」
( えっ)
失礼なことに、知らなかった。しかも、手術をした時期も、祖母と同じ頃だったそうだ。
そのまま我が家は付けっ放しでNHKのニュースウォッチ9を見るので、そのまま翁長県知事死去についての詳しい報道が続いた。

これが伯母か私の母かがいたら速攻でチャンネルを変えてしまうところなのだが、私はできなかった。いや、しなかったのだ。
翁長さんの報道を見て祖母がどんな風に思うか、私には想像がつかなかった。わかりようもない。ものすごく落ち込むかもしれないし、案外気にしないかもしれない。ただ、こちらが過敏になってしまうのもかえってよくないのかなぁ、と随分能天気だった。伯母がいたら無神経だときっと怒られただろう。

「ああ、人って死ぬのね。私もさっさと死にたいわ」
そんなこと言わないで、とは私は言わない。そういう発想を、忘れてしまった。
「うーん、いいけど、どうせ死ぬなら朗らかな最後になるようにしたら」
「でもねぇ、この体で長生きしたって仕方ないわよ・・・」
「長生きは、別に頑張ってしなくていいと思うけど・・・」
「私も、こんな感じでもうすぐ死ぬのかしら」
テレビ画面は最近の翁長さんの、痛々しいほどに痩せこけた姿の映像が流される。
ちらっと、祖母の姿を見た。
一日中横になっていることが多いせいかふくよかだった太ももはすっかり細くなっていたし、体もだいぶスリムになった。

けれど・・・

「うーんおばあちゃん。前の職場のおじさまが言ってたんだけどね、同じだけ抗がん剤が効いて数値が下がったとしたら、おばあちゃんくらいの年齢の人はいいけど60くらいの若い人は安心できないのよ。細胞がまだ若いから」
「ああ、そうなの・・・若いから・・・ふふ」
(勿論翁長さんの場合はもっと様々な原因があったはずだ)

「それにさぁ・・・、こんなに食欲あるのに簡単にはいかないような気がするけど?」
午前中朝ごはんを食べた後ベッドでうつらうつらしながらピーセンをぽりぽり食べるほど食い意地はってるくせに、何を感傷的になっているのか。ほんと。
この前の抗がん剤の後から祖母はいやに食欲がある。元気な頃の祖母は自他共に認める大食漢(80代のくせにご飯を二杯食べていた)だったのが、このところおかずは焼き鳥ぐし半分、ご飯一口ががやっとだった。
それが徐々にではあるが、戻ってきている。人は食べられなくなったら、終わりだ、本当にそうなんだな、と最近痛感する。

後3年、何年生きてくれ、とは思わない。が、私には要求がある。
「えー!長生きはもういいわぁ・・・」
「いや、長く生きなくていいよ。でもね、おばあちゃん。
せめてあの四畳半の片付けが終わらせてからにして。
もう、許さないよ!あんな荷物残していったら・・・」

ちなみに先日の出土品のハイライトは残額が中途半端に残ったイオカード(払い戻し対応してくれた、さすがJR)、私の小学校の自由研究でトールペイントを祖母と一緒にした時の道具や材料の余り(高い画材はだめということでダイソーの絵の具を大量に買っていた)、高級麻雀牌などなど・・・である。まだ、半分手付かずなのだ。祖母がいなくなったらあの物量を一度に一気に処分なければならない。想像するだに恐ろしい。そういえばベランダにも戸棚が二つあるんだった・・・

「そっかぁ、そうですか・・・」
「そうよ。少なくとも今日はだめだわ」

なんだか、私もずいぶん図々しくなったかもしれない。
というより、最近センチメンタルな感情の海に溺れる余裕がなくなっただけかもしれない。

ここまで読んでいただき、本当にありがとうございます!