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余暇時間の過ごし方

あと数分でゴールデンウィークが終わる、そんな現実逃避がしたくなるような5/5(水)23時頃、私は余暇時間の過ごし方について思いを馳せていました。このテーマは2020年9月に落合陽一さんが取り扱い済みですが、コロナ禍での生活が1年を経過した今、改めて自分の日々のポートフォリオがどう変化したか振り返ってみたくなりました。



1.日本人の余暇時間(before COVOD-19)

余暇時間は研究ごとに定義が微妙に異なるため、注意が必要です。日本労働研究雑誌2012年8月号(No.625)掲載『日本人の余暇時間─ 長期的な視点から(黒田祥子)』では、下図のとおり、1日24時間から市場労働時間(仕事・通勤・通学)と家計生産時間(家事・介護・看護・育児)に費やす時間を差し引いたものとして定義されます。

男性の余暇時間は1976~2006年の30年間で、平日では1時間9分短くなっております。特にホワイトカラーでは、1941~2006年の65年間で1時間46分も余暇時間が短くなっております。そして、余暇時間が削られたことによってできた時間は、そのまま市場労働時間につぎ込まれてきました。

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1965年に松下電器(現パナソニック株式会社)が週休二日制の導入を開始しました。その後、他の企業にも浸透しはじめた1980年頃から、日本人の総労働時間は減少傾向にあります。しかし、先ほどのデータが示す通り、1日あたりの労働時間は増加しており、ずいぶんと働き方(=1日の過ごし方)も変わってきたということが読み取れます。


1週間が均された社会生活基本調査をもとにした国土交通白書発行データでは、1991~2001年の10年間で余暇時間は42分増加しております。先ほどのデータから平日5日・土日の週平均を取ると、類似する傾向が見られるので、ともにある程度信用できるデータだと個人的に思います。

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ただし、「ブラック企業」や「サービス残業」という言葉が世の中で定着し始めた2000年代後半からは、労働時間に関するデータの信用性がかなり低くなったのではないかと思います。そのため労働時間の推移データについては、2000年代後半をボーダーラインとして「それ以前」・「それ以降」と切り分け、連続的なものとして扱わないようにしております。どうしてそう思うかは、ご想像にお任せします。



2.日本人の余暇時間(with COVID-19)

さて、コロナ禍で在宅勤務がホワイトカラーに定着しはじめた結果、余暇時間にどんな影響を与えたのでしょうか。それを示すデータが2020年7月の未来投資会議の資料に掲載されました。

なんと結果としては2019年比で44分もの余暇時間が増加しておりました。合わせて、就労時間は1時間23分も削減されております。通勤や移動時間の消滅、テレカンの利活用により、業務効率が上昇したことが要因と考えられます。

ここで、先ほどの男性の平日の余暇時間の変化を思い返すと、1981年14.39時間だったのが2006年13.57時間に減少しています。すなわち25年間で49分間の余暇時間が削られてきたのですが、コロナ禍はその経年変化を一気にキャンセルしたことになります。

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就労時間が削減されたことについては共感できませんが、余暇時間が増加したことについては個人として共感できます。

首都圏にお住いのかたはおわかりかと思いますが、マジョリティは都心に位置するオフィスの近くに住んでおらず、少し離れた都外などに住んでおります。通勤に片道1時間かけ、乗車率200%の超絶満員電車に揺られて出社するという『異常』な状態が『正常』という地獄がbefore COVID-19の世の中でした。

この忌まわしき2時間が削減されたことは、皆さまの人生において非常に大きな意味を持つのではないでしょうか。スマホを触ることもままならない社内では、いくら時間を無駄にしまいとNewsPicksや日経電子版を読んでも、なかなか捗らないのが現実でした。この2時間がストレスフリーな環境で使えるようになったのです。


「そんなに通勤が辛いなら、無理してでも会社の近くに住めばいいじゃん。」というド正論が頭によぎったそこのあなた。下表のとおり、薄給の若手にはなかなか厳しい現実であることをご理解いただきたいです…。東京の家賃は本当に高すぎる。行き過ぎた都市化は格差拡大装置になります。こんな一面も日本の異常な持家信仰に繋がっているのでしょう。

生涯年収のポートフォリオの大部分を固定することになる住居購入は、「賃貸の家賃を払うならマンション買っちゃったほうが良くない?」みたいな安直な考えでしないほうがいいと私は思います(特に災害大国かつ人口減少社会の日本では)。

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3.自分の余暇時間の変遷

コロナ禍は当然私の生活リズムや時間の使い方にも影響を与えました。社会人1年目と社会人5年目(現在)の1日の時間割イメージは下図のとおりです。

平日では、勤務時間は変わっていないものの、在宅勤務の日は通勤時間を労働時間に充てられるため、アウトプットの総量としては大きくなっております。また、身体的疲労も少なくて済むため、就労後に1時間ほど学習に充てることもできております。

休日では、飲食店や娯楽施設の夜間短縮営業のため、外出したとしても帰宅時間が早まります。また、平日の身体的疲労の休日繰り越しも少なくなるため、極端に平日より睡眠時間が長くなることも減っております。その分、読書や調べものに充てられる時間が増加して、娯楽的な楽しみが減るなかでも何とか充実感のある日々を送れております。

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COVID-19は、今ある格差をさらに拡大させる方向に圧力を加える傾向があります。米国で明らかになった貧富の差と感染時の死亡率の相関も然り。実体経済が停止して行き場を失った余剰資金が、株式市場に流れ込むことにより引き起こされている株価高騰も然り。


余暇時間の増加についても、「時間を有効活用できる人」と、「ただ世の中に溢れるヒマ潰しコンテンツを消費するだけに時間を費やす人」との格差を拡大することに繋がります。自分の持ち時間は有限という、当然だけど忘れがちな前提条件を改めて胸に刻み、その貴重な時間の投資先を吟味し続けたいと思います。







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