見出し画像

業界分析(スーパーゼネコン編)

今年も帰省できないGWを過ごすことになるとは。でも帰省しないことによって、こういう普段できないことに時間を割けてしまっています。来年はさすがに自由な世界線で長期休暇を過ごしたいですね。

さて、私は今年の4月から異動となり、これまで以上に建設業界に身を置く立場となりました。まだまだ業界の知識がないということで、担当するお会社様や関連企業様のIRや中期経営計画に目を通しているのですが、業界の全体が見えていない今、手触り感がなかなか得られておりません。

そこで今回は手触り感のある情報収集に向けた第一歩として、インターネットにも意外とまとめられていない、スーパーゼネコン大手5社の基本的なKPIを簡単に比較しようと思います。そろそろ2020年度の決算が出揃い始めようとしているということもあり、コロナ影響前までの状況を復習する良い機会になります。

ちなみに大手5社とは、株式会社大林組・鹿島建設株式会社・大成建設株式会社・清水建設株式会社・株式会社竹中工務店を示します。この5社は何れも単体での売上高が1兆円を超える大企業です(参考:6位の株式会社長谷工コーポレーションが8000億円、7位以下の中堅ゼネコンと呼ばれる企業が6000億円以下)。

コロナ影響前の2015年度と2019年度の決算から、だいたい共通となっているKPIを抜き出してまとめたのが以下の表です。覚え書きのために、以降で特徴をまとめていきます。

画像1

※1:負債資本倍率(Debt Equity Ratio)。企業の借金である有利子負債が返済義務のない自己資本(株主資本)の何倍かを示す。/※2:自己資本利益率(Return on Equity)。自己資本(純資産)に対してどれだけの利益が生み出されたのかを示す。/※3:清水建設のみ単体での海外比率。その他は連結での海外比率。

2020年3月期の上場ゼネコン55社の売上高合計が約13兆円であることを踏まえると、大林組・鹿島建設・大成建設・清水建設だけで40%ほどを占めており、業界での各社の存在感の大きさがわかります(竹中工務店は、同族会社であり、現状は財務内容も良好なため、市場から資金調達する必要がなく上場しておりません)。


1.単体売上高・単体営業利益

建築分野とそれ以外(土木・不動産など)で構成される売上高を比較したのが下図です。竹中工務店を除くと、ザックリとした売上ポートフォリオはどのスーパーゼネコンも70%が建築分野、30%が土木分野などとなっております。

画像2

営業利益について着目すると、大成建設が10%超の高水準を叩き出していることを除くと、業界としては7~8%がベースとなっております。同じ建設業界のB2Bメーカーの利益率が5%ほどであることを考えると、個人的には納得感のある数字ではあります。

営業利益が細かく仕分けされている決算は少なかったのですが、建築分野は土木分野より比較的に利益が出にくい傾向が見られます。そのため売上高のほとんどが建築分野で構成される竹中工務店のみ、他社より営業利益率が低めになっていると考えられます。

画像3

建築分野での売上高をピックアップして比較してもわかるように、その年々で微妙な差はあるもののスーパーゼネコンの中では、パワーバランスは拮抗しているように見えます。

画像4


2.ROE

企業が自己資本をいかに効率的に運用して利益を生み出したかを表す指標であるROE(自己資本利益率)については、竹中工務店のみが10%を割っていることを除くと、だいたい12%がベースとなっているように見えます。

竹中工務店については、先に述べたように上場しておらず、企業としてROEが他社と比較して重要なKPIに位置付けられていないという見方もできるかと思います。

画像5


3.時価総額

2021年4月30日時点での株価・時価総額・PER(株価収益率)・配当利回りをまとめたのが下図です。繰り返しとなりますが、竹中工務店については上場していないためデータがございません。

売上高の規模が同水準であることから、時価総額としては大きな差は出ていないと見ております。しかし、そのなかでも大成建設が頭一つ抜けているのは、他社よりも利益を出せる体質にあることが要因と考えられます。その実体についても深堀してみたいですが、それはまたの機会に…。

株価の推移も4社並べると非常に相関があることがわかります。どこか一社が独り勝ちするのでなく、売上高のポートフォリオが似通っている限り、浮き沈みのタイミングも似たものになることが見て取れます。

画像6


4.その他

IRに目を通していると、株主からはD/Eレシオについても下げることを求められていることが見て取れました。実際、データがあった大林組・鹿島建設・清水建設について、たった4年間でその倍率が大きく改善(低下)しておりました。

海外売上比率については、各社バラつきがある数少ないKPIとなっておりました。大林組・鹿島建設については20~25%ほどが海外での売上となっており、縮小して必然的に激化している国内市場の不安を和らげる一つの要素となっております。国内市場への依存度が高い他社についても、今後の海外市場攻略の戦略に注目です。




これを踏まえて2020年度の決算や、中期経営計画の資料に目を通すと細かい内容と全体とを行き来しながら理解できるかと思います。自分が欲しい情報は意外と探すのは難しいので、自ら手を動かして編集しないといけないことも多いですね…。建設業界のことはまだまだわからないことだらけなので、日々勉強です…。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?