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グレース・ホッパー伝記絵本に竜と妖精がでてきた【読書感想文】

たとえ金貨の山の上に寝てなくても、ドラゴンに出会えて嬉しいときがあるのです。

この作品を読みました

ローリー・ウォールマークケイティ・ウー 絵  長友恵子 訳 『グレース・ホッパー プログラミングの女王』岩崎書店, 2019, 原著2017

プログラミングに画期的な変化をもたらした人物としてグレース・ホッパーを紹介する絵本で総ルビ。後述のように、ふだん絵本を読まない人にも訴えかけるところがある本です。

文のローリー・ウォールマークはディファレンス・エンジンでお馴染み(?)エイダ・バイロン・ラヴレスの本を、絵のケイティ・ウーはワンダーウーマンの制作にまつわる絵本を出している。

構成

カットバックが一回入る構成で、描いてある順番は以下の通り。

アメージング・グレースことグレース・ホッパーの紹介をしたあとで扉がきて、海軍の仕事をしているときプログラミングを変える画期的なアイデアが浮かんだ場面がくる。

女性が海軍の仕事をすることに説明がないのが、いかにも2010年代の出版物といった感じです(国によるのでしょうが)。

ここでカットバック。時計をバラしたり組み立てたりした幼少期から大学、そして大学院に進学、女性の院生の少なさにもめげず、母校の大学で数学教師となるまでが描かれる。

やがて、アメリカが第二次世界大戦に参戦し、海軍に志願するも…。

巻末には年表があって、ホッパーの経歴とコンピュータとプログラムについての主要な出来事を一望できる。

感想

後ろから9ページ目(ページ番号無しかつ、絵本の頁の数え方がわからないので間違っていたらすみません)によると、ホッパーは「おちついて新しいアイデアを考えたいとき(中略)妖精やドラゴン、あたまの中にしかいない生き物の絵」を描いていたそうだ。

この逸話がうれしかった。

(「作者」にこだわった読みをしている自覚はあるものの)無数にあるだろうグレース・ホッパーについての情報の中から、絵のエピソードを作者たちが選んだのは、こういうことが言いたいからかもしれない。

実用(プログラミング)と空想(ドラゴン、妖精)は両立する。

プログラミングを実用の二文字で片付けるべきではないのでしょうが、(大まかな意味での)ファンタジー読みとして、この逸話にはとても勇気づけられました。読めてよかったです。

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