見出し画像

もう生理の痛みは我慢しない〜病院とのつきあい方|宋美玄&前田エマ対談 2/3

ときにハードルが高いと感じてしまう婦人科やレディースクリニック。もっと気軽に通えたらいいのに……。病院選びや生理痛への対処法について、前田エマさんの疑問やお悩みに宋美玄先生が詳しく答えます。どこに行っていいかわからない。ちょっとこわいーー婦人科やレディースクリニックに対して少しハードルが高いと感じる人もいるかもしれません。しかしたとえ生理痛があっても「痛いのはいつものこと」とやり過ごしていると、実は思わぬ病気が潜んでいる可能性もあるのだとか。我慢は禁物。病院選びや生理痛について、前田エマさんの疑問やお悩みに宋美玄先生が詳しく答えます。 

文/アケミン 写真/高見知香

宋美玄 (そん みひょん)
産婦人科専門医・医学博士・FMF認定超音波医。2017年に「丸の内の森レディースクリニック」を開業。『産婦人科医宋美玄先生が娘に伝えたい 性の話』 (小学館)ほか著書多数

前田エマ(まえだ えま)
ファッションモデル。東京造形大学在学中からモデル、エッセイ、写真、ペインティングなど幅広い分野で活動。6月に初の小説集『動物になる日』(ミシマ社)を上梓

みんな、婦人科に行ってますか?

前田 私、高校生のときに生理が1か月ぐらい続いて、婦人科に行ったことがあるんです。そのときピルを処方してもらったのですが、副作用なのか吐き気がしてしまったことがあるんです。

 えー、それは大変でしたね。吐き気はそれなりの頻度で起こる副作用ですが、飲み始めで治ることが多いです。合うピルが見つかればよかったですね。

前田 当時はSNSもここまで発達していなかったし、自分にも知識がなさすぎて、お医者さんに行くのも薬を飲むのも、なにをするにも怖かった記憶があります。

それ以来、産婦人科やレディースクリニックって、どの病院に行っていいか分からなかったり、なんとなくハードルが上がってしまって……。先生のクリニックには、どんな相談で来院する方が多いですか?

 妊娠や出産はもちろんのこと、生理痛、PMS、腹痛やおりものについての相談やデリケートゾーンのかゆみなどの違和感に気づいて来院される方もいますね。あとは性感染症やアフターピルなど避妊の相談で来る方もいらっしゃいます。また中高年になると更年期の相談も増えてきますね。

「いつもの痛み」それって普通じゃないかも

前田 生理痛についても相談できるんですね。私、生理はすっごいつらいわけじゃないんですけど、月によっては初日がしんどくて。

 それは私のなかでは「すっごいつらい」にあたりますね(笑)。生理って他の人と比べにくいし、みんなそれぞれに「自分の生理は普通」と思っているんですよ。ただ気になる痛みは、病気と密接にかかわっていることがあるので、婦人科で相談してみてください。特に多いのは「子宮内膜症」です。

前田 それってどんな病気なんですか?

 子宮内膜は、子宮の中心にあって、赤ちゃんが宿るために毎月準備してはリセットされるところなんです。そして毎月やってくる生理の血は子宮内膜が剥がれたもの。これが腟のほうに流れていって、体外に出ていってくれたら問題ないのだけど、一定数、卵管をつたって卵巣に”逆流”してしまうんですよ。

前田 え、逆流!?

 この逆流そのものは珍しいことではなく、生理がある女性の9割に起こると言われています。ただ生理の回数が多い人のほうが、おのずと逆流するリスクも高まるんですよ。

そして逆流してしまうと、卵巣や卵管、腹膜、子宮と直腸のあいだにあるくぼみなどに剥がれた子宮内膜が迷い込んでしまうことも。それによって、子宮以外の場所で子宮内膜に似た組織のできる現象が起こる、これが子宮内膜症なんです。

およそ10人にひとりは子宮内膜症

前田 子宮じゃないところに、子宮内膜ができてしまうんですね。

 内膜から出た血液が、まるで接着剤のように組織と組織をくっつけてしまうことも。そうすると癒着や炎症が起こって生理痛もひどくなってしまうんです。子宮内膜症は月経がある女性の約1割に発症すると言われています。

前田 およそ10人にひとりは子宮内膜症ということですね。

 そうです、結構多いでしょ? 20~40代に多くみられますが、10代後半からも起こる病気です。痛み止めを飲まないと耐えられないほどの痛みが、生理のたびに毎回起こるなら子宮内膜症を疑ってもよいですね。

特に卵巣の中に子宮内膜症ができて古い血液がたまっていく状態を「卵巣チョコレート嚢胞(のうほう)」といいます。卵巣チョコレート嚢胞があると、頻度は少ないものの「卵巣がん」が発生する可能性があるため、定期的なチェックが必要になります。

出典『女医が教えるオトナの性教育 今さら聞けないセックス・生理・これからのこと』
(宋美玄 著)より

「痛いのは我慢」そんな根性論はもう終わり

前田 私も「毎月しんどいのが当たり前なのかな〜」と思うこともあるのですが、痛み止めを飲むのが「当たり前」じゃないんですね。

 生理痛って昔は「この痛みに耐えないと陣痛に耐えられなくなる」など根性論で語られる時代もありましたが、そんなことはありませんから。しかも子宮内膜症は、不妊の原因にもなりえるんです。

前田 ええー! もう痛みを我慢している場合じゃないっ!

 そうなんですよっ!(力説) 鎮痛剤を飲んで、我慢して我慢して、いざ検診を受けたら子宮内膜症がかなり進行していた……なんて例も少なくありませんから。痛みは病気のバロメーター、「生理痛があるのはいつものこと」「女性だから、健康の証だから」と片付けないこと。生理痛は我慢せずにかかりつけの婦人科に相談に行ってもらいたいですね。

前田 生理痛がひどかったら迷わずお医者さんへGO!ですね。

第3回に続く

(宋美玄&前田エマ 対談:記事リンク一覧)
【1】どう話す?からだと性のこと
【2】もう生理の痛みは我慢しない〜病院とのつきあい方
【3】知っておきたい!生理をケアする処方箋