未来の仲間をつくる「エンジニアリング教育」参加のススメ

 はじめまして。株式会社リバネス 製造開発事業部 部長の藤田大悟です。3月からスタートしたnoteマガジン[研究開発型ベンチャーに必要な「製造」の考え方]では、ものづくりベンチャーが製造において陥りやすい課題やその解決方法について発信しています。

今回は、未来の仲間を育てるエンジニアリング教育について、ご紹介したいと思います。この記事をみて、興味を持った方は是非、一緒に子ども向けの教育もできればと思います。

リバネスが事業部として「製造開発」を始めたのは2021年5月ですが、実は14年前から「エンジニアリング教育」を通じて「ものづくり」を子どもたちと共にしてきていました。エンジニアリングとは、世の中に役に立つ技術を生み出していくことです。そのような挑戦をできる子どもをどのように育てていくべきか、大学にならないと、ロボットや機械などを作ることができないのか。僕自身、好きを究めれば小学生からでも挑戦できるのではないかと考えました。そのような仮説のもと色々試行錯誤を繰り返した結果、ミッションとカリキュラムを準備すれば小学生からでも大人顔負けのものづくりができることが14年で実証できました。例えば、自ら安価な点字プリンタを開発した小学生や、自身で3Dプリンタを用いて病院向けのフェイスシールドを開発・寄付するような活動を行っている中学生などが生まれています。

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情熱を持って楽しく学ぶ

リバネスはもともと未来の研究者仲間を集めるために、2002年に教育事業からスタートした会社です。開発してきた科学教育プログラムは500くらいありますが、設立当初からいた私は、その半分以上の開発に関わってきました。

 生み出した教育プログラムで扱うテーマは、乳酸菌からDNA抽出、ラジオやコピー機の原理、モデルロケットにいたるまで多種多様。その中で私にとって大切にし続けてきたのが「ものづくり」のテーマです。

 大学院で研究していたテーマはバイオ系だったものの、実は私は物心ついた頃からものづくりが大好き。小学校3年生から電子工作の通信講座を受けさせてもらっていたほどです。また、高校時代は理科部でアマチュア無線(2級)をしたりと、常に身近にものづくりがありました。(写真は高校時代部活動で自作したアンテナの前で自作の電光掲示板と共に撮影)

高校生時代の写真

そんな背景もあり、複数のメーカーの方から相談を受けた

日本を支える『ものづくり』ができる人材が少なくなっているのではないか
特にエンジニアリングの考え方を持つ人の少ないのではないか

という次世代育成に関する課題はまさに自分ごとでもありました。

この課題に立ち向かうため、メーカーの方々と徹底的に議論を重ねました。
そうしてできたのがエンジニアリング教育プログラムです。

実際に、ロボットエンジニアやメーカーのエンジニアの方にものづくりに携わっている理由をヒアリングしたところ、みなさん異口同音に「想像したものがその通りに動いたり、形になるのが面白い」と「誰かのためにものづくりをするやりがいがある」というのです。サイエンスの実験教室はどちらかというと「真理の探究」、「世の中に誰も知らないことを発見する喜び」というミッション性に軸があるのですが、エンジニアリングは「誰かの役に立つために」「想像を形にする」という軸であるということに気づきました。

たとえば、2011年に日本大学の理工学部と一緒に立ち上げた「宇宙エレベーター」の開発プロジェクトでは、中高生が大学生にアドバイスをもらいながら、LEGOブロックを活用し宇宙基地に人(ミニフィグ)を送り込むための最適な機構開発に挑戦しました。

宇宙エレベーター

上記のYoutubeは日本大学芸術学部の学生と小学生が取材して作成

日鉄エンジニアリングさんとは、「先端情熱ーMissionE」というエンジニアリング教育を社員を巻き込んで中高生向けプログラムを実施しています。海洋発電所を設置するための浮体の構造を開発することを目的とする「エネルギーアイランドプロジェクト」、2030年の冬季五輪に向けた建築物を開発する「スペースアーキテクチャープロジェクト」、排熱利用を目指す「エコロジープラントプロジェクト」の3つのワクワクするミッションを提示して、開発に挑戦してもらっています。

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鹿児島県肝付町とは中高生が人工衛星の基本設計作成を目指した「KIMOTSUKI SPACE CAMP」を実施しました。リアルに宇宙へ人工衛星を打ち上げている内之浦宇宙空間観測所も活用して、計画立案を行い、町長へのプレゼンテーションを行うMissionです。

 このように、リバネスが行うエンジニアリング教育のプログラムは”リアルな課題”をテーマにしてワクワクするミッションを提示しています。生徒たちは、そのMissionを成し遂げるために試行錯誤を楽しく繰り返します。そのプロセス自体がとても深い学びになっていくのです。

ものづくりを細かいカリキュラムにしてみたら、大人顔負けの開発ができた

ワクワクするミッションだけでは「企画倒れ」にもなりかねません。
実際にプロジェクトを推進し、形にしていくためには、ある程度の知識が必要です。

現状把握・計算・設計・加工・機構・部材選定・電子工作・制御 などなど
通常の学校教育ではなかなか触れられないのが現状です。

当然、必要に迫られ、自ら調べ、学び、実践していく生徒も存在します。
しかし、全ての生徒がそのようにできるわけではありません。

そこで必要なのが、どのように順序立てて考えていくか、どんなスキルセットが必要かなどの体系だったカリキュラムです。

例えば、リバネスが運営しているNEST LABのロボティクス専攻では、4年間でエンジニアリングの基礎が学べます。

1年目は素材と機構についての基礎を学び、2年目に電子工作や、3Dモデリング、プログラミングを学び、2年間で一通りのものづくりの知識を手に入れます。その上で、3年目のマスターコースでは、ミッションを講師側から提示し、それについて、仮説検証を繰り返す「エンジニアリング」を体験。最後のドクターコースでは、自ら「ミッション」を定め、それに対して今まで学んだことを総動員して、ロボット開発に励むことができるカリキュラムになっています。

ロボティクス事例

実際カリキュラムを学んだ生徒たちは、醤油運びロボットや、電子トロンボーンなど、さまざまな開発に挑戦しました。

世界初電子トロンボーン

他の例では、京急電鉄さんと大田区で行った「水中ドローンワークショップ」でも、「神田川の河川浄化に向けて観測可能な水中ドローンを開発する」をミッションにエンジニアリングのプロセスを学ぶプログラムを実施しました。

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ものづくりを学ぶ流れは、世代に関係なく共通

いくつかの教育プログラムについて紹介しました。さらっと書きましたが14年間かけて生み出してきたものです。ずいぶん長い期間だったと改めて感じます。
このようなエンジニアリング教育は教育現場やメーカーの皆様からの好評価に支えられ、続々と新しいプログラムを生み出すことができました。

実はこれらのプログラムをかかりきりで作っていたわけではありません。
同時並行的に、「世界を変えるような、ものづくりベンチャーの支援」や「日本中の町工場やメーカーとのものづくりの仕事」をたくさん行い、どのようなプロセスを経て、革新的なモノが生み出されていくかを学んできました。そして、圧倒的な行動力で世界を変える「ものづくりベンチャー」の姿から、その活動の根幹になるミッションの重要性を肌で感じました。

上記の学びのプロセスは、前回、長が紹介した『製造について考えはじめたベンチャーが、最初に知るべき鉄則(その2:要望の整理とコミュニケーションのベースをつくる)』で話していることそのままです。

これらの経験を基に製造に課題を抱えている、ベンチャー企業や大手の新規事業を手がけている方々にも、そのプロセス学んでいただきながら共に伴走する「プロトタイピングラボ」の設立につながっているのです。


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2002年から教育プログラムを生み出してきたリバネスだからできる「ものづくり」の学びを子どもから大人にも学んでもらいながら、世の中の課題解決をする「モノ」を生み出し続けられる世界を作っていきたいと思います。子どもたちにエンジニアリングを伝えることで、自らの「エンジニアリング力」を学び直し、高めるきっかけにもなると思いますので一緒に教育プログラムを作りたいベンチャーや企業の方がおりましたら、ぜひお声がけください。一緒に仲間を作っていきましょう。
(リバネス:藤田)




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