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製造について考えはじめたベンチャーが、最初に知るべき鉄則(その2:要望の整理とコミュニケーションのベースをつくる)

研究開発型ベンチャーが製造に向き合わないといけなくなった。そんなときに役立つ「製造の教養」を紹介していきます。

前回のnoteでは、「試作」や「プロトタイプ」、「量産試作」などの製造にまつわる用語を整理しました。

製造はベンチャーだけでは完結できず、外部のパートナーを巻き込む必要があります。「研究開発型ベンチャー」と「製造のプロ」。当然、両者の背景知識や行動様式は異なります。意思疎通をスムーズにし、すれ違いを防ぐためにも用語の定義は重要です。


ともすると、外部への依頼やコミュニケーションは「コストがかかる、大変なこと」と思われることもあります。
しかし、自分たちの持っていない膨大な知識やスキル、加工装置などのアセットを活用できるようになる、と考えると頑張る価値は十分にあると思えるのではないでしょうか。

そういった面を踏まえて、今回は「実際にどうやって製造を進めるためのコミュニケーションをとっていくのか」について考えてみましょう。

ざっくりとしたアクションとしては

①作りたいものや、やりたいことの整理
②アプローチ先の選定
③具体的な声かけ及び、アクション

がありますが、このnoteでは①をメインにとりあげます。
(実際のところ②③も並行的に動いていくのが現実的ではあります。)

特にコロナ禍の今、イベントや展示会での対面でのコミュニケーションや直接の訪問などが難しくなっています。オンラインで物事を推進していくためには、情報を事前に的確に整理しておくことは、普段以上に役立つ考え方かもしれません。

まずは「何のために製造するのかを明らかにする」

何かを作らないといけないとき、自分自身で全てを行うのであれば、やり方は自由です。まず手を動かしてみるというのも、良いと思います。

しかし、「ベンチャーとして事業を進める」ときや「自分で作るには手に負えないもの作る」ときには他者の助けが必要です。

そのために、まずやるべきことは、何のために製造するのかを明らかにすることです。

もう少し詳しくいうと、

限られた時間と資金の中で
自分たちが次のステップに進むために何が必要なのかを整理する
少なくとも必要最低限のものを作る

ことが必要です。

「顧客が本当に必要だったもの」:作りたい側の意図はなかなか伝わらない

ここでちょっとした寓話を紹介させてください。
IT業界でよく使われている「顧客が本当に必要だったもの」という話です。
想像以上に顧客と製造する側では齟齬が生じやすいということを紹介しています。(この話の大元は1989年ごろの話らしいです:参考

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「顧客が本当に必要だったもの」を実現するのはとても難しい。実際、この寓話が示す罠にハマって「失敗を達成」したり、デスマーチに陥るプロジェクトは後を絶たない。
上記のイラストならびにコメントはニコニコ大百科 「顧客が本当に必要だったもの」の項 より引用

ベンチャーのやりたいことを製造で実現するための整理

このような事態に陥らないようにするために、ベンチャー側の要望をきちんと、「製造のプロ」側に適切に伝える必要があります。そのために、要望、要求、要件、仕様、設計を整理してコミュニケーションしていくことが重要です。

非常に大切なポイントなので用語も下記に整理してみます。

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主に1、2がベンチャーが考えて、整理しないといけない項目です。
しかし、3、4もベンチャーと製造側がコミュニケーションしながら決めなくてはなりません。


「 要望、要求、要件、仕様、設計。プロジェクトにおいてはこうした別々の階層にある話が、ごちゃまぜになって始まり、互いに影響を与えながら進むものです。」
—『予定通り進まないプロジェクトの進め方』前田考歩, 後藤洋平著

という言葉にもある通り

研究開発型ベンチャーにとって製造は、展示用のモックアップであれ、原理検証のプロトタイプを作るのであれ、そして量産試作や量産を試みる際も基本的な考え方の型は同じです。

プロフェッショナルと共に考え、もがきながら進めていくというのが実態に近いかもしれません。

そして、その「もがき始めの一歩目」は、
自分が何をしたいのかを整理して、上手く伝えられるようにすることです。

この時点で大分長くなったので、具体的な要望・要求の整理の仕方に関しては、また次回書きます。

次回に続く

(リバネス:長)

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