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ルーツの話 〜ニューヨーク回想記①〜

2019年9月からニューヨークへ渡り、2020年8月に帰国。そのあと慌ただしい日々を過ごし、最近になってようやく渡米期間を振り返ることができている。この衰えた脳ではすっかり記憶も薄らいできたような気がするけど、回想できることを書き残しておきます。

ルーツについて

私は日本人という明快なルーツがあるんだけど、アメリカ、特にニューヨークにはいろんなルーツをもつ人がいる。

おじいちゃんが日本人で、おばあちゃんはガーナ人、お父さんはその子どもで、お母さんはフランス人……みたいな話になると、本人のルーツは一言で説明するのが大変な感じになる。

これが日本だと「で、結局おまえはナニ人や!」と明確にさせようとする空気がある気がする。日本人とアフリカ系のミックスの知人は「日本で育ち日本語が母国語なのに、見た目のせいで同じ仲間に入れてもらえず、かといってアフリカには行ったことすらないし言葉も話せないので自分の意識はアフリカには帰属しておらず、自分がナニ人だか分からなくなって大変苦しい思いをした」と言っていた。

ニューヨークでは「どこから来たの」とか「どのくらい住んでるの」という質問はあるけど「ナニ人ですか」という質問は無かった。

私が住んでいたブルックリンのフラットブッシュというエリアは、カリブ系の黒人が多く住んでいる。

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カリブ系というとめっちゃ幅広いけど、フラットブッシュに多かったのはジャマイカ、ハイチ、ドミニカ共和国。次いでキューバ、プエルトリコなど。

この街では英語以外のいろんな言葉が聞ける(とは言っても聞き分けられないのだけど)。ジャマイカン同士はパトワ語で話すし、ドミニカ共和国やプエルトリコはスペイン語で話す人も。ハイチはハイチ語で。

すっごく当たり前のことなんだけど、一言に「黒人」って言ってもいろんな人がいる。

それこそルーツを辿ればアフリカなのかもしれないけど、カリブ系の人たちの中には自らを「アフリカン・アメリカン」ではなく「カリビアン・アメリカン」だと自称する人もいる。私は会ったことはないけど、「ジャマイカン・アメリカン」や「ドミニカン・アメリカン」だという人もいるだろうし、特定のルーツを自認せず「なんだってええやん」という人だっているだろう。

自らのアイデンティティをどのように捉えているか、それは本人の意識の話であって外からガチャガチャ言えることじゃない。

だから人の出自について質問をするとしたら「どこから来たの?」「どこの出身?」というふうな聞き方になるのが自然なんだろう。

人のルーツを単一の国や人種と結びつけて「ナニ人」という枠組みで捉えようとする風潮は現状にそぐわないよなと感じる。日本には古くから「ガイジン」という呼び方が広く浸透していて、未だにテレビやラジオで耳にすることもあるけれど、この言葉が生きているからこそ「ナニ人」の枠組みから抜け出すことが難しいのかもしれない。

私はこの言葉自体は使わなくなって久しいけれど、でも人のルーツに関してはニューヨークに行くまではかなり無自覚だった。

そういえばブルックリンで映画監督のスパイク・リーに偶然会ったときも、「日本から来たのか?」と質問され、「日本人か?」とは聞かれなかった。

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