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12のタレント。『シン・ニホン』アンバサダーに就任した人たち

書籍の「アンバサダー」という試み

今年の2月にNewsPicksパブリッシングから刊行された『シン・ニホン』(安宅和人著)は、好評で早くも電子版を含め12万部を突破したという。この壮大なコンテンツを書き上げた著者の安宅さんの知力、体力、熱量の賜物である。

制作サイドは僕がプロデューサーとして、NewsPicksパブリッシング編集長の井上慎平さんが自ら編集を担った。僕と井上さんは年齢もキャラクターも、得意技もまったく似通っていないが、成し遂げたいことは似ていた。それは「『シン・ニホン』を売るのがゴールでない」ということだ。「シン・ニホン」の世界観をどう広められるか。僕らはそれを編集段階からもずっと話していた。

そんな思いの中で生まれたのが「アンバサダー制度」である。本書に強く共感してくれた人を募り、自ら「読書会」などを開催する活動をしてもらう。強烈な書籍のメッセージを薄く多くの人に伝えるよりも、濃いままで「共感した人を通して」伝えていく方が結果的に社会に広がるのではないかと考えた。
アンバサダーには、そのための武器が必要ではないか。それは『シン・ニホン』を深く理解すること、そして読書会などの議論する場の質を高めるファシリテーションも力を身につけること。それらを学んでもらう場として6週間にわたる「養成講座」を開催することにした。驚いたことに定員は10名だったところに約100名ほどが応募された。4月から開始した講座は先日無事に終了し、本日12名のアンバサダーが誕生した。それについては、編集長の井上さんが熱くブログで語っている。

どのアンバサダーも実に素晴らしい魅力のある方々だ。そして個性的で12のタレントが集まった。思えば同じ本を読んで高い共感を得たという共通点のある「同質的」な人たちの集まりである。人種差別など世界的な課題である「ダイバーシティ」から見ると近しい人の集まりでしかないが、それでも、この12人は多様な個性もち一人ひとり違う。それは、このアンバサダーというチームが互いに尊重し、お互いがお互いの個性を際立たせたからではないかと思う。

その意味でも素晴らしい方々アンバサダーになってもらえた。12人のプロフィールはNewsPicksパブリッシングの記事でも紹介されているが、勝手ながら僕からも紹介させてもらいたい。アンバサダーの方々のブログも一緒に読んでもらえれば嬉しい。

#1福岡の人情家はムードメーカー :池内学さん(池ちゃん)

「池ちゃん」は福岡からの参加であり、マウンティングとは無縁の人であった。聞かれもしないのに自ら自分のダメさを披露する。それによってアンバサダーのチームがどれほどの心理的安全性が生まれたか計り知れない。講座前には「耳の体操」を披露して緊張感を和らげたり、講座中は他人の意見を応援するかのような反応を繰り返したりの大活躍。「地方を活性化したい」という野望を抱く人情家でもあり、多くの人を巻き込むキャラクターである。

#2ボストンの切り込み隊長 :稲葉佳奈さん(かな)

「さあ、どなたか発言してください」というと、ほぼ最初に手を上げるのが「かな」さんだった。自主練をやろうと言い出しのもかなさん。講座の終了後に気づきをグループに共有し出しのもかなさん。切り込み隊長の如く、失敗を恐れず先例をつくる。誰からも愛されるそのキャラと相まって、かなさんによって、このグループにはたくさんの「良い習慣」が出来上がった。ボストンに在住し、『シン・ニホン』は日本からわざわざ紙版を送ってもらって読んだという。ブログはこちら。

#3 唯一の大学生は安宅ゼミ生:五十右瑛士さん(イミギ)

この講座にはなんと、慶應大学S F Cで現役の安宅ゼミ生も参加してくれた。「イミギ」君である。安宅さんが主宰する「風の谷」プロジェクトでは僕の同僚でもある。普段、「風の谷」では大人しいのでアンバサダーへの参加は驚いた。社会人に交じって「きついのを覚悟してきた」という意気込み。そして、絶えず議論でバリューを出そうと虎視淡々と発言の機会を伺い、皆を驚かすヒットも繰り出した。同世代に伝えたい、行動に移す人の場を作りたいという思いを自ら実践した。

#4 女川復興の立役者のひとり:厨勝義さん(くりやん)

東日本大震災後にボランティアとして早々に現地に入る。その活動は気がつけば数年が経ち、産業復興の一翼を自分で担おうと、宮城県女川町で地元の素材を生かした石鹸づくりを始めた「くりやん」さん。地方の課題がそのまま書かれていて『シン・ニホン』に魅了されたという。講座ではその不器用ながら自由奔放なスタイルで、他のメンバーに刺激を与え続けた。アクションにつながる「読書に終わらない読書会」を開きたいという意気込みは、まさにくりやんの生き様そのものである。

#5異才の価値を教えてくれる異才 :佐藤 克則(かっちゃん)

その人がひとりいるだけでチームや「場」の雰囲気がガラリと変わるということがある。今回のアンバサダーの中で、間違いなくその人は「かっちゃん」であった。口数が少なく黙っている時間が多い。それなのに、かっちゃんの一言が、チームの視野をあっという間に広げることが何度もあった。「自分は言葉にするのに時間がかかる」というが、他人に左右されず常に考えている「かっちゃん」の存在は、雄弁なメンバーが多い中で際立っていた。群馬出身で九州などにも滞在し、現在は鎌倉に拠点を構え地元の課題に向き合う。

#6コミュニティ運営を極めるクールなまとめ役 :鈴木奈津美さん(なつみっくす)

小学校の頃、誰からも学級委員にふさわしいと思われ、実際に選ばれると淡々といい仕事をしてくれる。そんな女の子だったのではないか思われるのが「なつみっくす」さんだ。安定感抜群で、集中力を切らさずコンスタントにチームに貢献する姿は「サイレント・リーダー」そのもの。外資系I T企業に勤める傍ら、190人にも及ぶ「母親アップデートコミュニティ」を主宰する。その実績と知見をチームに振りまいてくれる存在であった。ブログはこちら。

#7「いじめ」問題に取り組み戦略家:竹之下倫志さん(テッド)

大手メーカーや外資系会計ファームなどでの実績とキャリアを経て、子供の「いじめ」問題に取り組む「テッド」さん。その優しい眼差しと熟考される姿勢はまさに「Cool Head, but Warm Heart」。寡黙な人かと思えば、一転、早口で持論を展開することも。いずれにしろ常に考えぬいてからの発言は、その厳選された言葉によりチームの多くの人に刺さる。ファシリテーターとしては、困難な状況を、一点突破の戦略で切り抜ける策略家の一面も見せた。教育関係者に『シン・ニホン』を広げたいという。

#8日本を代表する 「空気を読まない」通訳者:田中慶子さん(けいこ)

デビッド・ベッカム、ダライ・ラマ14世、はたまた安倍総理などを担当した日本を代表する通訳者のひとりもアンバサダーに参加された。「けいこ」さんは通訳の現場で日本人が自らの国を卑下するような発言が多いのに愕然とするという。そんな中『シン・ニホン』に書かれていた「日本の伸びしろ」に我が意を得る。講座でのけいこさんは、空気を読まない存在として大活躍(笑)。素で感想を口にする姿に他のメンバーも、「自由に喋っていいんだ」と、フランクな空気を作った。ブログはこちら。

#9世界を知る 「大地」のような存在:田中晴美さん(はるみ)

年配者の振る舞いでチームの雰囲気はガラリと変わってしまう。『シン・ニホン』的にいうと、じゃまおじ・じゃまおばという存在が若者の眼を摘んでしまう。その意味で年配者のロールモデルと言えるのが「はるみ」さんだ。女性に対して少し失礼だが、おそらく、メンバーの中で最年長者。先輩風を決して吹かさず、誰の発言に対しても愛情たっぷりのリアクションを返す。まるで「母なる大地」のような安らぎをチームにもたらす存在であった。若い頃から、ロンドンやシンガポールなど海外で活躍されてきた実績、そしてインタビューアーとして鍛えた対話力を備える。ブログはこちら。

#10頼れる文系A Iリーダー:野口竜二さん(のぐりゅう)

昨年12月に出版されベストセラーになっている『文系A I人材になる』の著者「のぐりゅう」さんも参加されていて驚いた。自著で書きたかった世界観はすべて『シン・ニホン』に書かれていたと言う。我が子のように可愛いであろう自著ではなく、この『シン・ニホン』を広める活動をしようという心意気が素晴らしい。講義では、常に周囲の意見を引き立たせる役割を担い、最も信頼される「兄貴分」のような存在であり、ファシリテーションのうまさはピカイチ。実力と人柄と心意気を併せ持ったリーダーだ。ブログはこちら。

#11観察力と分析力を備えた研究者 :橋本大輝さん(橋本くん)

大学院の博士課程に属する研究者。専門は宇宙物理学でありながら、好奇心の範囲も宇宙クラスだ。『シン・ニホン』のような経済、社会系の本も読めば、批評家の宇野常寛さんのサロンにも顔を出すなど知りたい範囲は止まらない。講座で見せる観察力と分析力から科学者らしい一面を随所に見せてくれた。知的な議論をどこまでも楽しむあくなき好奇心の持ち主は、誰とでも議論を楽しめる才能でもある。一方で、「自分に関わった人を幸せにしたい」という熱いハートを併せ持つのが最大の魅力。

#12ネアカのアイデアマン :古塚慶さん(ふるふる)

このチームで最も新しいアイデアを提供したのは「ふるふる」さんだったかもしれない。慶應S F Cの安宅ゼミO Bでもあり、皮膚感覚で『シン・ニホン』を理解する。ディスカッション中には、自宅にあるホワイトボードで自分で議論を整理。それを理解に終わらせず、自分で解釈を広げてみようという姿勢が数々のアイデアを生み出すが、デフォルトが笑顔なのでその発言は誰をも惹きつける。将来は「地球を愛する人を増やしたい」という壮大な夢を掲げる。

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以上12人のアンバサダーが、これから独自の読書会を全国で展開する。併せて第二期のアンバサダー講座の募集が今日から始まった。これからも「シン・ニホン」の世界観を一人でも多くの人に伝える活動をしていきたい。

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