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安全な女性専用空間

渋谷区の公衆トイレに女性専用トイレがなかった件で、こういう記事を見かけた。

トイレ研究家の方が出演した番組の文字起こし的なものだ。

「全ての方になるべく使いやすいトイレを提供しようとした結果、 女性用トイレがなかっただけではないか」

「…『みんなが使えるトイレ』を考えた結果、たどり着いたレイアウトなのではないか。これが“答え”というよりも、1つのチャレンジとして受け止めたほうがいい」

トイレ研究家の白倉雅子氏:ABEMA TIMESより引用

なにを言っているのだろう?

どうしてすべてのひとに使いやすいトイレを提供しようとして、まず真っ先に女性用トイレが削除されねばならないのだ?
なぜ、男性専用の空間(小便器)は残されるのだろう?
個室に大便器を置いておきさえすれば、それで万事問題ないと考えているのだろうか?
根拠を述べるような体になっているが、まったく説明になっていない。

「“すべてのひと”へ配慮した結果、女性が安全に排泄する空間を奪われる」という流れの意味するところは、“すべてのひと”という総体に女性が含まれていないということではないか。
フェミニズムとは、ヒューマニズムに女が含まれないことから始まったことだが、まさにその流れを逆に踏襲している。
とんでもない時代錯誤であり、女性の安全への重大な侵害だ。

物事をどのように変えていきたいか、提案のひとつ、モデルケースのひとつ、挑戦の一歩目というなら、なおのこと女性用トイレが削除されているという事実は象徴的ではないか。
「新しい公衆トイレというものに、女性専用トイレを特別作る必要はないと考えている」ということだろう。
じつに明確だ。
そうでなければいったいどうして、老若男女を問わずすべての人間が必要とする排泄のためのスペースで、男性専用だけが存在し、女性専用が存在しないなどという事態が起こるのだろう?

排泄行為にはプライバシーが絶対に必要だ。
不特定多数が行き交う街中でエアポケットのように密室になるトイレ空間は、絶対に安全が確保されていなければならない。
安全かつ清潔に排泄できること以上に、女性が公衆トイレに望むものなどないだろう。それが確保された上で、身だしなみを整えるなどの空間があるべきで、オシャレで先進的な外観など二の次、三の次だ。
安全対策というものは、常に弱い者の立場から始めなければ意味がない。
力が弱く、暴力に対して咄嗟に対処することが難しい存在の目線――、それは女児男児、障がいのある女性、高齢の女性、そしてすべての身体女性だ。

数年前、わたしは品川駅のトイレの入り口で、見知らぬ男から体当たりざまに胸を鷲掴みにされたことがある。男女それぞれの入り口が接近しているタイプのトイレだった。
若い頃には、居酒屋の小さな共用トイレから出たら酔っぱらった男が立っていて、入れ替わりに個室に入りながら「お姉さん生理でしたか!?」と大声で言われたこともある。
幼少期、児童公園のトイレは危険だから使うなと教わった。
女装した男が駅の女性用トイレで動画配信している現場に遭遇したことさえある。1年ほど前のことだ。
もちろん、こんなことはわたしだけではない。
1954年、文京区の小学校では女子児童が男女共用トイレで暴行を受け殺害されている。
2011年には、熊本で3歳の女児が、男によって多目的トイレに連れ込まれ、殺害、遺体を損壊・遺棄された。

公衆トイレで起きる事件は、ちょっと調べただけでいくらでも出てくる。
21世紀の今日にいたっても、公衆トイレというのは女性と子どもにとって危険なのだ。
それが周知されている国と地域では、女性用トイレと男性用トイレの入り口は大きく距離をおいて設置され、個室内に何者かが潜んでいないか、ドアの足元が大きく開いている。
アフリカなどの地域では、女性専用トイレが設置されてないために女子が学校に行けないとして、その環境を変えようという動きが広がっている。

女性専用トイレ、女性専用の空間が社会に必須だということは、すでに世界中で周知されている。
その流れに敢えて逆流しようという渋谷区の試みは、いったいどういう力学によるものなのだろう。
それが多様性に配慮した、新しいスタンダードだというのだろうか?

わたし達女性には、女性だけしか入れない場所を持つ権利がある。
渋谷区の公衆トイレをデザインした専門家や、それにOKを出した方々は、まず女性の人権というものを勉強しなおすべきだ。


参考:【世界の女子教育】女の子が学校に通えない3つの理由

参考:渋谷区の公衆トイレ、女性専用が消えて共用トイレ化の理不尽…現地訪問した本旨女性記者の違和感とは

参考:犯罪学者が警告…!「日本のトイレは世界一危険かもしれない」


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