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短編小説|アナログバイリンガル

 アナログレコードが山と積まれた部屋で、彼女は夫と対峙しています。そこは2人が住む部屋。レコードは夫の趣味です。足繫くショップに通って買い漁り、今や全て聞き終える頃にはとっくに寿命が来ていそうな量です。増え続けるレコードを見て、彼女の心は荒みます。

  夫はいつもの様にだらだら何かしゃべっています。レコードのことで責められると、難しい専門用語を並べてそれらの価値を説明します。まるで夫がバイリンガルになって、知らない外国語を話しているようです。しかし今にも滅びそうなマイナー言語なのでまったく理解できません。彼女の心はますます荒みます。

 荒んだ心が彼女の顔に出ていました。夫はそれを見て、1枚のレコードを選んで回します。なんだかしまりのない、それでいて心地よいベース音が部屋に響き、彼女の表情は自然と和みます。いつもの流れでした。

 夫の得意げな表情が癪に障りますが、彼女は今日も「まぁいいか」。と思ってしまうのです。

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